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映画館に毎週通っていた頃の話

この記事を読んでいるあなたはどのくらいの頻度で映画館へ行くだろうか。月に一度?それとも昔に行ったきり?「そもそも映画館へは行かない」という人もきっといるだろう。
私はあまり行かないが、一時期毎週映画館に行っていた。数年たった今でも思い出深い出来事だったので、その話をしよう。

本題に入る前に「抱かれたい男一位に脅されています。」という作品をご存知だろうか?桜日梯子さくらびはしご先生が手掛けるBL漫画作品である。
現在も連載中で、単行本は何度も重版されている。さらにはアニメ化・劇中劇の舞台化・ファンイベントの開催など様々なメディア展開がなされている人気作品だ。
私はこの作品の大ファンでコミックスやグッズを集めている。本当に良作でね…。知らない方はこの機会に名前だけでも覚えてってください!!!!

そして2021年10月、劇場版の公開週替わりの来場者特典を配布することになった。こんなん全部欲しいじゃん!!と思った私は、劇場へ通うことを決めたのだった。
(※ちなみに最寄りの上映劇場は車で一時間かかる。これだから田舎は!)

公開初日の事はよく覚えている。
免許取って間もない頃、慣れない道をひやひやしながら運転してやっとの思いで劇場へ向かった。観客層は作品が作品だけに女性ばかりでほぼ満席。すごいことだ。

こちらが当日の写真。
入場者特典の書き下ろし漫画、何かの特典でもらったイラストシート、全く関係のないが、可愛かったので連れてきたぬい。
この時は、本編上映後に舞台挨拶イベントのライブビューイングがあり、見た後の余韻に浸りながら出演キャストの対談が聞けて、ファンには堪らない時間だった。何たる贅沢…。他では味わえない体験である。

余談だが、私は客席で上映まで待つ時間や空気感が割と好きである。
大きなスクリーンにポップコーンの匂い、照明が消えて広告や注意事項が流れ始めると「いよいよ始まるんだ!」とワクワクしてくる。家で見るのとは違った特別感が味わえるのも利点だ。

周りからしたら「特典目当てとはいえ、同じ映画を何度も見るなんて正気か?」と思うかもしれない。実際に似たような事を言われたが、気にしなかった。だって何度も見たくなるくらい大好きな作品だから。
毎度同じ所で感動して泣いたり、初見ではわからなかった見所を発見する楽しさがあった。ガソリン代やチケット代が馬鹿にならないが、お金をかける価値は十分すぎる程にある。それにここまで通い詰めて「大好きだ」と思える映画作品は後にも先にもこれだけ。素敵な思い出を作るきっかけをくれただかいちに感謝し、これからも応援していこうと思う。


と、ここまでが映画館での思い出話。
せっかくなのでここからは、本編についても語らせてほしい。ネタバレを含むのでご注意を。単発で見るのもいいがコミックス1~5巻またはアニメ1~12話を見ておくと、より楽しめるぞ!


「抱かれたい男ランキング」で5年連続一位を取り続けているベテラン俳優・西條高人と芸歴3年の若手・東谷准太は紆余曲折を経てパートナーとなった。ある日2人の下に「血の婚礼」という群集劇の出演オファーが来るところから物語は始まる。
フラメンコを練習する中で、准太との才能差を感じた高人は「自分のすべきことをしてくる」と准太の故郷・スペインへ渡った。一方、准太は去っていく高人をみて過去に一方的に別れを告げられたトラウマに苛まれるのだった。
本編は「准太の負担になりたくない」と一人で背負い込む高人さんと「隠さないで言ってほしい」と思う准太のすれ違いがポイントでそれを紐解く鍵となるのが「東谷准太のルーツについて」だ。これには祖父のセレスさんと幼馴染のアントニオが密接に関わっている。順番に解説しよう。

祖父・セレス

サクロモンテ出身でバルのミ・コリナの店主。
今でこそ気さくで茶目っ気のある素敵な老紳士だが、彼自身も昔は街に馴染めなかったそうだ。
准太が高人に惹かれた理由として「図体ばかり大きな自分達より遥かに心の幹が太いからだ」と語る。何故なら何もかも色あせて見えた若かりし頃、後の妻であるやちよの描いた鮮やかで色彩豊かな自分の絵に強く惹かれたから。
さらに印象的なのが、幼き日のチュン太に「庭先の花で好きな花は何?」と訪ねると「全部好きだ」と言っていたと語るシーン。その後のセレスさんのセリフがこう言ったのだ。

「全部好き」って「どれも同じ」って意味に近い気がしないかい?

これ結構核心に迫る言葉では無かろうか。
「自分にとってこれだけは特別」が分からないからどれも変わらなく思える。だから「全部好き」という答えになる。
物語のラストでもう一度好きな花を聞いた時、なんと答えるかに注目して見てほしい。


幼馴染・アントニオ

スペインでも有名なフラメンコダンサーで「アンダルシアの猛牛」の異名を持つ、非常に感情表現が豊かでアグレッシブな男だ。ここで見て欲しいのが高人との交流である。
准太に黙ってフラメンコ指導を頼み込みに来た高人さんが「これから一緒に生きて行くためにも、准太を支えられるようになりたい」と言うが、アントニオにはこう告げたのだ。

「空気を読めなんてのはコミュニケーションの惰性だぜ。空気は胸いっぱい吸うもんだ!」

情熱的な彼だから出来るアドバイスである。「思いは口に出さなければ伝わらない」って忘れがちだけどすごく大事なこと。

そして「幼少期の准太は、ガラス玉みたいな目をしていて何かに執着することは無かった」と聞いた高人さんは「あいつのそんな目、俺は知らない」と驚くが、それもそのはず。准太の世界を色鮮やかな物にしたのは高人さんだから。
終盤にある彼の回想シーンはセピア色で色あせているが、高人が声をかけると一気に色彩豊かなものになる。このたったワンシーンだけでどれだけ影響を与えているかが分かるね。極めつけはこのセリフ

西條高人、アイツにとってのお前の存在はお前が思ってる以上だぜ。

何処か寂しそうな昔の准太を知っているからこその言葉。
高人さんが准太を強く想うように、准太も高人さんを深く想っている。2人の相思相愛っぷりが伝わるね。
上記に上げた箇所の他に、情熱的なフラメンコシーン、これらの騒動を踏まえて2人が向き合う様子は涙無しでは決して見られない。DEEP SQUADの歌う主題歌「変わりゆくもの変わらないもの」は准太の心情を表したような素敵な楽曲で最高だからぜひ見てほしい。


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