私が息子に出逢うまで(8)
弱音
1ヶ月ほど出血を繰り返していたが、幸いお腹の赤ちゃんは無事だった。
しかし、つわりは酷くなる一方で、それまで比較的症状がマシだった日中も症状が現れるようになった。1日1回、ティースプーンでスープをひとくち食べるだけの日が4日続き、とうとう起き上がることも辛くなってしまった。
それでも電話は鳴り止まない。正直、出られる状態ではなかった。お腹に力が入らずしっかりと声が出ないのだ。
夕方になり、しびれを切らした課長からたくさんのメールと着信があった。少しマシになったタイミングで電話に出た。
「お前、自分でやるって言ったことくらいやれよ。無責任過ぎるだろ。電話もメールも出来ないのか?」
-つわりが酷くて何も出来ません。助けてください。
そう言いながら泣いてしまった。身体も気持ちも限界だった。
「そんなに酷いとは知らなかったけど、出来ないなら出来ないと何故連絡しないんだ。その様子だとまだ復帰は無理だな。対応はこちらで考える。今の状況をメールしてこい。」
課長が一方的に話をして電話は切れた。
自主避難
父親との関係は、相変わらず最悪だった。課長との電話で泣いている姿を見ても、「なんだ、電話出来るんじゃないか。そんな所でうずくまるな。」と言うだけだった。
その日の夜、課長に今の状態を伝えるためメールしようとPCを開いた。お風呂上がりに私を見つけた父は突然怒鳴りだした。
「お前はしんどいのか、しんどくないのかどっちなんだ!?ご飯も食べずに心配ばっかりかけて!仕事が出来るなら会社に行け!」
私はPCを見つめたまま、動かなかった。いや、動くと泣いてしまいそうで動けなかった。
両親が寝室へ行くのを確認すると、夫に電話を掛けた。声を聞いた瞬間、これまでのことを思い出して泣いてしまった。
-お願い。今週末迎えに来て。私もう無理。お父さんが…お父さんが…
夫は何も聞かず、「土曜日に行くから。」とだけ言った。
つづく…