趣味、献血。
趣味を聞かれた時に、すぐ答えることができない。
好きなものはたくさんある。
映画を見るのも好きだし、服を買うのも好きだ。
生意気にも珈琲を家でドリップしちゃったりもしてる。
でも趣味として聞かれた時、映画が趣味って言ってる人ほど見てるわけでもないし、生活費を切り詰めてまで服を買っているわけでもないから、趣味って言えるほどじゃないなと口ごもってしまう。
珈琲に関しては、「嗜好品を趣味って、なんか違うからやめろ!じゃあ俺は趣味たばこですって言うぞ!」と、極端な発言が売りの相方に一蹴された。
そんな趣味にハードルなんてない、その人次第だろってことも分かってはいる。だけど高校生のころから洋楽が好きで大量にCDを集めてるみたいな、単純に他の人よりも突き抜けている趣味を持っている人への憧れが強い。
そんなことをだらだら考えていたら、1通のメールが届いた。
「久保さん、献血可能日になりました。O型の血液が足りてません是非ご協力を!!」
献血センターからだった。
僕は定期的に献血に行く。
そして基本お誘いは断らないが僕のポリシー。
腕まくりをしやすいシャツを着て、律儀に献血センターに向かった。
僕が初めて献血に言ったのは高校生の頃。
受験生になり、芳しくない模試の結果をみながら友達と二人で帰っていると、駅前でA型!と書いたプラカードを掲げたお兄さんと目が合った。
「アイス食べれますよ!献血してみませんか?」
どういう意味?と思ったが、志望校C判定を甘味で誤魔化したい僕はアイスに惹かれ、ちょっと言ってみる?と友人に声をかけた。
すると、友人も思ったより模試の結果にくらっていたようで、「なんか血抜きたい気分だったんだよね」ともっと意味の分からないことを言っていた。
そうこうして僕らは松本の献血センターに行き、体調も悪くないのに病院みたいなとこ来ていることに身構えていたが、なんせ献血センターにいる人たちはみな親切。受験生というだけで僕らをほめちぎり、若いだけなのに血液検査の結果を完璧と称していた。
そしてベットに案内され、献血が始まる。
看護師さんがあったかいココアを持ってきてくれた。
痛みも思ったほどで、先ほどまでの不安はすぐなくなった。
献血がおわると、お約束のアイス。
血抜きたい気分と言っていた友人は、腕に針を刺す瞬間の動画を撮りたいと看護師に頼み、やんわり断られていた。
これが僕の初めての献血体験。
なんかわからないけど、漠然と良いことをしているという感覚の心地よさと、受験生の異常な精神状態を感じることができた。
そこからなんとなく献血には通い続けており、大学の時は群馬で、今は都内の献血センターを練り歩いている。
とくに理由は無いが、皿洗いをすれば無料になるラーメン屋みたいな感覚。血を差し出すので漫画を読ませてもらえる漫画喫茶みたいなものだと思っている。
だけど最近は、いいことをすることで何かお笑いで結果が出てほしいなという側面もあり、二ヶ月前に献血に言った日、それはR-1の前日だった。
神様に媚びを売らせていただいている。
その結果、今日献血センターの職員さんに、今回の献血が20回目だったことを知らされた。
20回。あまりすごくないと思う人もいるかもしれないが、侮ることなかれ。
献血は種類にもよるので厳密には違うが、年に4、5回程度しかできない。
さらに、気になって調べたところ、20代で20回以上献血している人は91人。※複数回献血者数:2022/4/1~2023/3/31までの実献血者
実は意外とすごいのではないだろうか。ざっと調べたので間違っているかもしれないが、おそらく、91人しかいないのであれば、その中に芸人がいる可能性はかなり低いと思われる。
よくよく考えてみれば、高校生の時からやってるし、これ献血趣味って言えるのかもしれない。
よし、次プロフィール更新する時には、趣味献血と書こう。
僕が他の人より突き抜けていること、それは献血だ。
僕の趣味は、血を抜いて社会に捧げ、その様子を見ていた神様にちょっと日常でいい思いをさせてくれと願うこと。
きっと相方からは変わらず一蹴されて終わりだろうけど。