第二十三回 書き出し祭り 第四会場感想
はじめに
戸松秋茄子です。今回は第三会場に作者として参加しています。好きな動物はバーニーズマウンテンドッグ。得意なことはまた今度話すとして、苦手なことは歌唱と褒めることです。
評価項目について
実験的に、評価項目を設けました。それぞれ5段階評価で★の数が多いほど高評価となります。
ヒキ:とにかく次の1話を読みたいと思わせる力。
読み易さ:そのままの意味です。
描写:作品世界の表現力。
構想:作品全体として期待できる要素、オリジナリティ。
充実度:1話単体で見たときの内容の充実度。
固有評価項目:作品それぞれに設けられた独自の評価項目。
4-01 イーストランドの終焉
敵からパートナーへの転換を1シーンで描き切っているのがうまいところ。その間にメイン2人の目的、世界設定も説明し尽くしています。あえて難癖をつけるなら、この書き出しできれいにまとまりすぎているところでしょうか。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★★
構想★★★
充実度★★★★
ハードボイル度★★★★★
4-02 追放勇者の魔王軍復活作戦
ゴブリンブートキャンプを指導する勇者は前代未聞ではないでしょうか。おなじみの、勇者の待遇が悪い世界観なのですが、おなじみ過ぎて作者もあんまり説明する気がなさそうといいますか、この世界における魔王や勇者の概念もよくわからないままだったのが気になります。第四会場なのでたぶん時間がなかったんだと思いますが、文字数にだいぶゆとりがあるのでその辺の書き込みがほしかったですね。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★
構想★★★
充実度★★★
鬼軍曹★★★★★
4-03 喫茶『古灯』は深夜零時から
あらすじが叙述トリックすぎますね。お父さんをどうこうという以前に、大問題が発生してしまいました。とはいえ、緩川さんは幽体離脱したままお父さんを探すことになる気がします。彼女の中でいろいろ決着がついた後、無事に体に戻れるんじゃないでしょうか。なんとなくですが、そんな予感がします。幽霊が引き寄せられる店ってことで、様々な人間模様が観察できそうですし、お父さんの手がかりも得られるんじゃないでしょうか。
ヒキ★★★
読み易さ★★★
描写★★★★
構想★★★
充実度★★★
驚き★★★★★
4-04 魔女と妖狐の善行道中
前回大会で動物ものが強かったことを受けての作品でしょうか。とはいえ、ただかわいいだけの話ではなく、魔女の造形などにブラックな要素が垣間見えます。それは善行じゃなくてマッチポンプだよ! 兄の人生訓の使い方が面白くて、この胡散臭い魔女に同行する主人公にスマートに説得力を持たせていると思います。今後も、おそらくこの人生訓が思わぬ展開を引き寄せていくのでしょう。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★★
構想★★★
充実度★★★
ぬけぬけ★★★★★
4-05 追放された令嬢は、川流れ公爵と出会う
ですます調の地の文と「庶民的」な台詞のギャップがこの主人公の経歴を表していますね。どんぶらこ要素が今後も生かされるのか、アルの奇行描写のひとつに過ぎないのかが気になるところです。東方の使者をもてなすために、今後も日本文化に基づくトンチキ行動を繰り広げることになるのかもしれませんね。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★★
構想★★★
充実度★★★
異文化交流★★★★★
4-06 「誰でもいいからエッチしたい!」
そうはいってもそう簡単にできてしまったら話が終わってしまうというタイトルでしたが、シンプル主人公がヘタレ気味でしたね。言うは易く行うは難し。タイトルに反して読者がノスタル爺よろしく「抱け」と鼓舞する話になる気がします。とはいえ、痴漢から幼馴染を守るだけの漢気はあるので、やるときはやってくれそうです。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★
構想★★★
充実度★★★★
ヘタレ度★★★★★
4-07 それいけ聖犬フェンリル!〜うちのしず江(14)はシーズーです〜
よりによってシーズーかあ……小型犬でももっとマズルが長い犬ならそれっぽさあったんですが。絵面からしてフェンリルは無理だよ、異世界の人! ただ、巻き込まれた側の主人公もなんかちょっとヤバい雰囲気の言動してるので、このままツッコミだけに収まる器じゃない気がします。セットアップが終わったらもうちょっとハジジけそうです。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★
構想★★★
充実度★★★
犬選★★★★★
4-08 王の理想、少女の希望
うーん、ディストピア。アクションを交えつつ、メイン2人のバディが成立する過程を描く――という点も含めて4-01と被ってしまったのはちょっと不運でしたでしょうか。ただ、こちらはこちらで、主人公の年齢相応の幼さや心細さが表現されているので、差別化はできていると思います。個人的には、テーマ的にも重要っぽい決断があまり時間をかけずに下されるのがちょっと肩透かしでしたかね。文章や構成はこなれているのですが、この主題、作品ならではのチューニングが不十分だったように感じました。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★★
構想★★★
充実度★★★
年の差バディ★★★★★
4-09 幻の「満漢全席」完全再現を目指します!
異世界で満漢全席、という違和感がまず生まれますが、過去に現世からの転生者がいて――とかの形で回収されるのでしょうか。いや、料理の性質上むずかしいかな。と、おそらくはどうでもいいことが気になってしまいました。後々、そうした伏線が回収されるにしても、「マンカーン全席」とか何か適当なファンタジーネーミングであった方が飲み込み易かった気はしますし、そもそも満漢全席である必要もなかったのかなというのが書き出し時点での印象です。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★
構想★★★
充実度★★★
無茶振り度★★★★★
4-10 コックローチ飛岩さん
攻めた内容できましたね。映像作品じゃなくてよかったです。ゆるい雰囲気の青春小説……になるんでしょうか。普通にやったら地味になりそうなので、こういう飛び道具を持ち込むのはクレバーな選択かもしれません。でも物理的には飛ばないでほしい。怖いから。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★
構想★★★★
充実度★★★
映像作品じゃなくてよかった度★★★★★
4-11 売れない地下アイドルグループ、運営資金を稼ぐために超能力で探偵やります!
座組紹介系でしたね。アイドル、探偵、超能力と要素がとにかく多く、それらを一つ一つ丁寧に紹介する手際がスマートでした。ファンが絡む依頼という形で謎を深めているのも見事です。個人的には、無理に1話で事件を解決するよりはこうやって続き物としての流れを提示してくれる方が好印象ですね。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★★
構想★★★
充実度★★★★
キャラ紹介★★★★★
4-12 アリス、甘やかに微睡いて。
世界観が独特な作品でした。もはや半分ギャグでやっているのであろう、アリスのバーゲンセール。アリスコンプレックスホイホイです。クローンに近い技術、というのがあんまり実際のクローンに近くなさそうなのが気になったのでもっと説明がほしかったですかね。とはいえ、そうした細々とした考証が重要な作品でもない気はするので、このまま自由に退廃的な世界を展開してほしいところです。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★★
構想★★★
充実度★★★
アリスのゲシュタルト崩壊★★★★★
4-13 かみものゝ見世
神は細部に宿る。そういう作品でした。ディテールの1つ1つが独特の世界観、雰囲気を形成するのに寄与していて、読んでいて心地よかったです。展開はスローなんですが、着実な描写で読者の信頼を勝ち取れる作品でしょう。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★★
構想★★★
充実度★★★★
ディテール★★★★★
4-14 ただの羊は人間社会を夢見る
かわいいけどちょっと迷惑な羊。喋る羊に対面しているというのに妙に冷静な主人公。メルヘンな世界観かなと思いきや、思いのほか世知辛く現実的なところが可笑しかったですね。
ヒキ★★★
読み易さ★★★
描写★★★
構想★★★
充実度★★★
世知辛さ★★★★★
4-15 【寝押しの子】
真顔でトンチキをやろうとしているのはわかるのですが、わたしに学がないせいか、その辺りうまく読み取れなかった気がします。もうちょっとトンチキに振りきれた方ががわかりやすかったかもしれません。逆に言うと、「それっぽさ」の演出力が高すぎたということかもしれません。どこまでがふざけているのかが明瞭であれば、もうちょっと間口を広められたかも。
ヒキ★★★
読み易さ★★★
描写★★★★
構想★★★
充実度★★★
それっぽさ★★★★★
4-16 ファンタジー・パンク 消えた魔王と砂漠の都市
あらすじが「前話までのあらすじ」! まあ、読まなくても話はわかるので問題ないんでしょうね。内容としては、勇者パーティーの敗北からはじまり、彼らがふたたび目を覚ますと、世界が一変していた、と。魔王は本当にどうなったんでしょうか。それこそあらすじでほしかった情報かもしれません。
ヒキ★★★
読み易さ★★★
描写★★★
構想★★★
充実度★★★
浦島太郎度★★★★★
4-17 俺は『氷漬けの魔女』
マコライが途中からマコイラになってますね。シューセンの1人称もぶれてるので、序盤から混乱させられました。この位置なので推敲の時間が取れなかったんでしょうね。タイトルがミスリードなんですが、1人称を変えろ、という指示が唐突で意味不明なので、ここだけマコライではなく作者さんが顔を出しちゃってる感じがしました。氷の魔女と氷漬けの魔女の紛らわしさといい、意図した設定そのものが複雑なので、誤字によって余計な混乱を招いたのは痛かったですね。
ヒキ★★★
読み易さ★★★
描写★★★
構想★★★
充実度★★★
童話チック★★★★★
4-18 裏催眠アプリが世界中で流行ってから、早二十二年
タイトルのネタ感に反して、ドシリアスな書き出しでした。SFサスペンスの書き出しとしていい感じに不穏なのですが、「催眠アプリ」の要素がほとんど感じられないのは肩透かし感がありました。アプリとは別に超能力としての催眠能力があるらしい……のですが、これはそもそもがアプリの影響で人間にも能力が発現するとかそういう設定があるのでしょうか。何にしてもアプリ要素はほしかったですかね。
ヒキ★★★
読み易さ★★★
描写★★★
構想★★★
充実度★★★
タイトルとのギャップ★★★★★
4-19 呪、承ります
リザーバーの人の作品でしょうか、1話完結性が高いのですが、無理は感じませんでした。通りゃんせを用いた店の見つけ方、店主の口調など、雰囲気作りがよかったです。対価、というのが何なのか気になりますね。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★★
構想★★★
充実度★★★★
雰囲気作り★★★★★
4-20 ひそかに世界の危機ですが、みんなの力で激ヤバダンジョンなど攻略してやりますわ
設定が思いの他複雑で、飲み込むのに苦労しました。というか、未だによくわかってない気がします。アヤート国にも激ヤバダンジョンがある? こととか、ポーションのついでに主人公を転移させてくれたの誰? とか。それらの?がはたしてこの時点では妥当な疑問なのか、それとも単なる説明不足なのかもよくわからいまま視点が切り替わり、現時点では何もかも謎の男の話がはじまります。おそらく主人公たちと合流するのでしょう。妹が予知した運命の相手なのかもしれません……が個人的には設定の補完に筆を割いてほしかったですかね。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★
構想★★★
充実度★★★
激ヤバダンジョン★★★★★
4-21 チクチクぬいばり
文字数の使い方が大胆でしたね。とはいえ、上限までだいぶゆとりがあるので時間がなかったのかもしれませんが。内容としては現時点では何とも言い難いです。
ヒキ★★★
読み易さ★★★
描写★★★
構想★★★
充実度★★★
実験性★★★★★
4-22 岐阜城花嫁殺人事件
少年は何を伝えたかったのでしょうか。そこのところもうちょっと示唆がほしかった気もしますが、全体的には手堅く、超常現象こそ絡むものの、王道のミステリを期待させる内容ではありました。ここまで手の込んだ死体損壊が持つ意味とは? 気になりますね。最後のくだりはあらすじで十分というか、少し野暮に感じましたかね……
ヒキ★★★
読み易さ★★★
描写★★★★
構想★★★
充実度★★★★
猟奇★★★★★
4-23 タイムパクリックス・ゴーストライター
タイトルといい内容といい、挑発的な内容でした。盗作をテーマとした作品をさらにオマージュしているという点、そもそもそのオマージュ元が盗作という題材の扱い方に問題があって炎上している点など含めて、攻めてるなと思います。どうしてそれをオマージュするんだよ! といったところで、この作品の方向性が伝わってきます。実際、内容もそうした露悪性に自覚的だったと思うのですが、これを書き出しだけポンと出すのはけっこうリスキーだなと思ったりしました。サクセスストーリーになるならなるで露悪が過ぎますし、サスペンスに振るなら、危機設定の提示がほしかったところです。
ヒキ★★★
読み易さ★★★
描写★★★
構想★★★
充実度★★★
挑発性★★★★★
4-24 歓喜の波が吹く土地で
絶望をもたらすのに、「歓喜の波」。この矛盾したネーミングにも意味があるのでしょう。気になりますね。主人公とリタの関係など、登場人物にも興味を引かれます。話の切りどころもいいですね。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★
構想★★★★
充実度★★★
世界観★★★★★
4-25 冷徹無慈悲な暴君陛下へ、アナタに愛を教えて差し上げますわ!
突如始まるドツキ漫才(違う)をその場の聴衆たちと一緒に目撃するかのような視点設定が巧みでした。カレンシアはずいぶんと思い切ったことをしましたが、まあ、あらすじを信じるなら主人公補正で安心でしょう。おそらくは。とはいえ、作中の解釈として、この行為が何らかの勝算があってのものなのか、単なる蛮勇なのかは気になるところです。
ヒキ★★★
読み易さ★★★★
描写★★★★
構想★★★★
充実度★★★★
女は度胸★★★★★