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私のダンナが辞めるまで⑤

刷り込み

名探偵野郎のおかげで、私たちの結婚は社内で周知の事実になった。たくさんの人がお祝いの言葉をくれたが、必ず最後に「貴女が辞めちゃうの勿体ないよね」と言われた。
はじめのうちは辞めないよー!と返していたが、徐々にイライラが募りはじめる。

なんで、私が辞めなあかんの?

追い討ち

数日後、人事役員から呼び出しがかかる。人事役員は私を気に入っていたが、50過ぎて「君可愛いね〜」とかハイテンションで言える神経が皆目理解出来ず、私は大嫌いだった。
チャラ人事野郎である。

「○○(私)ちゃんさぁ〜、どこに転勤したい?今なら希望聞いてあげるよぉ〜?どうせ、転職先見つかってないんでしょぉ〜?」

宣戦布告

私はキレた。
だが、もう私だけの問題ではない。
目を瞑り、夫と営業部の役員の顔を思い浮かべる。冷静に。冷静に。
負けるわけにはいかない。

ズンズンズンズン
私はチャラ人事野郎に歩み寄り、高そうな椅子に座るヤツの顔に自分の顔を近づけた。

「私、転勤しませんので。」

それだけ言って、役員室を出た。
後悔するよぉ〜、と部屋の中から声がした。
殴らなかった自分を褒めてあげたい。

そう、私たち夫婦の本当の敵は、社内結婚禁止のルールと、結婚したら女は辞めるべきという空気に満ちた会社組織だった。

つづく…

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