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よしこさん⑧/❾

 いや、いやいや。ノンノンノンノン。そういうことじゃない。安易な方に流されてばかりいてはいけない。私はよしこさんとただお喋りをしたいんじゃない。毎日を生きていく基礎力になるエネルギーを、もらったり、できれば同じくらいあげたりもしたいんだから。まだ諦めずに、双方に快適で、持続可能な距離をみつけて繋がったままでいきたい。

 ふくちゃんは、私を重症と言った。すなわち、おかしいのは私の方なのだ。いい仕事をしようと、社員のみんなが幸せになるような会社にしようと、すべてに感謝してひたむきにがんばってるよしこさんが、魅力的でないわけがない。気まぐれで再び活性化した私との縁を運命と思って大事にしてくれる人をおもしろくないだなんて言うのは、よしこさんのことがちゃんと見えてないからだ。よしこさんは人間をがんばっていて、美しい。彼女のように生きられたら、生きている間も死んだ後も、関わった人みんなにいいものが残る。変えなきゃいけないのは、私のおかしいとこだ。おかしいのの根本は大体わかる。マギコンイチロウが ”根拠のない自信”というのを持ってないのと、幼少期に、”安全基地”とか”セキュアベース”とか呼ばれるものと、トメスエドイが”自己肯定感のその下にあるもの”と呼んでる部分がきちんと作られなかったのが関係あるんだろう。でも幼少期はもう変えられないけど、変なずっしりしたものと、それに派生するらしい歪な思考とか恐れみたいなのはここまで長いことずっと持って来たので、対応策はいろいろ持ってる。マギコンが勧めるから走れるだけ走ってデフォルトモードネットワークシステムを稼働させるようにしてるし、小さな新しい挑戦も続けてる。根拠のない自信はもうできないから、根拠のある自信を少しずつ作って増やそうとしてるし。多分もうほとんどうまく行ってる。あとちょっと。あとちょっと足りないのはなんだろう。

 いいから信じたらいいのか。

 考えたら、よしこ社長は常に決断をしなきゃいけなくて、ややこしい問題にも短時間で対処する。私がうるさいことやめんどくさいことをミーミー言うのにも、短時間で対処できるはずだ。ということは大して迷惑になってないってことだな。社長は社員を育てなきゃいけないので、私に応対することは、私みたいな変なのが入って来た時にうまく取り扱う練習になる。なんでもポジティブに捉えるなら、そういう解釈もできる。ということは、いくらか強引に考えると、私が鬱陶しい存在であることがよしこさんの役に立っていると思うこともできる。そういうことなら多少褒められても、多少肯定的な言葉を向けてもらっても、もういちいちビビらなくていいのかも!
 

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