【チェリーの薔薇の秘密】第2部仲間あつめ
第2部 仲間あつめ~バンドの練習
【ガチョウのレンくん】
「レンくーーん、どこにいるの」「レンくーーーーん」
チェリーは近所の丘を歩きながらガチョウのレン君を探していました。丘の向こうにある池が見え始めた時、レン君の白いしっぽがようやく見えて来ました。
「な、なん、なんだい、チ、チェリーちゃん、ご、ごき、ごきげんうるわしゅう~」
レン君は、どんぐりを食べ過ぎたあの夜から、ことばがつまってしまってうまくモノを言う事ができないのです。
「レン君は、いまからいう話を信じてくれるよね!?」
「な、なん、んだい、しん、信じるって・・・」 !
レン君は、羽をばたばたさせながらチェリーのまわりを動き回ります。
くるくるくるくるくるくる
「まあ、おちついてレン君」「お茶の飲みながらお話しましょうよ」
「そ、そそうだね、でも熱いお茶とスコーンじゃないとダメだよ」
とレン君がいうと。「そうね、じゃあレン君のGreen House(掘立小屋)にいこうか? 」
「G,Green House じゃないよ!、ひ、ひみつ基地だよ。」
【ひみつ基地】
公園にある橋をわたって、少しいくとレン君の住んでいる場所から遠くない所にある彼らのひみつ基地がありました。(といっても、そこにレン君やチェリーがあつまっていることは誰でもわかっていました)
ひみつ基地は、近くに住む農家のおじいさんのグリーンハウスの中の道具部屋のことなんですけど…
チェリーがひととおり、今朝おきたことを話すとレン君は、羽をばたばたさせるのをやめてスコーンをほおばりました。
「チぇ、チェリーちゃんは、その話を僕にしてくれたけど、ぼ、ぼくにどうしろって~っ、わ、ゆ、ゆう、いうの…
のっ
のの。」
スコーンをほおばりながら喋ろうとするので、のどはいっぱい乾いて、ますます言葉はつまってしまいます。
「は、はなしを聞くだけじゃなくて、これからいっしょに仲間を探して、楽団をつくろうっていうんだろ!」とレン君がいうと、チェリーはすかざず「レン君はそう、トロンボーンで、レン君の弟4兄弟は、コルネットかなー」「ト、トろん、トロンボーン・・・」
「チェリーちゃんは、楽団や楽器に詳しいのかい?チェリちゃんは何をするんだ、だ、だい!」
「私…私はベースバス!」チェリーは目をかがやかせながら言いました。
2人が夢中で話し合っているとひみつ基地の窓際で中の様子を一部始終みていたガチョウ4兄弟が、ペタペタと列をつくりおしりをふりながら丘の向こうのデブリ牧場へむかって歩いて行きました。
【デブリ牧場】
ビニールハウス・・・掘立小屋・・・彼らのひみつ基地があって、公園をぬけて、丘をこえたところにデブリ牧場がありました。 デブリ/Debrisだから荒れ果てたところかというと、そうではなくてここはもともと荒れ果てたいたところを今の牧場主のひいおじいさんが開拓をして牧場が開かれたのでDebris(デブリ)牧場と名付けられました。本当に今は全然、荒れ果てていなく、かつてDebris(荒れ果て)だったからDebris-ed(荒れ果てててた)牧場の方がよいのかもしれません。
この牧場の向こうにぴょんぴょんカエル、いやいや、偉大なファウスト博士のいる”国立動物医療研究所”があります。その立派な看板の玄関先をくぐり抜けて、白い子猫チェリーとガチョウのレン君は胸をはって歩いて行きます。
トントントンとノックをしながらチェリーとレン君は、重そうなドアの前に立ちました。ギィーーーイィーーーと重いドアがきしむ音をしながら開いていきます。「ブヒィブフィ、なんでしょう!」重いドアが半開きになって、大きな2つの穴をした鼻があらわれました。
チェリーが「こんにちは、私はチェリー!ファウスト博士に会いにきたの!」というと、その鼻はまるで、そこに目があるかのように、うなづきながらチェリーとレンくんの様子をうかがっていました。 そしてドアの向こうから「ブフフィフィ、ちょっとまっててね」その鼻はそういってドアの向こうに消えて行きました。
しばらくすると、ドアがスーっと開いて、白衣をきたカエルが立っていました。
【ファウスト博士の話】
「こんにちは、私がファウストだケロ。」
そのぴょんぴょんカエル…いやファウスト博士はぶあつい本を右脇にかかえて、白い眉毛の下の今にも落ちそうな大きいまんまるいメガネを直しながら、チェリーとレン君にあいさつをしました。「おやおや、白いお嬢さんは
本当にきれいなグリーンの瞳をもっておられるむーーなつかしいケロねー」そういいながら、チェリーの顔をまじまじと見つめていました。
そして、ファウスト博士は、レン君を見て「本当はレン君、君のところにすぐにでもいこうと思っていたんだけどねー、実験が長引いてしまってケロねー」「ミリーから話は聞いたけケロよ」とファウスト博士がいうと、
「ええ、え、なんで」うずまきレンくんはおどろいたよう
「えっ、おかあさんがきたの!いつ?ど、どどうやって、んで、どうして?」
「わー、今日はお説教かな~⁈」と、そこだけどもらないでスラスラ言えているレン君にファウスト博士が「いや、ミリーにはちゃんと話しておいたから、レンくんがお説教になることはないケロよ。」
「さあチェリーちゃん、私はだいたいの話はわかっているよ。」「私も君に伝えなきゃならないことがあるんだケロ!」とファウスト博士はおおきくてまんまるメガネのむこうの目を細めて言いました。
【グリーニーじいちゃんの話】
「あんたのおじいちゃんは、グリーニー。ニヤリあんたみたいに緑色の瞳だったケロ!おじいちゃんは本当に勇敢で友達もデブリ牧場にいっぱいいて、いつも野原や丘を駆け回っていたケロ。」
「それは、もう10年以上前のことだ。あんたのおじいちゃんグリーニーが、わしとあんたのおばあちゃんアップルに “街が灰色になっちまう、そしたら俺たちはご飯もろくにたべられなくなってやせ細って死んでしまう。俺たちは俺たちのできることをやるしかないんだ!" って、突然に言い出した。」
「何があったのか、聞くと、“ある日、池にいると、小さなトランプの体をした兵隊が、足を引き吊りながらグリーニーの目の前に現れたというんだ。その兵隊を看病して、足には包帯をまいてあげ、看病して上げた。兵隊はゆっくりと話し始めたそうケロだ。」
「そのトランプ兵隊がいうには、人類が自分たちの裕福な暮らしのためだけに開発した機械が、人々の心に悪い感情を与えてきたというんだ。みんな便利さばかりを追い求めて、何が本当に大切なのか、忘れてしまっている!その間に、悪いものが世界を征服して、みんなを同じように機械にしてしまおうと企んでいるというんじゃ!!!ゲロゲーロ!そこの組織は、灰色とかぐーギルとか、いう名前らしい!」
「何の話しか始めはわからなかったけど、その前の年の秋は、作物が不作で本当に何も採れなかった。何故採れなかったかというと太陽が厚い雲に遮られて、あまり地上に届かなかった。太陽が届かないと・・・!白いお嬢さん、どこかで聞いた話だろう⁈連鎖反応というやつなんだケロ。きみたちや私みたいに小さくても、どんなことでも世の中はつながっているという話さ。」
【グリーニーじいちゃんの楽団】
「そういってグリーニーは、グリーニーの主人が持っていた小さな笛を吹きはじめたんじゃ!そしてピエロの格好までして、おどけてくるくる回転しながら笛を吹き続けていた。それでみんなを楽しませるんだと!ケロケロ!」
チェリーは、ますます瞳を輝かせながら聞いています。ファウスト博士が続けて言いました。「そして、
アップルがそれを見て、アップルのご主人がチェスターでブラスバンドをやっていることをぼくたちに教えてくれたんだケロ!そして、音楽の楽団をつくってみんなを喜ばせようということになったんじゃ♪。
最初は、グリーニーとアップルと私だけだったんだケロ。でもデブリ牧場のフラナガンさんが手伝ってくれて、なんとか楽団をつくることができた。
楽器も自分たちでつくったから、音なんててんでバラバラだったんじゃ。街中をそれこそ、一軒一軒まわって、ドアの前で演奏したんだケロ。
みんな、ハロウィンと間違えておかしをくれたりするんだけど、全然うれしそうでなかったんだ!演奏もうまくなかったしね!」
【カラス軍団】
ある日、いじわるなカラス軍団がわれわれを取り囲んで、からかいはじめたんだケロ。そいつらは黒い身体なのに、さらにサングラスをしていたんだケロ。チェリーのおばあちゃんのアップルは、長ボウキを持って、彼らを追ったのだけれども、いやはや、彼らは翼を持っているので長ボウキなんかでは届かなかったんだケロ!ケロケーロ!そのうちカラスは、
空中から街のゴミを落としはじめた。もう演奏どころでもなかったんじゃ!
そして、ゴミの中のオリーブの実がチェリーのおじいちゃんの
グリーニーのベーバス(チューバ)の楽器の中に入ってしまったんだよ!
ひとつやふたつどころでなくイタリアンレストランで捨てた袋ごとのオリーブの実なんだ。グリーニーはひとりだけそんな中でも、演奏を続けていた!そんな中で、ベーバスにオリーブの実が、入っていったもんだから、空気が抜けずに真っ赤な顔になっていったんじゃ!
【グリーニーじいちゃんの大手柄】
(グリーニーは丁度、ベーバスを吹いていて空気が抜けずに真っ赤な顔になっていった。)
「それでもグリーニーは演奏を続けて、思いっきり息を吸い込んで、プヮッーと吹いただケロっと!次の瞬間、ボンっという破裂音と共に、オリーブの実がカラスどもめがけて飛んでいったんじゃ。カラスどもは大慌てで退散しようとバタバタと慌てふためいた。あまりの慌てぶりに仲間同士でぶつかったりひっくりかえったり、自分たちの黒い羽根を飛び散らしていって、あたりはシーンとなったんじゃケロ・・・
カラスたちはいなくなり、カラスたちが止まっていた電線に、カラスたちが残していった羽根がくっついていた。まるで音階を五線譜に残しているようだった。アップルがトロンボーンでその旋律を吹き始めると、バンドのみんなもそれに従った!🎵🎵♪
するとどうだろう、いままで神妙に聞いていた街の人々が笑顔を取り戻して、ある人たちはダンスを始めたんだ!!!🎵🎵♪そして、みんなの笑顔が戻ると太陽もあつい雲をどけて戻って来て、町中がお祭りさわぎになった。🎵🎵♪❤️❤️
そして、いままでどこかにいってしまっていた蝶やハチが戻って来て、今までで一番のきれいなバラが咲いたんじゃ!わーォ!」
【さあ、はじめよう!】
ファウスト博士は、話し終えて少し間をあけて、チェリーやレンくんと同じように、口をポカーンと開けているブタの助手ピートにいいました。
「さあ、ピート!これからチェリーちゃんとレン君とデブリ牧場にいって、羊のロニーたちにこの話をしにいっておくれ。さっそく楽器の練習をすることにしようって!」
そして月曜日の午後、ゾロリゾロリとみんなデブリ牧場に集まってきました。みんな自分よりも大きな楽器を担いでやってきました。いや牛のモォだけは、ティンパニーを背中にゆうゆうと担いで、時々、口をモゴモゴさせて余裕で歩いていました。そして、みんなようやくデブリ牧場の納屋にあつまりました。楽団の練習がはじまるのです!
【みんなの夢、みんなの決意!】
デブリ牧場の納屋にあつまったのは、ファウスト博士、ファウスト博士の助手ブタのピート、ピートのブタ姉妹、ミョミョとジェフおじさん、 レン君レン君のおかあさんミリー、レン君のガチョウ兄弟、羊のロニーと羊兄弟、牛のモォ、総勢17人。
納屋にあつまったみんなに向かって、牛のモォの背中にのったカエルのファウスト博士がいいました。
「さあケロケロ!今日はみんな集まってくれてありがとう!今日がはじめての練習だけど、これから1週間みっちり練習をして、街の人々の前で演奏するんだケロ。そして、グリーニーがやったようにこの街を救うんじゃよ!みんなで、この愛すべき街に笑顔と太陽を取り戻そう!」
「でも、ファスト博士・・・僕らは今まで自分勝手に生きてきて、楽器だってやったことのないものばかり、ましてやこんな大勢で一斉に音楽を演奏するなんて、はじめての経験なのよ。ミャータく!」ミョミョねえが否定しながら、大きな声でなきました。
「大丈夫だよ、自分を信じて、そして仲間を信じて、勇気を持って、演奏すれば絶対にうまくいくよ!」ファウスト博士の声は大きく、そしてやさしく納屋に響きました。
突然にレン君がいいました「ぼ、ぼ、ぼくは、みんなを信じているよ!そ、そして自分自身がちゃ、ちゃんと演奏できるように頑張るよ!」「そ、そして、ついでだけど、なにより自分がいつの日か、空高く飛びまわることができる日がくるって信じているよ!」
レン君に続いて、みんなひとりひとりが自分を信じていることや夢をかたっていきました。OKそして、誓いました。自分たちが街を救うんだと!
【練習風景】
みんな がひととおり喋り終えるとファウスト博士が「さあ、そろそろ練習をはじめよう!」とみんなに言いながら、ファウスト博士が自分と同じ位の長い指揮棒をふりあげると、みんな静かになりました。
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デブリ牧場の納屋ではじまった練習も5日目になると、みんなだんだん慣れてきたのか、なんとか演奏はできるのですが何故か調子ぱずれのところが出てきました。
例えば、お茶の時間がすぎてもレンくんは、練習をはじめません。何かいいたいことがあるようです。
「ねっ ねえ、僕のクッキーは、みんなのより少なかったよ!」「ねっ、ねえ、お茶だってあついのじゃなきゃダメなんだ。なんだって君たちネコはぬるいお茶しか出さないんだい・・・ぼ、ぼくはスコーンがすきなんだ!なんでコーナーショップのベルギーワッフルもどきやホブノブスなんだい!」
レンくんの隣りで聞いていたチェリーが、唸りながら大声で
「ホブノブスのどこが問題なの!!!」と怒りながらいいました。
ブタのピートは、なぜかシンバルのタイミングがあいません。ピートは、演奏中に黒いジャケットの内ポケットにビスケットをかくしていて演奏中に食べているみたいです。
レン君が、ピートに
「な、な、なんでビスケットを隠して食べるんだよ!し、しかも自分がシンバルをうつタイミングの前で・・・」ピートは大きな手で口をふさいでいました。
【練習風景その2リズムをしっかり】
そしてミョミョねえは、爪をきるのが嫌いなのです。なにせ爪を伸ばして、マニキュアとペディキュアをぬって、更にその上にクリスタルをつけて楽しいんでいるんですから。 そんなわけでミョミョは、トロンボーンをひっかいてしまってでない音があるのです。
「この音でないのよ!この音を押さえようとすると爪がひっかかるのよ!まったく!」
「おねえちゃん、お願いだから爪きってよ!」 チェリーがたまらず言います。
吹けば吹くほどてんでバラバラでした。見かねたファウスト博士がいいます。
「みんなの心がバラバラで、ひとつになっていないこともそうだけど、リズム音痴なんだろうケロ」
ブタのピートが、ファウスト博士がしゃべっている間も、こっそりビスケットをポケットからさっと出して、口に入れました。
「リズムも口でうたってさー、タッタッタッ♫1、2、さん!!!タッタッタッ♫1、2、さん!!!とやるとあってくるよ!みんないっしょにやってみよう!」
「タッタッタッ♫
1、2、さん!!!タッタッタッ♫1、2、さん…」
「よし、だんだんよくなってきたね!」
「みんな疲れているのは、わかっているよ!この5日間頑張って練習したからね。今日はもうお休みにしよう!そして安息日が過ぎた次の日からまた始めようじゃないか!」
みんなはずぅっといっしょにいたので、少しお休みがもらえることでホッとしました。
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そんなてんでダメな木曜日の午後から街や牧場は真っ黒い雲におおわれていました。大粒の雨がふりそうな頃、チェリーとミョミョねえは公園近くの自宅に戻っていました。
【クリスタルオルゴールの中の譜面】
「ねえ、おねえちゃん、ジャックがくれたクリスタルのオルゴールに入っていた譜面のことなんだけどさ。これがグリーニーじいちゃんやアップルおばあちゃんが吹いたメロディーなんじゃないかな~?
だって、ジャックは私にチメイ(使命)があるって!このメロディーを演奏して、街のみんなが笑顔を取り戻したのかな?」とミョミョねえに問いかけました。
「あんた、それは楽譜といっても“現代音楽”とか、“ミュージックコンクリートだのなんだかの楽譜なんだろ。??
ファウスト博士だってわからなかったのに、おばあちゃんがこんな楽譜をのこすわけないでしょ!」とミョミョは続けました。
「おばあちゃんだったら、自分の肉球に墨をつけてマークを簡単に残してくれるわよ」
「そっか~…じゃあ、なんだろうねこの変な楽譜。」
チェリーは、大粒の雨が窓をたたきつけるのを見ながら言いました。
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・・・購入ありがとうございます・・・
この物語の背景には、私のイギリス在住時の思い出と数年前まで飼っていたチェリーという猫とみょみょという実在した😹子たちがまだ元気だった頃に書かれた物語です。
その後、外猫さんたちの面倒をみて、保護猫エイミーが去年2019年より家におります。
まだまだ未完成のところもあり、未熟ですが、こんな大変な時期であるからこそ続けていこうと思っています。
この世界観の絵を描ける方を探しています。絵があると素晴らしい作品になる確信しています。もし、推薦される方のご紹介や絵を描いてみたいという方がいれば
と思っております。