スタンフォードが中高生に教えていること①
最近「スタンフォード」を冠につけた本って多いですよね。
こちらの本はずいぶん前に読んだのですが、noteを始める前だったので内容をさっぱり覚えてません・・・。やはりアウトプットしないと忘れてしまいますね。
こちらは読んではいませんが、↓のYouTubeで内容は確認しました。
ちなみにサラタメさんはこのように本を読んで内容をアウトプットするきっかけになった存在であり、それまで全然見ていなかったYouTubeも彼の動画を見てから、いろいろと見るようになりました。
というわけで、「スタンフォード」は日本人のブランド志向をくすぐるキラーワードの一つのようです。ちなみに、スタンフォード大学は世界で5本の指に入る大学だったりするわけですが、私は毎年カリフォルニア州に行っているので、すでに5,6回行ったことがあります。そこで、自分の生徒たちがスタンフォードの学生たちにキャンパスツアーをしてもらったり、プレゼンを発表したりするのですが、日本の大学しか知らない生徒たちは毎回そのスケールの大きさと荘厳さに圧倒されます。世界中の優秀な知が集中していると言っても過言でないスーパーアカデミックな環境は、私自身も行くたびにワクワクさせられます。
さて、そんなスタンフォード大学は今から15年ほど前にオンラインのハイスクールを設立していて、なんとその校長が日本人であるということにまず驚きます。
そのスタンフォード・オンラインスクールの校長である星友啓氏の著作「スタンフォードが中高生に教えていること」を読んだので、感想を記します。
まず、驚くのが序章の長さです。(序章だけで33ページあります)
序章では、以下の8つの誤った常識がピックアップされ、我々の教育の常識を覆えされます。
【誤った常識1】:成果や能力をほめる
【誤った常識2】:手取り足取り丁寧に教える
【誤った常識3】:評判の教材や勉強法で学ばせる
【誤った常識4】:得意な学習スタイルで学ばせる
【誤った常識5】:ストレスをさける
【誤った常識6】:テストで理解度や能力を測る
【誤った常識7】:同じ問題を反復練習させる
【誤った常識8】:勉強は静かに1人でやらせる
どれも至極一般的な教育に関する共通理解だと思えますが、親や教師が当たり前のようにやっているこれらのことが逆に子どもの主体性を奪っているというのが星さんの主張です。
すべてを解説するとそれだけで5000字くらい行ってしまいそうなので、6のテストに関してのみ思ったことを書きます。
星さんは「テストの点数は、テストにどれだけ慣れているかの指標でしかない」と切り捨てます。確かにテストの結果は、親の収入だったり、ストレスマネジメントだったり、その日の体調だったり、テストへの慣れ具合だったり、学力や理解度以外のものを色濃く反映しています。
我々はまず、「テストは実力を測らないという事実」と「テストの一番の強みを生かしていない現状」を理解しなくてはいけません。
では、テストの一番の強みは何かというと、本来テストは学びを評価するものではなく、学びを生み出す道具である、ということです。
★テストを自分の学習にうまくい取り込む4つのコツ
1.ちょくちょく何を学んだかを思い出すテスト
2.学んだことを思い出しながらまとめる癖をつける。
3.学ぶ前に、これから学ぶことの診断テスト。
4. テストや思い出し練習が、長期的研究や学習効果の向上につながることを知る。
以前にもちょくちょく書いていますが、日本の教育では「テスト至上主義」と言えてしまうほど、教育の成果がテストによって測られています。それは大学入試という頂点から幼稚園のお受験まで裾野が広がっています。(大人なっても昇進のためにTOEICで良い点数を取らなければいけない、なんていうばかばかしい制度もまだまだ存在しています)
私は受験自体を否定はしません。こどもは受験を通して、知識だけでなく、自己管理能力やGrit(やり抜く力)、Resilience(折れない心)、などさまざまなものを身につけることができます。
ただ、一回だけの一発勝負で、しかもそのテストのスコアだけで合否を決めるというのは今の時代にはそぐわないと思います。少なくともテストの結果だけではなく、アメリカのように多角的に子どもを評価する総合選抜型入試(旧推薦、AO)システムをもっと広げていくべきです。
暗記に勤しみ、偏差値を上げて、”良い”大学に入るということは決して悪いことではありませんが、そのような生徒は「合格」がゴールになってしまい、そこで学ぶことをやめてしまう傾向が非常に強いと思います。(自分もそうでした)
これからは大人になっても常に学び続ける自律型学習者、生涯学習者でなければ、時代の流れに取り残されてしまうのは自明の理です。だからこそ、学生時代に学びの姿勢と学びの作法を身につけてほしいと思い、日々教育活動に取り組んでいます。そんな私の教育観とかなりシンクロする序章の内容でした。(やばい、まだ序章なのに2000字を超えてしまった・・・(;´・ω・))
Design Your Learning
スタンフォード・オンラインスクールでは”Design Your Learning"(自分の学習をデザインする)をモットーに、生徒一人ひとりのニーズや目標に合わせた学習をサポートしています。(カリキュラムや時間割などは個人個人でかなり自由にアレンジできるように設定されています)
これはオンラインスクールだからこそできる部分もありますが、「教育の個別最適化」という概念が日本よりも浸透していることの表れとも取れます。
ちなみに、日本では「N高」が母体の企業の知名度とスケールメリットを生かして、教育界に革命を起こしています。
N高をご存じない方はこちらがおすすめです。ただ2017年に出版された本なので、そこからまたかなり進化しています。
そして以下の文章に強く共感を覚えました。
プレッシャーやストレスを感じるのではなく、順位や偏差値からやる気を感じられる生徒は受験戦争の世の中ではラッキーなのかもしれません。
しかし、私たち教育者がするべきことは、競争心をたきつけることで生徒のやる気を上げることではありません。
他の人との比較で得られるやる気では、持続的な学びに対する主体性は養えません。
こうしたスキルを身につけたい。これは知っておくべきだ。こっちはうまくできるので、あっちの苦手分野をフォーカスしよう。
今後のための具体的な学びにつなげられるような評価の仕方を心掛け、あくまで生徒の学び自体のサポートとして成績を利用していかなくてはいけません。
Social and Emotional Learning(SEL)
SELは直訳すると「社会と感情の学習」となりますが、昨今アメリカの教育界では大きなトレンドとして扱われています。(↓の投稿でも書かせていただきました)
• 自分を理解する力(self-awareness):自信をもって成長マインドセットで、自分の強みや弱みを理解することができる。
• 自分で自分を統制する力(self-management):ストレスとうまく付き合って、自分の衝動を適切にコントロールし、自分で目標を設定して到達していくために自分を動機づけることができる。
• 他者を理解する力(social awareness):多様な背景や文化を有する人たちの視点を理解して、共感したり思いやったりすることができる。
• 他者とうまくやっていく力(relationship skills):他の人とうまくコミュニケーションができ、協力できる。不健全な場の空気に流されない。対立を建設的に解決する。他人に助けを求めたり、自分から他人を助けることができる。
• 適切な意思決定をする力(responsible decision-making):自分の行動や、他人とのやり取りの中で、倫理的基準や安全性、社会的規範に基づいて、建設的な選択をすることができる。
私も大注目しているSELですが、スタンフォード・オンラインスクールでも「生き抜く力」の教育の基盤を担っていると星さんは言っております。
正直オンラインだとなかなか難しい面もあると思うのですが、カリキュラムと日々の授業の両輪でのダブルサポートにより、オンラインでのSELを実現し、全米でも高く評価されるようになったとのことでした。
生徒たちに対して、認知能力だけでなく非認知能力の涵養を目指している私としては、このスタンフォード・オンラインスクールの取り組みは大変勉強になりました。
まだ書きたいことが他にもあるので次回に続きます。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。