「中学生から知りたいパレスチナのこと」について
<作品紹介>
イスラエルの「ガザ侵攻とパレスチナ人虐殺」を目にし、
西側諸国の異常な言動を見るにつけ
今まで多くのものを「見落としてきたのでは?」
とイスラエルの歴史を振り返りながら
「人文学」を見直していこうとする本。
この本から、新しい世界史
=「生きるための世界史」が始まる
あらゆる人が戦争と自分を結びつけ、歴史に出会い直すために。
アラブ、ポーランド、ドイツを専門とする三人の対話から
はじめて浮かび上がる「パレスチナ問題」。
岡「今の世界史には「構造的欠陥」があると思います。
歴史や世界というものを私たちが考えるときの視野そのものに問題があるのではないか。」
小山「西洋史研究者の自分はなぜ、ヨーロッパの問題であるパレスチナの問題を、
研究領域の外にあるかのように感じてしまっていたのか」
藤原「パレスチナでの信じられないような虐殺を見ていると、
私はいったいナチズム研究で何をしてきたのかと思います」
パレスチナ、ヨーロッパ、日本… すべての問題はつながっている。
<見どころ>
パレスチナ人も実はイスラム教に改宗したユダヤ人では?
「ナチスによる支配」では「ユダヤ人」と名指すことは「何をしてもよい」「殺しのライセンス」となっていた
現代では「ハマス」「テロリスト」と名指すことは「何をしてもよい」「殺しのライセンス」となっている
G7は、一方で普遍的人権や民主主義を掲げながら、他方で世界を植民地支配する「植民地主義」
「人種」という概念は、ヨーロッパの植民地主義が「発明したもの」であり植民地主義の「暴力を支える理論の要」だった
パレスチナ問題は、ナチスのジェノサイドを生き延びた大勢のユダヤ人難民を、パレスチナに犠牲を押し付けて
解決しようとした「徹頭徹尾ヨーロッパに起源ある問題」
パレスチナ人の人権剝奪と抑圧の上に蓄積されたイスラエルの監視セキュリティ技術が東京五輪で導入され、日本人を監視」
シオニストは、「祖国を守るためなら武器を持って戦う我々シオニストは、ディアスポラのユダヤ人とは違う新たなユダヤ人だ」と考え、「ヨーロッパでホロコーストの犠牲になったコダヤ人は、抵抗もせずに唯々諾々と殺されたディアスポラで骨抜きにされたユダヤ人」と見下して、イスラエル社会において蔑まれ、たいへん肩身の狭い思いをさせてきた。
シオニズム誕生から今まで「敬虔なユダヤ教徒」はシオニズムを批判し、反対してきた。
歴史学そのものが「人の生きてきた痕跡をなかったことにできる「暴力装置である」ということへの自覚が薄い」のが問題
<見どころ 歴史>
日本の「朝鮮特需」と同じように、西ドイツは「イスラエルに工業製品や武器を輸出すること」で経済復興した
西ドイツの憲法違反なのに、イスラエルに「機関銃、高射砲、対戦車砲、戦車、潜水艦」を輸出して支えてきた
西ドイツが「緑化の名目」で6億3000万マルク送金したが、イスラエルの核兵器開発に使われた
西ドイツは、「表向き」「ナチズムの暴力と向き合い、それを背負って国際社会への復帰をした国」とみられていたが、実際には、日本と同じくナチスに関連した人間は西ドイツ政府内に存在し続けたし、とりわけ「農業や農学」の分野では残留した。
西ドイツも、コール首相など「保守政治家」と共に「保守系の歴史家が台頭」し、歴史修正主義が台頭していた。
今の世界史には「構造的欠陥」があり、西洋中心主義、白人中心主義の視点でしか語られていない
本書の興味深かったところを以下に引用していきます。
「ユダヤ人のパレスチナ追放による離散」は史実にない
レッテル貼りによる「殺しのライセンス」
飢餓計画を主導したヘルベルト・バッケ
飢餓計画の元祖
ホロコーストの陰に隠れる「入植と飢餓」
飢えてはならない人と、飢えてもいい人
イスラエルの食と水を通じた暴力
飢餓とは「低関心」による暴力
「西」とはなんなのか?
ナチズムは近代西洋的価値観の結晶
「食を通じたイスラエルの暴力」に目が向かなかった反省
私たちの生活が奴隷制に支えられている
今のイスラエルのやり方は異常
本書成立の経緯
伊丹万作「騙されることの責任」
もちろん、「騙す方が100%悪い」のは紛れもない事実である。
その上で更に「騙されることの責任」を考えよう。
もう一つ別の見方から考えると、いくら騙す者がいても誰1人騙される者がなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。
つまり、騙す者だけでは戦争は起らない。騙す者と騙される者とがそろわなければ戦争は起らない。一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない。騙されたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘違いしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
伊丹万作「戦争責任者の問題」より