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私のダンナが辞めるまで(11)

ギャンブル

「まず、先に言っておくけど、今回のことで自分らが悪いと絶対に思わないで欲しい。俺がやりたくてやったの。会社にとって必要なことだから、誰かが言わないといけない。これで何も考えない経営陣なら、俺は後を継がない」

社長への直談判は、ジュニアにとって賭けだったのだ。いつか自分が継ぐであろう会社が社員の声に耳を傾けるか、社員のためを思って変わろうとするか。
それほどの覚悟を持って臨んでくれたのだと知り、胸が熱くなった。

無茶振り

感謝と謝罪、そして会社を辞めようと決めたことを、私は話した。少しの沈黙の後、ジュニアは言った。
「うん。多分会社辞めようとするんじゃないかと思って、今日電話した。
何もしてやれなかった俺が言えたことじゃないけど、待ってくれないか?こんな理由で貴女に辞めて欲しくない。
会社が良くなっていくために、必要な人だと思ってる。だから力を貸して欲しい。頼む。」
有り難い話だがルールは変わっていない。
私たちに残された選択肢は、来年の結婚までに私が辞めるか、転勤するかしかない。
役員会でジュニアが直談判しても聞く耳さえ持たなかった経営陣。
彼らから見れば、最早捨てるべき駒でしかない私に、ジュニアは何を期待しているのか。
「どうすればいいか分かりません。」それが正直な気持ちだった。それを聞いてジュニアは言った。

「もし、自分のことだけ考えていいとしたら、どうする?」

想定外の質問に、黙り込んだ。

つづく…

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