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5、不気味の谷「Bull & Gate 2231」

『Bull&Gate 2231』( 2231年の暑い夏ロンドンにて)

大きなフィードバックの洪水の中、ひときわ大きい高音が響いてきた。
地響きのような演奏が15分ほど続いて。ボクの耳は、限界にきていた。
やがて、長髪の青年がすくっとたちあがり、アンプに絡まってつながれているケーブルを
暴力的に引き抜くことで、突然演奏は終わった。
 
 無音…
 
 
いやガサガサの残音が、いたるところで耳になっていた。
誰もが予想しなかったエンディングに呆気にとられ、拍手もまばらであった。
演奏が終わると演者3人は、観客へ深々と頭を下げていた。
耳の中にはまだ先ほどまでの音が残っていた。
 
ファーイースティン【fureasteen】という日本人3人組のテクノバンドだそうだ。
ボクは耳が大きな音で十倍にも膨れあがった気がして、メインアクトを残してバーを出た。
 
 耳は生まれたときに、すでに成体に近いレベルまで発達していて、
そして亡くなった後も外界の音を聞いていると言う。
ボクは死ぬ時、もう別れて何十年もあっていない母親が
お経をとなえている録音を流してもらおうかなと考えていた。
 
 誰かの声が・・・そして、その時代、時代の音楽が、
   様々な人間の耳で鳴ってきた。
 
必要な音。
必要でない音。
 
 キモチを高揚させる音。
 悲しくさせる音。
 朝を知らせる音。夜を知らせる音。
 ノイズ・・・ノイズ。
 
アンドロイドも生動_きどうスイッチを押したときから、外界の音をその脳髄コンピュータに受け入れる。
 
 そして判断する。必要な音、必要でない音・・・
 
 彼らには「キモチを高揚させる音」「悲しくさせる音」の区別もプログラミングされているのだろうか?
そうだろうな・・・
 もう、アンドロイドと人間の間にある「不気味の谷」は克服されただろうか?
 
 2100年の学会では、すでにアンドロイドと人間の区別などほどんどなくて、
そんなものは存在いないと発表されていた。
なんせ、人間はほとんどの身体の半分が機械化している。
アンドロイドだって子供を持つ時代になっていた。 
それに伴い、逆に多くのアンドロイド排斥運動やそのために戦争だっておきていたんだ。
 
科学医療により人間は、なかなか死ねない身体になっていた。
アンドロイドたちが進化していたように人間たちも進化していた。
 
 
 心以外は。

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