映画感想~命綱無しで975mの断崖絶壁を登りきった男~「フリーソロ」
前々から見たかったドキュメンタリー映画「フリーソロ」を見ました。
アレックス・オノルドというプロのクライマーが、エル・キャピタンという断崖絶壁に命綱のロープも着けずに挑むという内容です。
それでも安全に配慮してるんでしょう?と思う方も居るかも知れません。
1つのミスで本当に死にます。
彼はクライマーの中でもほとんどの人がやらない、ロープやギアを使わずに己の肉体のみで登っていく”フリーソロ”で数々の偉業を成し遂げています。
この映画「フリーソロ」は、彼がエル・キャピタンに挑むまでの道のりや苦悩、そして実際に登っているシーンが収められています。
普段はバンの中で暮らしている、アレックス・オノルド。
恋人と登りに行く、アレックス・オノルド。
厳密には恋人と言及していない、その辺りも彼の考え方の一端が垣間見える。
脳医学的観点からも彼の考え方の一端が分かることになる。MRIで調べたところ、彼は普通の人よりも恐怖を感じにくいらしい。
そんな彼だからこそフリーソロに挑戦できるのか、それとも彼の信念がそうさせるのか。
この映画を見ていると、はっきり言ってアレックス・オノルドの考え方は異常だ。
長く生きることに意味を見出しておらず、常に何かに挑戦し続けること、それが生きる意味だと。
右手は親指一本だけで支えながら、左手で掴みに行く。ちょっとでも滑ると当然落ちる。
この一瞬体を持ち上げて、左足を飛び出す形で置きに行く。ロープがあっても怖い動きである。
落ちたら体が破裂する、そんなことは彼も分かっている。
今までに何人も”フリーソロ”に挑んでは破れ死んでいった人が居たか、彼もそれは知っている。
それでも彼は先に進む。これを異常と言わずなんと言うのか。
しかし、そんな彼に、そんな彼だからこそ、私達は惹かれてしまう。
落ちないことは分かっていても、この映画を見ている間手汗が止まらずにずっとドキドキしている。
私達だけじゃない、この映画を取っている監督やスタッフも惹かれている。
彼のフリーソロを撮るかいつも苦悩すると。
もしかしたら、滑落するところを収めてしまうかもしれない。
もしかしたら、撮影することで彼の集中力を奪い、最悪の結果を招くかもしれない。
それでも撮影をするのは、私達が彼に惹かれてしまっているからだろう。
今後も彼が挑戦し続ける限り、いつかは他のフリーソロクライマーと同じ道を辿るだろう。
それでも、彼の最期がどのような形になろうとも。
私は彼を見続け、彼に惹かれ続けられるだろう。
最後に、彼の笑顔とその言葉で締めましょう。
「僕のソロのことを本で読んだ子は、次のもっと大きな挑戦はなんだろうって思うのかな。それか更に上はなんだろうってね。それか僕がまた更新するのか、どうだろうね。」