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泊まれる演劇『Moonlit Academy』 |本編1万字解説

最新作『Moonlit Night』の上演を記念して、2024年1〜3月に上演したシリーズ前作『Moonlit Academy』の本編あらすじを1万字超の大ボリュームで公開いたします。
※公演パンフレット掲載のものとは内容が異なります。

学園100周年の創立記念セレモニーに迎えられたゲストたち。楽しげな寮分け検査や、華やかな模擬授業もつかの間、恐ろしい事件に巻き込まれていく。棲まうのは、青春か、怪奇か。

『Moonlit Academy』を体験された方も、未体験の方も、事前にチェックして最新作『Moonlit Night』をもっと楽しもう!



キャラクター紹介

※以下は『Moonlit Academy』登場キャラクターです。最新作『Moonlit Night』とは異なりますので、ご注意ください。

ライカ(写真左)
赤月寮の1年生。UFOキャッチャー研究会に所属しており、いつかはUFOをキャッチするんだと情熱を燃やしている。ぶるうむはまだ開花していない。生まれつき聞こえない右耳は、見知らぬだれかの声をときどき捉えるようだ。意地っ張りで熱中すると周りが見 えなくなるが、誰よりも仲間想いな性格。

琥珀(こはく、写真中央)
青月寮の1年生。ライカとは幼稚園の頃からの親友。UFOキャッチャー研究会の部長をつとめており、大の宇宙オタクでいつもオカルト系科学雑誌を持ち歩いている。小学3年生のある日の下校中、大きなUFOが空をかすめて飛んでいく姿を目撃した。ぶるうむはパイロキネシスだが、まだ弱火程度。

星(ほし、写真右)
新月寮の1年生。星家はぶるうむを持つ者ばかりの一族である。オバケや狭い部屋、火が怖い。UFOキャッチャー研究会に所属しているが、オカルトの類は一切信じていない様子。プライドが高く強情で、よくライカと口喧嘩をしている。なお、ぶるうむはまだ開花していない。

五厘(ごりん、写真左)
青月寮の2年生。ムーンリットアカデミーの副生徒会長であり、サイキックベース部のキャプテン。文武両道を絵に描いたような人物であるが、冗談がまったくもって通じないことが玉に瑕。サイキックを自由自在に使いこなす。「五厘派」なるファンクラブが密かに存在するらしい。

まんが(写真中央)
新月寮の寮長であり、3年生(自称)。学園をホテルだと勘違いし足を踏み入れ、何も知らないまま入学した奇跡の男。強運の持ち主であるものの、ぶるうむに関しては全く芽が出ず、何年間も留年し続けている。アイマスクなしには眠れないらしく、いつも深夜テンションでいる。無類のゴシップ好き。

波波(うぇいうぇい、写真右)
赤月寮の2年生。トレンドに非常に敏感で、学校には内緒でインフルエンサーとしても活動している。優等生ではないが、世渡り上手なこともあり先生に怒られることはほとんどない。未来視のぶるうむを習得中で、いまは4秒先までの出来事が予知できる。ドラゴンドッグを主食にしているらしい。

ニュウタウン校長(写真左)
見た目は若いが、1906年生まれで年齢はとうに100歳を超えている。ムーンリットアカデミーの一期生であり、学園のすべてを熟知しているらしい。生い立ちやぶるうむなど多くが謎に包まれているが、干渉しようとした生徒はこれまで誰一人いない。いや、干渉してしまった者は”生徒”の姿形ではなくなった、と言うべきか。(噂では、植物に変えられてしまった生徒がいるらしい)

ホクマン先生(写真中央)
エンパシーの先生であり、サイキックベース部の顧問。情に熱く、生徒からの人気も高いが、その正体は実は◯◯である。帽子の中に◯◯がいて、◯◯がホクマン先生をマリオネットのように動かしているのだ!学園の番犬「ヒグマサウルス」を飼い慣らしている。

β先生(写真右)
校長の次に長くこの学校に勤める、妖術専門の先生。授業中に私語をしたり忘れ物をすると、容赦なくぶるうむを振るう。先生の名前を出すだけで震え上がる生徒もいるらしい。そんなβ先生だが、実は隠れてこっそり「ガイコツ盆栽」を愛でていることは誰も知らない。

山田球先生(やまだきゅう・写真左)
昔この学園でテレポーテーションを教えていた先生。お酒が死ぬほど大好きで、四六時中酔っ払っている。ある夜どうしてもウイスキーが飲みたくなった先生は、氷を取ろうと食堂の冷凍庫へテレポーテーション、そのまま出られなくなって死んでしまった。本人はまだそのことに気づいていない様子。

金子 吹(かねこふき・写真右)
ゲストらと一緒に創立記念セレモニーへのやってきた女の子。だが招待状は持っていないし、寮分け検査も受けていないようだ。愛想がよく、ゲストらと友達になりたがっている様子。


物語に出てくる9つのキーワード

ムーンリットアカデミー
弁天町に佇む一風変わった寄宿学校。外から見ると寂れたホテルにしか見えないが、先に向かうと華やかな学園生活が待っている。特例を除いて、両親または親戚にぶるうむが開花した者がいる子どもたちだけが入学を許される。ただし勉学を怠りぶるうむを開花せずに卒業すると、学校を出る際にすべての記憶を消されるという噂も。

ぶるうむ
別名“ならざる力”と呼ばれ、第六感や透視、サイコキネシスに妖術など人体を超越したあらゆる力を指す。大昔は魔法とも呼ばれていた。本来すべての人間には少なからずぶるうむの才能は眠っているが、その力が開花する者はごく僅かである。ぶるうむを学び、育てて、花開くための養成学校がムーンリットアカデミーである。

3つの寮
ムーンリットアカデミーでは生徒は3つの寮に分かれて生活している。寮の組み分けはランダムではなく、ぶるうむの素質に応じて寮分け検査によって提示される。 所属寮は異なっても生徒らは分け隔てなく交流している。

UFOキャッチャー研究会
ライカ、星、琥珀の3人が所属する非公式の部活動。通称:U研。名前の通りUFO(未確認飛行物体)を、キャッチすることを目的に活動している。今入部すると中古の“未確認飛行物体たんち機”がもらえるらしい。

サイキックベース
8対8で行われるサイキック・念力を使って点を取り合う球技スポーツ。ルールは野球やキックベースに似ているが、時には身体が燃え上がったり、球が時速 290キロで飛び交ったりと非常に危険なスポーツである。ムーンリットアカデミーの花形部活で、各寮8人計24人の生徒が所属している。

つちのこ学生食堂
学園のメインホールに併設されている全寮生徒共用の学生食堂。火を吹くような辛さがクセになる“ドラゴンドッグ”と、製糖技術が発展途上だった100年前から生徒らに愛され続けている“シュガー&シュガー”が食堂の名物である。あらゆる”ならざる食材”の販売・流通をおこなっている「つちのこコープ」が食堂の運営を担っている。

ツキノアクマ
ムーンリットアカデミーのマスコットキャラクター。学園に赴任してきたばかりのホクマン先生がキャラクターデザインを手がけた。当初悪魔のキャラクターで企画が進んでいたが「かわいくない」「入学希望者が減りそう」「学校のマスコットといえばテディベアだろ」などの意見が学園内部から殺到し、やむなく小グマの姿となった。

幻の4階、開かずの扉
3階建てのムーンリットアカデミーだが、実は幻の4階が存在しているという噂がある。そこに足を踏み入れた者には容赦のない苦痛が降りかかるらしい。

カイブツ
日本最恐の呪術師。あらゆる都市伝説の正体、あらゆる未解決事件の犯人、あらゆる寒々とした気配の原因はカイブツだと言われている。


本編ストーリー

【起】
大阪の弁天町駅から歩いておよそ10分。ポツンと佇む古びた青褐色の建物が今夜の舞台だ。外から見ると廃れたホテルにしか見えないこの建物こそが、"ぶるうむ"と呼ばれる謎に満ちた力を学ぶための学校「ムーンリットアカデミー」。学園に招かれたおよそ30名のゲストらは建物のなかに入ると、五厘、まんが、波波、その他生徒会メンバーらに歓迎される。

そう、この日は待ちに待った、学園創立100周年の記念セレモニー!学園としても”一般の人たち”を迎えるのは初めてで、どこか浮き足立っている様子だ。ゲストらは寮分け検査によって「赤月(レッドームーン)寮」「青月(ブルームーン)寮」「新月寮(ニュームーン)寮」にそれぞれ振り分けられる。寮によって宿泊フロアも異なっていた。

セレモニーの開始をメインホールで待っていると、ゲストらは一人の女の子から声をかけられる。彼女の名前は金子吹。どうやらセレモニーには招待されてもいないにも関わらず、興味本位で校内に入り込んでしまったらしい。ゲストらの友人ということにして、何とかバレずにセレモニーに参加することになった金子吹。しばらくすると校舎の奥からホクマン先生がやってくる。五厘・まんが・波波ら上級生三人は、なにやら急用で校長先生の元へと連れていかれてしまった。メインホールに取り残されたゲストたち。すると校門から慌ただしい生徒三人組が入ってきた!

彼らは、学園一の弱小部活「UFOキャッチャー研究会(通称:U研)」のメンバーのライカ・琥珀・星。ライカらは「未確認飛行物体たんち機」の微かな反応を頼りに道を歩いていると、そのまま校内に辿り着いたらしい。ゲストの周りには見たところ宇宙人や幽霊はいなさそうだが、たんち機の音と光は金子吹の前で大きく反応する。怪しむU研メンバーたちだが、金子吹は自身をこの学校の生徒だと説明し、なんとかことなきを得る。U研メンバー3人の愉快な(?)自己紹介の流れから、話題は最近巷で噂の「カイブツ」の話へと移る。

カイブツは、謎に包まれた恐ろしい人物で、未解決事件の裏側には必ずカイブツが隠れているんだ、と星。どうやらカイブツについてはまだわからないことが多いようで「昔この学校の生徒だった」「ぶるうむを持つように改造された人造人間」など、噂もさまざまのようだ。世間を騒がせる、正体不明の悪者。カイブツの正体を突き止めることでスター部活に成り上がろうと、三人は目をギラつかせる。

すると突然大きな雷鳴が!ニュウタウン校長にホクマン先生、β先生、上級生3人らがメインホールにやって来たのだ。どうやら今夜は一般生徒は校内立ち入り禁止だったらしく、こっぴどく叱られるU研メンバーたち。その上、校舎の周りにはβ先生が結界を張り巡らせていたのだが、跡形もなく消えいることも発覚。疑われるU研メンバーだが3人は無実を主張。果たして犯人は誰なのか?

なんやかんやありつつも、幸いセレモニーの場であることもあって厳重注意で済まされた3人。そのままニュタウン校長は、最近巷で騒がれている「ある事件」について話をはじめる。その事件とは、今月で3件も発生している女子生徒を狙った失踪事件。失踪と言っても身体はこの学校にあり、眠りから覚めないのだとか。事件に関する怪しい報告もいくつかあり、「眠りに落ちる前、何かに取り憑かれたようにふらふら歩いていた」「事件直前に歌が聞こえた」など。そんな噂から、犯行は「夢遊歌」という歌で人を夢に誘い・閉じ込める危険なぶるうむによるものであり、巷では「永遠の眠り事件」と呼ばれているらしい。

かなり物騒な場所に来てしまったと不安がるゲストたちであったが、もちろん安全対策はバッチリ。非常事態が起こった際のサイレン、警護も兼ねる力ある教師陣、そもそも夢遊歌は耳を塞ぎさえすれば防ぐことができるようだ。気を取り直して、遂にセレモニーが幕を開ける。

【承】
創立記念セレモニーは、まず最初にメインホールで学園の歴史やぶるうむに関しての解説パフォーマンス(生徒と教師らが身体を張っていた)が披露された後、各フロアに分かれて6つの”模擬授業”を受講する流れで予定されている。

そもそも、このようなセレモニーが開催された理由はなんだったのか?これまで100年間、学園はその存在を隠すために外部との関係を絶ってきたらしい。その変革の大きなきっかけは、時代の変化に合わせて学園をよりオープンなものに変えたいという、校長自らの願いがあった。実際にゲストらに学内イベントや授業の体験とになってもらうことで、ムーンリットアカデミーが安全で親交的な場所であると、世間にアピールすることが狙いのようだ。

そんな模擬授業では、ゲストは多くの摩訶不思議な体験をすることとなる。サイキックを使って中空に置かれた球をはじき落とす授業。水槽に入った謎の魚”メガネウナギ”と会話をしてみる授業。呪いのお札を作り、誰かに呪いをかけてみる授業。どれも怪しいけれど胸が躍るものばかり。

一授業おおよそ15分で、それぞれ3〜4人の少人数制で開催された。ただ椅子に座って話を聞くという単調なものは一つもなく、実際に身体を動かしたり、声を上げたり、ゲームをしたり、食べたり、とてもユニークなものばかりで授業時間はあっという間に過ぎていく。ゲストらは久しぶりの「学校の授業」に、どこか懐かしさを覚えていたようだ。授業の合間には休憩時間があり、そこで次の授業を選択するのだが、人気の授業では教室の前に待ち列ができるほどだった。

そして三限目の授業も終わりに差し掛かったその時、事件は起こった。なんと非常事態を知らせるサイレンが学園中に鳴り響いたのだ!教師や上級生たちは不安がるゲストらを一旦落ち着かせながらも、授業はもちろん中断。安全を確保しながら、校長先生のいる1Fへと避難する。その頃、1Fのメインホールでは暗闇の中、あの「夢遊歌」が流れていたのだった・・・。

時間を少し戻そう。メインホールではニュウタウン校長による『ムーンリットアカデミー基礎』の授業がおこなわれていた。ゲストらも寮ごとに分かれての必須授業ということもあり、メインホールには「改めて学園のことを学び直すように」とライカ・琥珀・星の姿も。授業では3つの寮と、それぞれの寮で育まれるぶるうむについてが語られる。

まず、赤月寮の生徒らの素質は「超感覚」。目や耳や口、それらの感覚が研ぎ澄まされることによって、未来が見えたり、動植物の声が聞こえたりする。ライカは生まれつき右耳が聞こえないが、時々死んだ父親の声などが聞こえることがあるようだ。そんなライカはニュウタウン校長直々の推薦状によってこの学園に入学した。(一般的には、両親または親戚にぶるうむが開花した者がいる子どもたちだけが入学を許されるため、かなりの特例と言える。)

琥珀が属する青月寮で育まれるのは「念動力」。手を使わずに物を動かしたり、燃やしたり、曲げたりできる。琥珀のパイロキネシスや、五厘のサイキックがこれにあたる。そして最後に、星が属する新月寮では「幻魔術」を学ぶことができる。3つの中で最も古くから日本に存在しているものの、まだ解明されていないことが多いぶるうむで、幻覚や妖術で人の心を操る恐ろしい力を秘める。

実は先ほど消えてしまった結界も、β先生が操る幻魔術のぶるうむによるもの。三限目に受講していた星と新月寮のゲストらは、ニュウタウン校長の教えのもと九字を切ることで結界を復活させることを試みる。最初はバラバラの動きをしていた星とゲストだったが、心を一つに合わせながら懸命に九字を切っていく。そしてようやく結界が張られた直後、あのサイレンが鳴り響いたのであった・・・。

ピギャギャギャギャギャ!!!まるで獣の鳴き声のようなサイレンののち、メインホールは暗闇に包まれた。慌てるU研メンバーと、状況を確認すべくその場を離れるニュウタウン校長。その後メインホールには、うっすらと歌のようなものが聞こえ始める。

「まずい、夢遊歌だ…!」そんな星の声に被さるように、ホールの片隅に置かれていた未確認飛行物体たんち機が、これまで見たこともないくらいの強い反応を示す。何かに取り憑かれたようにライカがたんち機に手を伸ばそうとした瞬間、琥珀は急いでライカの耳を両手で押さえようとする。その時、琥珀の耳はガラ空きだった。

メインホールに、見知らぬ誰かの歌がこだまする。夢遊歌は、4人目の被害者として琥珀を連れ去っていった。夢遊歌に捉えられた琥珀は、ふわふわとその場を漂い、笑みをこぼしながら、そして眠りに落ちたのだった。

【転】
他のフロアで授業を受けていたゲストや、他の教師・生徒らが1Fメインホールへと戻ってくる。琥珀が夢遊歌の被害にあってしまったことから、当然大パニックに。戻ってきたニュウタウン校長がその場を鎮めるも、緊急の職員会議が開かれるとのことでセレモニーは中止に。ゲスト及び生徒らはすぐさま自室に戻って、朝日が昇るまで決して部屋から外出しないようにと厳重な指示が下る。罪悪感と喪失感でいっぱいのライカは、私もなにかできることをしたいと食い下がるが、校長は一蹴。教師らは校長室へ、上級生らは自室へと帰っていく。

メインホールに残ったのはライカ、星、金子吹のたった3人と、30人のゲストたち。どうしても琥珀のことを助けたいと訴えかけるライカに、ゲストらと金子吹は手を貸すこととなる。一方星はなにかを恐れている様子で、自室に戻るとライカに告げ、二人のあいだに険悪な空気を残しながら、星は去っていった。ライカ、金子吹、そしてゲストらは手分けして校内を探索し、なにか事件の手がかりがないか調査をはじめることに。

ゲストらは先生たちに見つからないようこっそりと夜の校内を探索する中で、さまざまな手がかりを見つけ、また他の生徒らの協力を得ながら、事件の真相に近づいていく。ムーンリットアカデミーでまことしやかに噂されている9つの都市伝説「学校の九不思議」、かつて30年前不運な最期を遂げた女子生徒の噂、彼女が好んで聴いていた「呪いのカセットテープ」、1F奥の冷凍庫にひそむ教師の亡霊…。

また事件の真相には関わらないものの、生徒たちのパーソナリティーにも深く触れることとなる。ライカが抱く、幼馴染の琥珀への想い。琥珀が日記に記していた、U研メンバーとの旅の思い出。名家出身である星の、ぶるうむが開花しないことへの焦りと、幼少期の辛い記憶。これらの中には、事件に関わるものもあれば直接関わらないものもあるが、どれもが「大切な友だちを救いたい」「事件を解決して、いつもの学園生活を取り戻したい」という想いを加速させる、力強い原動力となっていった。

そうして、ゲストたちの周りにはいつしかどんどん仲間が増えていく。呪いのカセットテープの音源と、夢遊歌が似ていることをゲストと共に突き止めたまんが。インフルエンサー独自の情報ネットワークと、未来視の能力で校内を駆け回った波波。そしてついに事件の真相でもある、30年前に亡くなっている女子生徒の名前に辿り着いた星。

それぞれが見つけた手がかりを持ち合い、再びメインホールに集合したゲストと生徒たち。いつの間にか増えた仲間たちに驚きつつも、永遠の眠り事件を解く鍵は、30年前のムーンリットアカデミーで起こったある出来事にあることがわかる。そう、今回の夢遊歌を操る犯人はカイブツではなく、30年前にこの学園で自ら命を絶った女子生徒・金子吹であるということ!その名前に驚く面々だが、気がつけばこの場に金子吹の姿はない。金子吹を見つけ出し、彼女を説得することで、どうにか夢遊歌の術を解くことができないかと考えた一同。そして事件解決の鍵は、どうやら冷凍庫の亡霊:山田球先生のぶるうむにかかっているようだ。再び、金子吹の亡霊を見つけるための探索がはじまった。

探索はいくつかのチームに分かれて実行された。まずは、β先生に取り上げられた未確認飛行物体たんち機を取り戻し、金子吹の居場所を突き止めようと考えたライカ一同。先ほどの授業で習得した「呪いのお札」をうまく使いながら激昂するβ先生を足止めし、見事たんち機を奪還することに成功する。そうして、たんち機の反応を頼りに学園内を歩いていくと、琥珀の部屋にたどり着く。どうやら金子吹の亡霊は、琥珀の夢の中にいるようで・・・。

一方、星とまんがチームは山田球先生を蘇らせるための”禁断のぶるうむ”の手がかりを探していた。禁断のぶるうむのやり方が記された「教科書B」をどうにか見つけだした一同は、さらに校内を探索しながら、ぶるうむを使うために必要な材料をかき集めていく。石鹸、マッチ、石灰に水・・・、それらを調合してついに完成した謎の液体(シュガーシュガーそっくり)!液体を山田球の口に注ぎ込むと、ついに30年前の亡霊が目を覚ますのであった。

その後、なんだかんだあって五厘とホクマン先生も仲間に加わり(どうやらホクマン先生の帽子の秘密を握ったらしい)、β先生とニュウタウン校長先生が進めていた「犯人抹消計画」も阻止し(β先生のガイコツ盆栽を人質にして・・・)、そんな中で遂にライカのぶるうむが開花する。ライカのぶるうむとは、右耳を通して別の「時間」につながることだったのだ。30年前の3Fバルコニー、あの日金子吹の身に起こった真実。ライカの右耳は、たくさんの時の雑音のなかで、ついに金子吹を巡るたくさんの”声”をキャッチする。

【結】
再びメインホールに集まる面々。いまだに琥珀は深い眠りから醒めず、不安と焦り、そして恐怖が募るライカ。ライカが懸命に琥珀に声をかけていると、その周囲に琥珀が見ている夢の世界が浮かび上がる。

それはある夏の日、U研メンバーで行った初めての旅の思い出。飛行機と電車とバスを乗り継いで、目的地のUFO資料館についたのはもう夜の20時。当然資料館は閉まっていて、中には入れない。ふと建物の近くに目をやると、古びた一本の看板が立っている。

ーー『ここはUFOが非常に目撃される地帯です。』
半信半疑ながらも、3人で輪っかになりながらUFOを呼ぶ琥珀とライカと星。その頭上には満点の星空が広がっている。もちろんUFOは現れない。とっても奇妙だけど、どこかおかしくて、あったかい思い出。夢の中で、そしてメインホールにいる琥珀は、ふとライカと星の名前をつぶやく。

物語は再びメインホールに戻ってくる。ライカと星、そして他の生徒たちで、琥珀を現実世界へと呼び戻す。琥珀はついに目を覚まし、一緒に金子吹の亡霊も現れた!金子吹は夢遊歌のぶるうむを使って生徒たちを夢の中に誘い、夢の世界に閉じこもるように、ただただ遊んでいたかった。夢の中の方が幸せ、嫌なことなんて一つもない。現実の方がずっと残酷だと金子吹は叫ぶ。かつてぶるうむが開花せずに悩み、孤立し、友達のいなかった金子吹にとって、夢の世界は唯一の安全圏だった。

30年前に死んだ、金子吹の亡霊。その状況から、彼女はこの30年間、ずっと自ら命を絶ったと思われていた。しかしその真実は、自らを極限状態に追い込むことでぶるうむを開花させようとした際に起こった、ひどく悲しい事故だった。

30年前、ある日の昼下がり。同級生たちはぶるうむを使いながら、校庭でサイキックベースで遊んでいる。いつまで経ってもぶるうむが開花しない焦りから、震えながらもバルコニーに足をかける金子吹。その時、大好きな歌が微かに聞こえた。ふとそのメロディに気を取られてしまった彼女はバランスを崩し、ゆっくりと落ちていく。この歌、誰かと一緒に歌いたかったな。そんな想いとともに、地面にぶつかる1秒前、彼女のぶるうむはようやく開花したのだった。

痛いほどの沈黙。友達として学園に迎え入れようとするライカたちだったが、過去の霊体である金子吹はこの時代にはいてはいけない存在。そんな中、まんががある提案をする。山田球先生のテレポーテーションの能力で、金子吹の霊体を30年前に送り返すことができないだろうか。ぶるうむが開花し、もう一度この世界で生きたいと願うようになった彼女に、今度こそ居場所を作ってあげることはできないだろうか。禁断のぶるうむではあるが、先生らの承認も(なかば強引に)得ることができ、ついに山田球先生のぶるうむが発動、エレベーターを介して過去へのゲートが開いたのだった!

名残惜しそうにみんなを見つめる金子吹。彼女の周りをぐるりとたくさんの友達が囲んでいる。U研メンバー、生徒・教師たち、そしてゲストらは過去へと帰っていく金子吹に大きく手を振るのだったーー。

こうして創立記念セレモニーで巻き起こった「永遠の眠り事件」は、遂に幕を閉じた。被害にあっていた他の生徒らも目を覚まし、ついでにガイコツ盆栽を壊されたβ先生にはしっかりと大目玉を喰らった。30年前に戻った金子吹もどうやら元気にやっているらしい。夜はまだまだ長い。創立記念セレモニーも再開だ!

・・・でも油断しないで。ここはならざる力を学ぶムーンリットアカデミー。この学園には、まだまだ生徒や教師さえも知らない秘密が隠されている。カイブツの噂の真相、生徒らのぶるうむの秘密、ぶるうむを開花せずに卒業すると記憶が消える噂は、嘘かまことか。

気になるお話の続きは、来冬開催のプロムパーティー『ムーンリット☆ナイト』で。


泊まれる演劇『Moonlit Night』
青春と怪奇が踊りだす!
会期:2025年1月17日(金) - 3月16(日) ※休演日あり
場所: HOTEL SHE, OSAKA(大阪府大阪市港区市岡1-2-5)
先行チケット抽選:10月16日(水)20:00 〜 10月27日(日)23:59


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