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【ハーモニカ仁義】 米国日系人ハーモニカ奏者、リチャード’キヨ’ 鈴木【仲村哲也】

仲村哲也(TEX NAKAMURA)の『ハーモニカ仁義』
第2回 米国日系人ハーモニカ奏者、リチャード’キヨ’ 鈴木

ロサンゼルス国際空港から南へ下るとガーディナ/Gardena と言う名の昔から日系人や日本人が沢山住んでいる街があります。
その先人たちのご苦労のお陰で、今日、我々日本人が安全且つ快適に米国で生活出来ている訳ですが、そんな街で子供の頃からハーモニカを現在93歳になるまで吹き続けているハーモニカ演奏家、リチャードスズキさんと出逢いました。

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片言の日本語を話すリチャードさんの日本名は「キヨ」さんです。

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経歴を伺いますとハーモニカを吹き始めたのは戦前で、最初は10穴ダイアトニックハーモニカで「赤い河の谷間/Red River Valley」や「峠の我が家/Home on the Range」などの伝統的なアメリカ民謡全般をよく演奏していたそうです。

しかしその後の第二次世界大戦中は日系人の強制収容(Japanese Internment)で暮らし、日本人としてのアイデンティティに掻き立てられ日本の演歌や民謡を、独学で複音ハーモニカで演奏するようになったそうです。 私の目の前で、何曲も演奏して下さいました。
タングブロックでリズムを刻みながらメロディを吹くそのスタイルは紛れもない日本人演奏方法でした。

強制収容所での生活は我々の想像を絶する過酷な生活だったと思います。
そんな境遇で培われたリチャードさんの演奏は、とってもソウルフルで心に沁みました。
愛用のハーモニカは、長年いろいろとためした結果、最終的にトンボ複音ハーモニカにたどり着いたそうです。

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お気に入りのキーはF (ヘ長調)。 現在でも週に一度、地元の老人福祉施設で慰問公演を行なっているそうです。
そこには日系人の他にも一般のアメリカ人もいらっしゃいますので、日本の童謡や演歌の他に伝統的なアメリカ民謡も独奏されるそうです。

93歳で現役、しかも週一でライヴをこなすリチャードさんにお逢い出来て本当に良かった。
いつまでもお元気で、我々のずっと先導を走り続けて下さいネ。
私は駆け出しの小僧ですが、生涯現役と心に誓い、貴方の背中を追いかけて行きます。

(2019.7 ハーモニカライフ85号に掲載)



仲村哲也 (TEX NAKAMURA)
 -Profile-

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1980年代始めまで、自己のバンドでエレクトリック・ベースを担当していたが、1950年代のサウンドに取り憑かれ、アップライト・ベースに転向。
1983年に、FENから流れてきたJ ガイルズ・バンドの「ワーマージャマー」に衝撃を受けハモニカを手にする。
妹尾隆一郎氏に師事し基礎のテクニックを収得。その後は、「F.I.H.ハモニカコンテスト」入賞、アポロシアターのアマチュアナイト・チャンピオンシップに出演(日本人初)するなど、数年の間にトップクラスのハーピストとして活躍する。
以後国内でスタジオミュージシャンとして数多くの録音に参加。1992年渡米。
西海岸人気ファンクバンド「WAR」にリーオスカーの後釜として抜擢され、年間平均100本ワールドツアーに13年間参加。Tex NakamuraやWeeping Willow(咽び泣く柳)の名で、現在も米国ロサンゼルスを拠点に幅広い音楽性と美しい音色で活動中。

●オフィシャルWebサイト
http://blueslim.m78.com/nakamura_tetsuya.html