国を戦争に駆り立てる「戦争広告代理店」と言う恐怖
高木徹「戦争広告代理店」
<本の紹介>
「情報を制する国が勝つ」とはどういうことか―。
世界中に衝撃を与え、セルビア非難に向かわせた「民族浄化」報道は、
実はアメリカの凄腕PRマンの「情報操作」によるものだった。
国際世論をつくり、「誘導する」情報戦の実態を圧倒的迫力で描いた作品。
ちなみに、著者の略歴は
高木徹[タカギトオル]
1965年東京都生まれ。’90年東京大学文学部卒業、NHKにディレクターとして入局、現在報道局勤務。
2000年10月放送のNHKスペシャル「民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕~」は、優秀なテレビ番組に贈られるカナダのバーフテレビ祭「ロッキー賞(社会・政治ドキュメンタリー部門)」候補作に。
同番組の取材をもとに執筆した『ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争』は、大きな話題を集め、
講談社ノンフィクション賞・新潮ドキュメント賞を受賞した。
<見どころ>
「防衛費大増税」や「殺傷武器輸出」「憲法改悪」などによって着々と進んでいる「日本の戦争準備」
不自然な中国ヘイトや韓国ヘイトやロシアヘイトなど様々なヘイトを煽る言説が蔓延する中で、何が起きているか?を紐解くのに
「戦争をPRする会社」「世論工作を請け負う会社」と言う存在を知り、
手口を知ることは有益だと思います。
この本には次のような見どころがあります。
興味があれば、400ページもある大著ですが、実際に読んでみてください。
「火のないところに煙を立て」て「戦争に巻きこむ世論」を簡単に作れることの衝撃
西側メディアの「戦争報道が事実と異なる嘘ばかり」であると言う真実
PRとは クライアントが有利になるようにあの手この手で「手段を選ばず世論工作をしていく仕事」
悪事を企む者にとって「正直で誠実な人間が如何に工作の邪魔であるか?」を理解できる
議会や国務省や政治家やマスコミにドンドン働きかけて「戦争に巻き込んでいく手口」が見られる
西側諸国が「オープン」で「正義」と言う「大嘘」
「日本が再び戦争ができる国になるように」「敵に対する憎悪」や「どちらが正義か?」を煽って行く具体的な手口が学べる本(ただし、ネットが無い時代の世論工作方法なので、現在はもっと複雑になっていそう。)
今まで戦争報道やニュースで、「表面的な上澄み情報だけ見て満足して、茶番劇にすっかり騙されていた」ショックを味わえる
<あらすじ>
紛争の初期段階では、ボスニア・ヘルツェゴビナは、
ボスニアがユーゴスラビア連邦(セルビア)から独立する正当性と、
セルビアからの不当な弾圧を訴えるために、外相を世界中に派遣する。
ボスニア外相は、国連・EC・アメリカ・アラブ世界等、あらゆる場所で、それを訴えるが、なかなか関心を呼ぶことは出来ない。
特にアメリカでは、バルカン半島というヨーロッパでも中心とは言えない地域での内部紛争という理解をされ、アメリカの国益もないためになかなか支援が得られない。
その状況を変えるためにアメリカの営利企業である
大手PR企業「ルーダー・フィン社」と契約を結ぶ。
その社員の「ジム・ハーフ」敏腕PRマンが
マスコミや議会の人脈やネットワークを駆使して
「戦争する気の無い国務省」を相手に「火の無いところに煙を立て」て
「マスコミ」に巧みに情報を流して、煽って操っていき、
「ボスニア紛争=ナチスによるホロコースト」と言うイメージを
「ホロコースト」と言う言葉を使わず、「民族浄化」と言う言葉を広めることによって
「モスレム人(ボスニア)=被害者」
「セルビア人=残虐な加害者」
と言うイメージを人々に植え付けていき、
議員や議会に圧力かけていき、アメリカを戦争に巻き込んで加担させていく
過程が恐ろしく具体的に詳細に描かれている本。
PRとは実質「クライアントに有利なように世論操作していく仕事」。
そのためには、「事実も巧みに改竄していく」
例えば「セルビアの強制収容所」は
「実際には存在しなかった」にも関わらず
商業マスコミが「偶然撮った強制収容所っぽい写真」を使って
大々的にまるで「セルビアがナチスのように残虐な加害者で悪の象徴」であるかのようなイメージと国際世論を作り上げていく。
そして、その「世論工作作りの邪魔」になるようならば、
PR会社は手段を選ばない。
例えば、「強制収容所の事実がないと否定する発言」をする
「真面目で善良で正直で真実を述べるカナダ軍の将軍」を
を謀略を張り巡らせて、陥れてヒーローだった評判を悪化させ、
退職にまで追い込む卑怯な手口をも使う。
嘘つき謀略PR会社にとっては「善良で正直で真実を述べる人」は
「邪魔な障害」であり、「排除すべき障害」であり、
「ズル賢い卑怯な悪党だけ」が「社会の要職」に就いて生き残っていき、
「善悪が逆転」する「あべこべ世界」になっていく過程がよくわかる。
正直で善良な人たちが
「嘘や真実がいつか明らかになって、分かって貰える」と
「純朴思っていても」知らぬ間に「悪者に仕立て上げられて」、
最悪、国際犯罪者になってしまうなど、悪どい工作がよくわかる衝撃作
以下、本書の引用です。
世界に衝撃を与えた「強制収容所」のニュースは、どうやって作られたか?
ガットマンと言う記者がどのように記事を作ったか?の真相
PR企業が「ワシントンやニューヨークの本社」を狙って工作する理由
記者は本社の意向を忖度しながら記事を書く
「強制収容所」のニュースの作り方第2段
実は第1段の「強制収容所」は現地取材でなかったのに、
なぜ「強制収容所ニュース」は事実化したのか?
現在パレスチナの虐殺で問われている西洋社会での人種差別
後追い報道と世論喚起の仕組み
赤旗でスクープを報じても、「主要メディア」が後追い報道しないのは
世論を喚起したくない意図が働いている。
ハーフの国連での「戦争に巻き込む工作活動」
議員に同調圧力をかけて賛成させる仕組み
「武力行使」にエスカレートさせる手口
西側メディアに悪役に仕立て上げられたセルビア
パニッチ首相は大統領に責任を押し付けて
セルビアの悪人イメージを払拭して
和解や和平を目指していた
PRのブロがいない事でドンドン不利に追い込まれていくセルビア
PRマンの謀略
歓迎されていた英雄マッケンジー将軍の凱旋
狙われた誠実な将軍
なぜ正直で誠実な将軍は狙われて陥れられたのか?
誠実で人気のあったマッケンジー将軍の人柄や任務
悪党に不都合な発言をしてしまう正直なマッケンジー将軍
PRマンの情報ネットワーク
「国連軍の中立」を維持する努力をした誠実な将軍
勝利のために人を殺すPRマン
デマが多い「セルビア人の残虐行為」を確かめた将軍
「意図的に自分の側の民族の子どもをワザと犠牲にし、相手を残虐な加害者と喧伝する卑怯極まりない残虐な手口」
紛争地帯で「中立であることの難しさ」
事態の急変と謀略の始まり
メディアの受け取り方
マッケンジー将軍の正直な発言が「強制収容所はでっちあげ」を暴く可能性が出てきた
ボスニア外相とPRマンの謀略
将軍を陥れた「離間工作の手紙」
PRマンの戦略の具体的な詳細
PRマンの戦略の罠にハマった議会
不自然に一気に悪化する英雄の評判
PRマンに陥れられて拡散したデマと棒に振った出世
悪評のネタの情報収集と監視ネットワーク
講演依頼の「講演料の出所」
「まともな考えの人」が次々と排除されていく国際政治
言語道断の戦術
「まともな平和的考えの人を攻撃対象」にして「怪文書」をバラ撒き、排除していくPRマン