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私が息子に出逢うまで(16)

尾鰭

"私が課長と男女関係を持ち、特別扱いされている"というデマは、社内で瞬く間に広まっていった。皆、好き勝手に話を盛り、話していた。

"私のお腹の中にいるのは課長の子で、事実を隠すために2ヶ月会社を休んでいた"という話もどこからか聞こえてきた。

有りもしない噂を流されることは、初めてではなかった。私が同期で一番先に昇格した時も、社長の愛人説やお客様の愛人説が囁かれた。

事実でない限り気にしないと決めて、何もせず皆が飽きるのを待つつもりだった。
しかし、そうにもいかない事情が出て来た。

嫌がらせをする者が現れたのだ。

邪魔

ある日、出社すると鍵をかけたはずのロッカーが少し空いていた。
嫌な予感がして扉を開くと、常備していたジャケットが無くなっていた。

(やられた!)

恐らく目的は窃盗ではなく、困らせることだろう。プライバシー保護のため、更衣室に防犯カメラはなく、犯人を特定するのは困難だった。私はそのまま扉を閉めて事務所へ向かった。

その日から、デスク周りの物がなくなるようになった。パソコンは毎日持ち帰り、名刺などの顧客情報は鍵のかかる引き出しに入れ、開けたら分かる仕掛けをした。

課長が退職すれば噂もおさまるだろう。そう思って管理部にも報告せず、もちろん課長にも言わず、なるべく普段通りに仕事をこなした。

また別の日、外回りから戻ると私の席に誰かが座って喋っていた。

(あの人どこかで見たことあるな…誰だっけ?)

自分の席まで戻り、そこに座っている女性に"すみません"と声を掛けた。振り向いた顔を見て、思い出した。

私が夫と社内結婚し、夫が退職すると決めた時、女子トイレで私を罵倒した女の人だった。

「何?私、今喋ってるの。見て分からない?」

そう言うと彼女は席を立たず、話を続けた。あからさまな嫌がらせだ。
彼女はまたしても、私に喧嘩を売ってきたのだった。

つづく…

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まきんこ
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