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映画「ファーストラブ」殴り書き

「由紀のことは大事にしていたけど、それは恋愛ではなかった」
作中で迦葉は、由紀との以前の関係はお互いがそれぞれ自身の心の傷を守るための関係であり、相手の傷を癒すような支え合う関係でなかったことを兄に告白している。また、そのような関係であったがために由紀をさらに傷つけてしまったことを悔やんでおり、新たな傷を負わせた自分の言葉は今後由紀に届かないことを悟った。

幼少期の傷は呪いのようなものである。
世界から守られている実感なく青年期を迎えた個人は
未だ癒えず、拡がり続ける心の傷を、終わりなき日常の下に必死に隠しながら生きていかなくてはならない。

私は決してあなたを傷つけようと思ってはいなかった。
迦葉と同じように私もあなたではなく自分を守ることに夢中だったのだ。
あなたの見えない傷を受け止めるのが怖かった。
あなたに向き合うことで私が必死に守っていた鎧を脱がされることをひどく恐れたのだ。あなたの傷と向き合うことがこの世界の何よりも大切だったのに。
あなたを通して私が見ていたのは私自身だけだった。
私の想像力の欠如があなたを傷つけた。
どれだけ失望しただろう。どれだけ逃げたかっただろう。
あなたは必死に生きようとしていた。
終わりなき日常を私と生きようとしていた。
幼稚で未熟な私と生きようとしてくれていた。
かけがえのないものをなくしてしまったのだ。

あなたとまた向き合う資格は私にもないだろう。
あれは恋愛ではなかったのだから。

”傷つけられたこと”は決してあなたのせいではない。
あなたはこの世界に存在してもいいのだ。
あなたが守っていたものをこれからは私も共に守っていくから。

こんな私でも生きていていいのだ。
あなたも生きていていい。
あなたの言葉を聞かせてほしい。

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