私のダンナが辞めるまで④
青い炎
名探偵野郎と2人、客先へ向かった。
ヤツはすぐにでも自分のスクープを話したいようでウズウズしていたが、私がそうはさせなかった。訪問先の案件の話を延々と続けたのだ。
「何やってくれたんだよ!」と思ってはいたが、怒りたい気持ちは不思議となく、ただ静かに、青く冷たい炎が心の中で燃えているようだった。
意外な反応
訪問を終え、待ってましたと言わんばかりに名探偵野郎が話し始める。
「すんごい事、分かっちゃったんだよねー」
なぁに?と私は微笑んだ。
「俺に言いたい事ない?」
ないよ?と私は笑ったまま。
「○○君(夫)と付き合ってるよねー!?」
ジャジャーン、と音が聞こえそうな言い方だ。
ん?あれ?ごめん!言ってなかったっけ?
付き合ってる。みんな前から知ってるよ?
「え?」名探偵野郎は言葉を失った。
地下情報網
帰社するや否や、名探偵野郎は周りに夫と私の交際を知っていたか聞いて回った。
皆口を揃えて、前から知っていたと答える。
落胆を隠せない名探偵野郎。
情報は鮮度が命。ヤツにとって「古い」「みんな知ってる」と言われる事が一番辛い。
それが分かっていた私は、外出前に女性の情報屋的存在の先輩に事のあらましを話し、あえて私たちの情報を流してもらい、「みんな前から知っていた」状況を準備していた。
オンナを甘く見てはいけない。
その日以降、ヤツが私たちの交際に関して発言することはなくなった。
しかし、私たち夫婦の本当の敵は、名探偵野郎なんかじゃなかったのだ。
つづく…
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