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私が息子に出逢うまで(14)

怒号

夕方、課長と共に会社へ戻るとアシスタントが慌てて課長のデスクへやって来た。

「今の状況は?アイツ(課長代理)から一切報告ないけど。」

課長が尋ねるとアシスタントは言いにくそうに答えた。

「課長代理は経緯報告書を作って客先へ持っていきました。もうすぐ戻ると思います。」

課長の顔が険しくなる。

「内容を確認は?俺は見てないぞ。課長印はどうしたんだ?」

アシスタントは更に言いにくそうに答える。

「とりあえず課長代理の判子で提出すると言っていました。」

課長は全身から怒りのオーラを出しながら、アシスタントに席へ戻るように言い、電話を掛けた。

「おい!お前今どこだ?今すぐ戻れ。話がある。」

しばらくして課長代理が戻り、課長の横に走り寄った。

「お前、自分の立場分かってんのか!?お前は課長代理であって課長ではない。経緯報告書の内容確認もせず、ましてや自分の印鑑を押して提出するなんて有り得ないぞ!会社の信用にも関わることだ。で、お客様は?納得したのか?」

課長代理は俯いたまま、小さな声で「いえ。納得してません。」と答えた。

課長はため息をついた。

「だろうな。お前はお客様の気持ちを全く理解していない。社内での振る舞いもおかしい。部下が何故お前ではなく主任に相談するか分かるか?
分からないだろ。長年、代理から昇格出来ないのは、そういう所が原因なんだよ!
経緯報告書を見せろ。チェックする。」

そこで主任を引き合いに出すのはやめてほしかった。これから課長代理はますます私に敵意を向けるだろう。
課長代理は慌てて報告書のコピーを差し出した。

「なんだこの報告書は!全く誠意がない!主任に書き方から教えてもらえ!おい、お前がこの前作った報告書見せてやれ、早く。」

(えっ!?私が教えるの?)

課長代理のやり場のない感情の矛先が、グイッと音を立てて私に向いた。

つづく…


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