【ハーモニカ仁義】 ハーモニカのルーツであろう笙を演奏する【仲村哲也】
仲村哲也(TEX NAKAMURA)の『ハーモニカ仁義』
第4回 ハーモニカのルーツであろう笙を演奏する
奈良時代に雅楽と共に伝来した楽器、笙(しょう)。
17本からなる合竹(あいたけ)と呼ばれる各小竹の筒中にリードが付いており、その筒に空いている穴を指でふさいで、吸ったり吹いたりして発音する楽器です。
その発音構造がハーモニカと似ていると思い、興味が湧き、ここ15年程演奏しています。
意外と思われるかも知れませんが、アメリカ社会の中で日本人として誇りを持ちたいと言う気持ちからかも知れません。ハーモニカのルーツではないかと思っています。
雅楽は世界最古のオーケストラであり、日本の宮廷音楽です。
私の所属するLA雅楽グループは1962年に日系人有志により発足されました。
指導は当時UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のエスニック音楽教育の一環として宮内庁から雅楽普及の為、渡米された東儀季信(とうぎすえのぶ)先生です。
東儀季信先生は残念ながら2009年に他界されましたが、生前私も直接ご指導いただきました。我々は現在も演奏活動に励んでおり、一月に3回程集まり練習しています。UCLAで当時学んだ方もいらっしゃいます。
グループとしてはLAでの各種仏教イベントや日本領事館邸プライベートパーティーなどでの演奏会や、地元の日系人社会に貢献しています。
個人的にはハーモニカと笙の二刀流で暗黒舞踏(あんこくぶとう)とのアートパフォーマンス 共演で、カリフォルニア各地のアートセンターなどでも公演しています。
昨年は自己多重録音ですが、笙とハーモニカで試験的に録音もしました。笙単独録音音源はお陰様で、某アメリカ映画の効果音にも採用されました。
笙を演奏する時、手の中でリードを温めながら長く慎重にゆっくり吸い込みリードを共鳴させ、又、同じようにゆっくり慎重に吹き通す。それは古代の腹式呼吸を継承するもので、現在の自分のハーモニカ演奏にも大きく影響しています。
もちろん美しい旋律や即興早吹きなどのハーモニカ演奏はとっても魅力的ですが、テクニックより先ずはその音色が最も重要だと言う考えから、呼吸法を探求してより良い音色で奏でられるよう勤めたいですネ。
現行の笙のリードはトンボ楽器製作所で製造しています。
私の所属する「緊那羅(きんなら)雅楽グループ」のライブ録音風景。
大太鼓の後ろで笙を演奏しているのが私です。
2019年に新調した衣装(皇室御用達の呉服屋でカスタムオーダーしています)
ご指導頂いた東儀季信先生
(2020.1 ハーモニカライフ87号に掲載)
仲村哲也 (TEX NAKAMURA)
-Profile-
1980年代始めまで、自己のバンドでエレクトリック・ベースを担当していたが、1950年代のサウンドに取り憑かれ、アップライト・ベースに転向。
1983年に、FENから流れてきたJ ガイルズ・バンドの「ワーマージャマー」に衝撃を受けハモニカを手にする。
妹尾隆一郎氏に師事し基礎のテクニックを収得。その後は、「F.I.H.ハモニカコンテスト」入賞、アポロシアターのアマチュアナイト・チャンピオンシップに出演(日本人初)するなど、数年の間にトップクラスのハーピストとして活躍する。
以後国内でスタジオミュージシャンとして数多くの録音に参加。1992年渡米。
西海岸人気ファンクバンド「WAR」にリーオスカーの後釜として抜擢され、年間平均100本ワールドツアーに13年間参加。Tex NakamuraやWeeping Willow(咽び泣く柳)の名で、現在も米国ロサンゼルスを拠点に幅広い音楽性と美しい音色で活動中。
●オフィシャルWebサイト
http://blueslim.m78.com/nakamura_tetsuya.html