愛し方とか愛され方とか、わかんないから。
目が覚めて窓の外をみるとすっかり暗くなっていた。わたしはソファーから起き上がり、電気をつけ、キッチンへ向かう。シンクには洗ってあるマグカップがひとつだけ、置いてあり、これが全てをものがたっていた。
あちゃー、やっぱりか。
薄々気づいてはいたが、やはりショック。
でも、なんでこんなに悲しんでんの?意味わかんないんだけど。そもそも、本当に好きだったのだろうか。なんてことを考えながら、そのマグカップでコーヒーを飲む準備をする。
好きというばかみたいで人間らしい感情の正体が、大人と言われる年になってもまだわかっていない。たしかに、好きだつきあってと言われて「まあこの世にわたしを好きになってくれる人は少ないしな」と思い、ふたつ返事で即答してしまったが、わたしの気持ちを考えたことなんてなかった。
好きでいてくれたら、好きだった。それだけだったのかもしれない。だって、あやのいいところ、ひとつも言えないんだもん。出ていかれて悲しい気持ちは、好きとかじゃなくて他の人に取られて悲しい嫉妬心なんだ。
最低だな、わたし。
淹れたてのコーヒーをかき混ぜながら、つぶやいた。
まあそれが女ってもんよねと思いつつ、改めて好きとか愛とかについて考えてみる。
わたしはこれまで何人かの人とつきあってはみたけれど、それが本当に付き合っていたのかわからない。お互いのあれは好きという感情だったのだろうか。それがわかんなくなって、女の人にも愛されてみようと思いあやと付き合ってみたけれど、あれだけ好きだの愛してるだの言ってた割に一瞬にして冷めてしまった。
私たちは本当に好きな人同士だったのだろうか。
たとえ好きな人と恋人にならなくても、一緒にいることができるし、幸せになることだってできると思う。でもなぜ、みんな付き合うだの結婚だのしたがるの?意味わかんない。
コーヒーを飲んでいるとなにか食べたくなって、お腹が空いていることに気づく。そういえば今日渡そうと思ってたチョコ、冷蔵庫にあるんだった。わたしはテーブルから立ち上がり、冷蔵庫を開ける。
中には昨日作ったトリュフが入っていた。それを取り出してひとくち食べてみた。
口の中に広がるチョコとともに、私の中のドロっとしたものが溢れ出してきた。
photo by かみやん🐈 (@yukikamkam)さんhttps://twitter.com/yukikamkam?s=09