私が息子に出逢うまで(10)
不眠
実家には室内犬がいた。父が帰らないことを一番心配して待っていたのはその犬だったかもしれない。
母が寝室へ行くよう促しても、じっと玄関でお座りしたまま動かず、眠ろうともしなかった。
明け方になり、犬がキャンキャンと鳴きながら玄関のドアを開けようとする音で、私は目が覚めた。
父が帰ってきたのだ。
私たちが眠っている和室に近づく足音。そっと襖が開き、父の気配が近づく。思わず私は目を瞑り、寝たフリをした。しばらくして父は寝室へ向かったようだった。
不信感
気まずいまま朝を迎え、夫と2人でダイニングへ向かった。私たちに気付いた父。
「おはようございます!昨日は申し訳なかったね!急に帰れなくなっちゃったもんで。」
夫は何と言っていいか分からず"はぁ…"と呟いた。
「何が帰れなくなったよ!心配かけて!」
半泣きで叫ぶ母を遮るように父が夫に話し掛けた。
「まぁ、ゆっくりしていってくださいな。」
すごい神経の持ち主である。
朝ご飯を終え、身支度を済ませ、私たちは出発することにした。
-長い間お世話になりました。
私は両親に頭を下げた。
「旦那さんにあんまり迷惑かけるなよ。病気じゃないんだから。」
その言葉で、早く帰宅する決断は正しかったと確信した。私は何も答えず車に乗った。
帰りの車中、夫がポツリと言った。
「確認だけど、お父さん、孫が出来て嬉しい気持ちはあるんだよね?出産はこっちでした方がいいんじゃない?俺の前でもあの態度は異常だよ。
俺はさ、お前はさておき産まれてくる子供にまで影響があったら嫌なんだよ。」
最後の余計なセリフはさておき、夫の言い分は最もだった。
父も孫の誕生を楽しみにしていると
信じたかった。
つづく…
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