「3年後の女子日本代表誕生を目指して」 アンプティサッカー第九回レオピン杯Copa Amputeeで初のレディースカップが開催
女子アンプティサッカーは、まずはじめにアフリカ・中南米でチームが作られ、ヨーロッパ、アメリカに拡大しており、WAFF(世界アンプティサッカー連盟)が今年11月に第1回の女子ワールドカップをコロンビアで開催することを決定した。昨年9月にポーランドで行われたAMP FUTBOL CUP 2023(アンプティフットボールカップ2023)ではポーランド対アメリカの女子親善試合が、今年3月にはヨーロッパ7カ国40人の選手を集めキャンプを行うなど普及が急激に進んでいる。
日本でもデフサッカー、デフフットサル、ブラインドサッカー、知的障害者サッカー、CPサッカーで女子代表が活動している。
アンプティサッカーも、女子選手を集めての活動が今年に入ってから本格化し、今年2月に東京で第1回女子練習会が行われた。その際、選手から定期的に集まる機会を作って欲しいという要望が出されたこともあり、選手が集まりやすいレオピン杯で試合経験を積む目的で、今回のエキシビションマッチとなった。今後も、女子選手のみで公式試合ができるように体験会などを通して選手の発掘を続け、3年後には日本代表を発足させることを目標としている。
試合は女性選手のフィールドプレーヤー5名(今回参加した女性選手が5名のため、通常は6名)と男性のGK1名、選手体力などを考慮しコートを小さくし、試合時間も前後半合わせて10分程度で行われた。対戦相手は、星翔高校女子サッカー部。試合当日に初めてクラッチを使い、片足を上げる練習をし、ノンアンプティ選手として試合に臨んだ。通常のサッカーとは勝手が違い最初は戸惑っていたが、現役女子サッカー選手は楽しんで試合ができたようだ。
久光がフォワード、秋田・西川がミッドフィルダー、齊藤・新井がディフェンダーのポジション。真剣ながらも、和気あいあいとした雰囲気の中で行われた。お互いパスが前線までなかなかつながらず、中盤でボールを奪い合うことが多い試合展開で、結果は0-0の引き分け。試合について、秋田は「GKが男性なので、ゴールに近づけてナオちゃん(久光直美)に渡したかったけど出来なかった」とパスをつなげなかったことを悔やむ。久光と西川は自身のドリブルについて「もうちょっと走ってボールを運びたかった」、「やっぱり相手を抜くのが難しかった」と振り返った。
試合後に選手達へ今後の抱負などを聞いた。
2016年に初の女性選手となったベテランの秋田は「前回の練習から始めて、今回形を一から作ることができた。若手に移行するとは思うけど人数が揃うまでは頑張ります」と話した。義足の人と一緒にスポーツがしたくて今年で6年目になるという久光は「人数が増えてきて、若い子も入って、楽しいという言葉を聞けてすごく嬉しい。そのエネルギーをもらって楽しくサッカーをしたい」と声を弾ませた。アンプティサッカーの楽しさを広めたいという西川は「普段会えない人たちなので、これからは機会があれば集まってコミュニケーションをとっていきたい。年に何回かは集まって、チームとして出来たら良いと思う」。アンプティサッカーを始めてまだ 5回目ぐらいという新井は「全国でアンプティーサッカーしている女子選手と会えて、それだけですごい楽しい。 日本のアンプティサッカー選手は強いと言われるようになりたい」とフレッシュな気持ちを語った。
女子育成を担当しているJAFA(日本アンプティサッカー協会)技術委員会半澤真一氏は、「女子選手が数名しかいない環境を改善したい思いがある。身体接触が必要な競技ということもあってお互い遠慮してしまうことは、普及も技術レベルの成長も止まってしまうと感じていた。性別関係なくサッカーを楽しむ権利はあるので、気兼ねなくボールを蹴る環境を整えることを第一に思っている。 国際的にも女子選手の普及が急速に進み、昨年行われたポーランドとアメリカの女子代表による親善試合を観て、日本も同じピッチに立たせたい思いもある。レディースカップについては、試合時間は短かったが、今日の目標は広いコートで試合を経験することだったので達成できてよかった。 選手たちから、前も後ろも味方が女性、 ボール抜かれてもフォローするのは女性という安心感があるという感想も聞けた。女子の場合、公式戦に出ても前のポジションが多く、ハーフやディフェンスをやる経験がほとんどないが、それができた。今日はギャラリーも多かったので、良い緊張感があったと思う。エキシビションとはいえ試合をやれた経験は今後に繋がる」と語った。
各競技に男女それぞれが活躍できる場所を作ること
日本障がい者サッカー連盟会長北澤豪氏は「1つの競技に男性も女性も平等に参加できる条件を作っていくことがもとめられるので、今回の女子の選抜のチームや高校生に参加してもらうチャレンジは非常にいいタイミングだった。女子チームをいかに早く立ち上げていくか、時間がかかるものなので、やるきっかけを作らなければいけない。それが競技全体を進化させていくこと。技術力を高めるという進化もあるけど、競技全体の進化普及には男女平等であることが必要。どのスポーツにおいても男女両方あることが、もうトレンドになっているので、競技団体は、こういうチャレンジに関心を持っていく必要がある。下の育成年代では一緒にやることもできるけど、肉体的な差が出た時には、当然その持ってる能力を発揮する場、フィールド作りをしなければいけない」と女子チームを作り育てる意義について答えてくれた。
続けて「石井賢くんとか後藤大輝くんとか最初は無理に試合に出てたけど、チームの主力選手になって日本代表選手にもなったわけじゃない。今は無理かもしれないけど、今女子の試合をやったということが、多分5年後には違う形になっている可能性はある」と現在日本代表になった男子選手を例に出して女子チームの成長可能性も示唆した。
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(校正)中村和彦、地主光太郎、佐々木延江