海外での鍼灸治療を通して感じたこと
2016年 ネパールでの鍼灸ボランティア活動
「どこから来たの?」
と行きのタイの空港の待合室で隣に座っていた男の人が聞いてきた。
「日本だよ」
というと「とてもいい国だね!」と言ってくれた。
続けて彼は「これから香港に行くんだけれども、日本人と中国人、韓国人、台湾人など顔がみんな同じに見える。君らの違いは何かある?」と聞いてきた。
「文化や言語、、、」僕はそれ以上答えられなかった。ただたんに英語ができなかったからではなく、全く思いつかなかったからだ。
そんな彼はパキスタン人でムスリムだと言った。
ムスリムと言うとテロリストの仲間だと疑われ軽蔑され、とても辛い思いをしてきたそうだ。
「ムスリムが怖いか?嫌いか?」と聞かれたので
僕はきっぱり
「NO.地球人はみんな仲間で好きだ」と伝えると
彼はとても嬉しそうに笑ってくれ、一緒に写真を撮った。
これが僕がこの旅で初めて見た笑顔で、とても印象的なものだった。
今回のネパールHCの個人的な目標は、
“100人の笑顔をみる”
ということだった。
初めての参加のため治療の様子などは全く分からないので、シンプルにわかりやすい目標にした。
いろんな人に話しかけ、あいさつをし、自分の担当以外の患者さんたちにも声をかけたりしアイコンタクトを取るように意識した。
さらに、わかる言葉はなるべく現地の言語で話すようにし、コミュニケーションを取るようにはかった。
始めは自分も相手も現地のアシスタントの子たちも少し緊張していたが、次第に自然と笑えるようになり治療所に笑い声が増えていくのを感じた。
ネパールでは未だカースト制度が根強く残っており、カーストが低い人たちは足蹴に扱われたり、医者などからも労りの言葉をかけられることはまず無いという。
そんなときに「お気をつけて」「お大事にどうぞ」などの何気ない言葉が多くのネパール人たちの心に響き渡っていた。
正直、治療効果が実際どれくらいあったのかはよくわからない。
しかし優しい言葉かけや、笑顔を向けること、触れ合うことで少しでも相手が笑顔になり幸せな気分になれたらそれで十分だと思う。
一度しか言っていない自分の名前を覚えてくれていたり、声をかけてくれたり、握手を求められたり。その一つ一つが僕の中で大きな財産となった。
気が付けば患者さんたち、現地のアシスタント、乗り合いバスの乗客、ネパール人スタッフ、日本人スタッフ、行き帰りの飛行機・空港で知り合った人たちなど100人以上の多くの人たちに出会った。
今回の目標である“100人の笑顔をみる”という目標は達成することができ、たくさんの仲間も得ることができた。
このネパールHCは、世界中のもっと多くの笑顔をみたいという思いを強め、決意を固めるものとなった。
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この後、IVAA 国際ボランティア鍼灸師協会を仲間と立ち上げ、現在一般社団法人となり活動を続けている。
かなり自分自身に大きな影響を与えたこのHC。
たまに読み返してみるといいもんだなぁ。
帰国後に作った動画がこちら
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