７、BOXING DAY Shooting

2020年11月29日 22:00

『Bull&Gate 2231』（ 2231年の暑い夏ロンドンにて）

ところで今は何時なんだろう？

急に左腕にまきつけてある包帯が締め付けてくる気がした。
ボクは自分で、ある任務のために体内に何か埋め込んだに違いなかった。
スティファニーが渡してくれたナプキンに書かれた場所をGPSセットしてたどりついていた。

暗い通りをとぬけていくと赤いドアが見えた。　
鍵がかかっていない赤いドアをそっと開けて中に入り、２階までかけあがった。

　誰もそこにはいなかった。

　しかし、ボクは、非常用寝袋のそばに携帯用金属製灰皿に
まだ火がくすぶっていることに気づいた。
白紫の煙が大砲射撃の後のように漂っていた。

そして、大昔の蓄音機と呼ばれていた時代の機械から音楽がかかっていた。
　そのくるくるまわるレコード盤の脇に紙のレコードジャケットがあり、
「交響曲第9番ホ短調作品95 《新世界より》」というタイトルが見えた。

　ボクはジャケットを床へ投げ捨てた。
窓の外にはヴィクトリア調赤レンガの建物が建ち並んでいるのが見えた。
腰につけた金色の端末機械を黒い手袋に持ち直し、タッチパネルを指で操作した。

タイムバック・アプリを起動させ、タイムバック・モードに時間をセッティングする。
するとスクリーンは、少しの間、画面をクラックさせながら、
うっすらとある人影を映し出した。