私が息子に出逢うまで(21)
性差別
課長代理の乱入に、私たちは唖然とした。
社外の人もいるのに邪魔してくるなんて、相当酔っているのか、もしくは敢えて私に恥をかかせようとしているのか…
"女だから○○"というセリフは正直聞き飽きていた。大口契約が決まった時や、皆が苦戦する中、顧客に料金値上げの承諾を貰った時など、何か私が目立った成果を上げたら決まって"女だから簡単"、"女は笑っていれば仕事が貰える"などと言われてきた。
実際はそんなに甘いものではない。「女性担当は嫌」と言う男性はとても多く、女であるだけで交渉すらしてもらえなかったことは一度や二度ではない。失敗も数え切れないほどした。何とかアポイントが取れた会社へ度々訪問し、時間をかけて信頼関係を築く努力をしてきた延長線上に成果があるだけなのに。
「依怙贔屓とは具体的にどんなことですか?」
A社長が課長代理に聞いた。
「コイツはね、役員のお気に入りで大口顧客を優先的に担当させてもらってんすよ。社長のジュニアとも接点ないのに気に入られてるし。普通は2年で顧客の担当替えするのに、コイツだけは変更なしっすよ。課長にも贔屓されてる。せこいんですよ。」
-それは勘違いですよ!
私は思わず言い返した。
反撃
(課長代理は全然分かってない!)
私の勤める会社の大口顧客は銀行か社長や役員からの紹介が多く、肩書きのない営業はそもそも担当できない。即ち私の所属する課の担当案件は課長代理か私のどちらかが対応するしかない。
紹介が少ないのは、単に課長代理が役員に信用されていないからだ。
ジュニアは入社当初から私を気にかけてくれていただけだ。
担当替えはしようとしたが、「替えるなら取引を止める。」と言われて課長が諦めただけなのだ。
課長代理と一緒に飲んでいる男性社員も「女だからって得してることは正直あるでしょ?認めようよ。」と笑いながら言っている。
(全部説明しないと分からないのかな…)
悲しい気持ちと呆れた気持ちが入り混じり、私は黙った。
その時だった。
「あっはっはっは!」
A社長は大声で笑った。
だが次第に険しい表情になっていった。
「おい、そこのメガネ。」
課長代理を指差し、A社長は立ち上がった。
つづく…