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私が息子に出逢うまで(19)

会議

営業報告会議当日の朝は騒がしかった。本社だけでなく支社からも続々と課長が集まってきたからだ。私の所属する課は、課長はまだ在籍しているが2日後に退職するため課長代理の出席が決まっていた。

数日前に、内緒のミーティングで伝えた内容を課長代理は上手くまとめて話せるだろうか。課長はハナから「無理だ」と言っていたが、私たちは信じるしかなかった。

課長代理は会議直前まで私の席で内容の擦り合わせをし、会議に臨んだ。"大丈夫ですよ"と声を掛けて代理を見送り、私は外回りへ出た。

営業を終え帰社すると、課長が待っていた。課長が少し笑いながら言った。

「やっぱりアイツ、ダメだったぞ。」

-どのようにダメだったんですか?

「全部お前のせいにして終わらせたらしい。笑うしかないよな。」

-は?どういうことですか?

逃げ口上

"全部私のせい"の意味が全く分からない。私は確かに他の課員と私の担当顧客について状況報告をしたし、会議直前まで内容の確認もした。
なのに何故?

「アイツが自分担当顧客のことばっかり喋って終わろうとするから、もちろん部長から主任(私)と他の課員の顧客の状況について質問がたくさん出た。だけどアイツは答えられなくて、"主任が妊娠中で体調を理由に報告してこないので、分かりません。彼女は引き継ぎすら始めず困っています"って言ったらしい。

とりあえず会議はそれで終わって、部長が俺に事実確認しに来たところ。
俺はお前が俺に黙って課長代理に営業報告してることに気付いてたから、課長代理の発言が嘘なのは伝わってる。後はお前から直接部長に営業報告しておいてくれ。」

(なるほど。そう来たか、課長代理。)

私は部長を捕まえて、営業報告と課の状況を詳細に説明し、産休に伴う顧客の引き継ぎを待つよう課長代理から言われていたことも明かした。

「分かった。課長代理を責めたいところだが、代わりがいない。
引き継ぎの件は悪いがギリギリまで待ってくれ。君の担当顧客はほとんどが大口だ。慎重に後任を決める必要がある。正直、君の課には安心して任せられそうな営業がいない。もちろん、課長代理も含めてだ。」

分かりました、と答えて席に戻る。
課長に"どうだった?"と聞かれ説明すると"ギリギリまで引き継ぎさせないとか、終わってるな"と言っていた。

絶対安静の間も私に仕事をさせた課長が一番終わってるけどな、と私は心の中で毒づいた。

つづく…

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