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総選挙応援SSを振り返る

はじめに

 どうも。主にアイドルマスターシンデレラガールズに登場する、今井加奈を軸に据えた二次創作小説(以下、SS)を書いています、makotoと申します。
 今回は、2020年に行われた第九回シンデレラガールズ総選挙およびボイスアイドルオーディションに際して書いた5本のSSについて、テーマやら登場したユニットやらへの考え方など、色々振り返ってみようと思います。
 物書きとしては誰もが書いてみたいと思う(よね?)、いわゆる「あとがき」です。よろしければ、紹介するSSと共に読んでもらえれば幸いです。

シリーズ全体のコンセプトについて

 まず、前提として私は今井加奈というキャラクターが好きで、今回の総選挙でぜひ声がついてほしいと考えていました。そのため、焦点はボイスアイドルオーディションの方に向けられていました。
 その上で今井加奈の応援SS作品を書こうと思ったわけですが、作業時間の都合などから短編をいくつか書くことにしました。そして、

 1:春夏秋冬の四つの季節をテーマにする
 2:今井加奈に声が付くことで、全員が「声付き」となるユニットを紹介
   する

 というのを最初に定めました。1については、作品を書くための土台・舞台が欲しいというのと、短編集を貫く軸が欲しいというのがありました。
 一方の2は、言ってしまえば戦略的な理由です。「今井加奈に声が付くと、こんなユニットの会話を聞けるようになるかもよ!」というわけです(もちろん、どのユニットも大好きなのは大前提にあります)。
 以上から、春夏秋冬四つの季節それぞれに、一つずつユニットを当てはめてSSを書くこととなりました。ただ、これだとアイドルマスターで最重要な位置にいる存在・プロデューサーとの関係が描けない! ということで、最後に今井加奈とプロデューサーだけを出す1本を加えることとし、執筆作業に入りました。

1本目:「待ち合わせは木陰の途切れ目で」

作品URL https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12764224

 春を担当させたのは、加奈と白菊ほたるで構成される“うたかた☆ふらわーず”です。クレヨンで描かれた花の妖精を演じる、ということで、花なら春だろうという安直な理由で決めました。
 この二人については、「妹を助けてあげたい姉」と「姉に追いつきたい妹」というイメージを持っています。前者が加奈で、後者がほたるです。ただ、これだけだと加奈が一方的にほたるを助ける、という構図になりかねないので、ほたるの決意や成長といった側面を描くよう心掛けました。
 作中、加奈は菜の花の妖精、ほたるは鈴蘭の妖精を演じるとしていますが、これはユニットとして登場した際の絵や、そのカードのセリフから類推したものです。調べてみると、この二種の花は育つ環境や人との関わり方に大きな違いがあったので、それを加奈とほたるの関係性にあてはめつつ物語を構成していきました。
 ほたるをどこまで落ち込ませるかが、一番難しかったです。ただ暗いだけのキャラ、という風にはしたくなかったので。

2本目:「私の全てを見通す眼」

作品URL https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12776624

 夏を担当させたのは、加奈と三村かな子、速水奏で構成される「かな☆かな☆かな☆ふぁんしー」です。特に加奈と奏の関係性が軸となっています。
 デレステのスシローコミュ今井加奈編で描かれたように、加奈は周囲の人間の良い所をとり入れていくことで成長しようとするキャラクターです。それは紛れもなく美点なのですが、一方で加奈に見られる側にとっては、「自分の強みを盗まれてしまう」あるいは「強がりなどの“嘘”を見抜かれてしまう」ということでもあり、とても怖いことなのではないか、と考えたのが本作の起点です。
 では、そういう恐怖を感じそうなキャラクターは? というところで出てきたのが奏でした。自分のことを「普通の女子高生」といいつつも、理想に近づくために“嘘”を身にまとう奏が、加奈の視線にさらされたとき何を思ったのか。これを描くこととしました。
 ここまで決まると、あとは単純に「恐怖→怪談話→夏」という発想を組み入れつつ、物語を構築していきました。ただし、ここでも単に奏が加奈に凄みを感じて怖がった、というだけでは一方的なので、奏が加奈に抱くのではと考えた「私の全てを盗みきれるならやってみろ」という、挑戦的な意識や決意のようなものも組み込んでいきました。
 難しかったのは、三村かな子の立ち位置です。最初は加奈と一緒に、奏の話を聞いて怖がってしまうという流れにしていたのですが、「奏と親交の深いかな子が、その真意に気づかないということがあるのか?」という疑問が生まれたので、初稿はだいぶ書き直しました。加奈とも奏とも親しいというかな子の存在は、このユニットではかなり重要な位置を占めているように思っています。

3本目:「落ちる釣瓶を見送り笑う」

作品URL https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12811250

 秋の担当は加奈・緒方智絵里・依田芳乃で構成される“クリア・ジェイド”にしました。したのですが、物語構築にはかなり苦労しました。
 というのも、過去に同じユニットが秋のお月見をするという作品を書いており、それとの差別化をしなくてはならなかったためです。自分で決めたことですが、これがなかなか思いつかず……。
 悩む中、秋という言葉から「秋は夕暮れ」→「秋の日は釣瓶落とし」→「夕暮れは寂しい」→「寂しさを感じそうなのは?」というように考えを進めました。そして、寂しさをより強調するために前半をにぎやかにさせ、中盤で落差を生み、終盤でもう一度持ち上げるというように物語を構築していきました。
 ユニットメンバーに関しては、加奈の「行動力」と智絵里の「優しさ」を強調し、芳乃がその二人の外から刺激を与える役目を担っている、というイメージを持っています。ただ、芳乃は超然としているのではなく、加奈と智絵里の引力によってひきつけられているのだろうとも思っています。このバランスの良さという意味では、次に触れるビビッドカラーエイジにも負けていないと個人的には思っています。

4本目:「わたしがそこにいられなくても」

作品URL https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12831707

 冬の担当は加奈・藤原肇・高森藍子で構成される“ビビッドカラーエイジ”にしました。ビビカラをトリ(正確には4本目ですが)に置くのは最初から決めていたので、必然的に冬担当となった次第です。
 ここで描きたかったのは、肇・藍子の二人と加奈の間にある「壁」――はっきりといってしまえば「知名度や人気の差」です。ビビカラは三人にとっての最初に組んだユニットですが、時間が経つごとに加奈と二人の間には人気の差が生まれていきました。その差はビビカラを応援するP、特に今井加奈担当が、多かれ少なかれ意識している部分だと(勝手に)思っていました。この問題は、他のユニットでもいえることであり(声の有無はまさにその表れ)、この点に向き合わずに加奈とユニットの関係を描くことはできないだろうと考えました。
 以上の点を意識して、作中では加奈だけが「できない」ことが多数ちりばめてあります。そこを探しながら読んでみると、また面白いかもしれません。
 難しかった点は……あまりなかったです。この三人に関しては、SSを書き始めた当初から様々に思考を巡らせてきているので、やり取りはかなり自然に思い浮かんできてくれています。おそらく現状で一番「キャラが動く」ユニットです。
 あと、3本目でも触れましたが、このユニットの三人もバランスが極めて高いと思っています。肇が方向付け、加奈が原動力となり、藍子がペースを調整する、というのが基本的な解釈として考えている位置づけです。

5本目:「わたしの誇りの在処」

作品URL https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12858596

 ここでのテーマは、ずばり「悔しさ」です。
 出発点は、今井加奈が「悔しさ」を感じるようになったのは最近なのではないか、という思いです。「悔しさ」を感じるためには、ある程度自分に自信がなくてはなりません。そしてその自信を、加奈はデレマスというコンテンツが始まって以来、長期にわたる成長の中で培ってきました。だからこそこの「悔しさ」という、ともすれば暗い側面も持ちうる感情に向き合うようになったのは最近なのではないか、それがこの先加奈がぶつかり得る障害ではないか、と考えました。
 そして、この問題を一緒になって考えてくれる存在は、やはりプロデューサーだろうと思います。加奈の持つ負の感情に目を向けることができるのは、彼女の明るい一面に触れることの多い仲間より、正負両面を一歩引いたところから見ているプロデューサーのほうがしっくりくるからです。
 以上のような「悔しさ」を感じるようになる=自信を持つというのは加奈にとっての成長で、それは喜ばしい事です。しかし、「悔しさ」を感じさせてしまったという点は、応援する側としては悔やむところでもあります。これ以上加奈に「悔しさ」を感じさせてなるものか、という思いも、本作には込められたりしています。

まとめ

 というわけで、以上が振り返りとなります。
 このように文章という形で振り返ったの初めてでしたが、書き始めると思い出せることがいろいろあり、長くなってしまいました。
 またこのような振り返りができるように、色々と妄想を膨らませつつSSを書ければと思います。そのためのネタが、公式での今井加奈の出番という形で出てくれば、これ以上ないほどうれしいです。

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