私が息子に出逢うまで(13)
敵視
2ヶ月振りに会社へ出勤した。部長、課長、アシスタントに長期離脱のお詫びと挨拶をして、席に着く。
「また宜しく!」
課長は機嫌良さげに言った。
デスクの整理をしていると、課長代理がやってきた。どうやら課長の構想を聞いたらしい。
「あのさ、体調万全じゃないよね?無理に早く来なくていいから。僕がいるから。大丈夫だから。」
誰が見てもわかるほど、敵対心が剥き出しだ。
-ありがとうございます。無理なく頑張ります。何かお手伝い出来ることがあれば、言ってくださいね。
「何もしなくて大丈夫。僕がいるから。」
課長が彼にどのように伝えたのか、何となく想像がついた。"お前に俺の代わりは出来ない、この課はアイツ(私)に任せる。"とストレートに言ったのだろう。うまく説明するようお願いしたのに。
その日から課長は私の担当顧客への訪問に同行し、自身の退職を報告したが、後任の課長はいないと説明していた。それを知った課長代理は明らかにイライラしているようだった。
失態
私の復帰から数日経った昼過ぎ、私と一緒にいた課長の携帯が鳴った。話しているうちに表情が険しくなり、終いには怒鳴っていた。
私はどうしたのか尋ねた。
課長代理がミスをしてしまい、顧客から"経緯報告書"の提出を求められたが、正式書面には課長印が必要なため、課長に知られたくなかった課長代理は黙って放置していた。顧客がしびれを切らし、「責任者を出せ」と会社に怒鳴り込み、アシスタントが困って課長に電話をかけてきたらしい。
-課長、そのお客様のところへ行ってください。
そう言うと課長は首を横に振った。
「まず本人から俺に経緯と、どう対応するつもりか説明させる。顧客にも自分で謝罪に行かせる。俺がアイツに課長にはなれないと言った時、必ず課長になりますって言ったんだ。だから自分でやらせる。」
その後、課長は会社へ戻らず、私との挨拶回りを続けた。
課長の携帯は、帰社するまでずっと震えていた。
つづく…