【Edge Rank 1150】10月のミュージアム【TOMAKI】
「ミュージアム」が好きです。博物館や、美術館。ほかにも、図書館や動物園、植物園、水族館、資料館や記念館など。ここらへん全部ひっくるめて、ミュージアム。
アメリカに留学していた学生時代は陶芸を中心にアート全般を学んでいたのですが、四年生の時にMuseology(博物館学)のクラスを受講して、これがまためっちゃ面白かったんですね。クラスメイトとチームになって、博物館をつくって運営するシミュレーションをしたりなど。サンフランシスコへ、博物館・美術館・ギャラリーなどの裏側を見学できるフィールドトリップにも参加。インターンとしてネバダ州の歴史博物館で仕事もしました。
今回は、今月巡ったミュージアムのご紹介。
ぐるっとパス2024でミュージアムざんまい
10月5日に、今年二度目の「東京・ミュージアム ぐるっとパス2024」を購入しました。このパスは、2,500円を払うと都内近郊にある103の美術館・博物館・動物園・水族館・庭園などの入場券や割引券がセットになったもの。オンラインで購入するとQRコードが発行されるので、それを窓口で見せると追加料金なしで入場できたり、あるいは入場料の割引を受けられるんです。有効期限は2か月間。その間で、各施設1回ずつ訪れることができます。
1月に利用したときは、2か月間で34か所のミュージアムを訪れました。以下が、そのリスト。
目黒区美術館(¥700)
アクセサリーミュージアム(¥1,000)
郷さくら美術館 東京(¥800)
すみだ北斎美術館(¥400)
古代オリエント博物館(¥600)
豊島区立熊谷守一美術館(¥500)
六義園(¥300)
東洋文庫ミュージアム(¥900)
文京区立森鴎外記念館(¥300)
印刷博物館(¥400)
小石川後楽園(¥300)
野球殿堂博物館(¥600)
WHAT MUSEUM(¥1,500)
浜離宮恩賜庭園(¥300)
国立映画アーカイブ(¥250)
一葉記念館(¥300)
旧岩崎邸庭園(¥400)
恩賜上野動物園(¥600)
旧東京音楽学校奏楽堂(¥300)
東京都美術館(¥500)
石洞美術館(¥500)
昭和館(¥360)
相田みつを美術館(¥1,000)
新宿区立漱石山房記念館(¥300)
東京オペラシティアートギャラリー(¥1,400)
東京都庭園美術館(¥1,400)
パナソニック 汐溜ミュージアム(¥1,200)
江東区深川江戸資料館(¥400)
清澄庭園(¥150)
東京都現代美術館(¥500)
葛西臨海水族園(¥700)
地下鉄博物館(¥220)
そごう美術館(¥1,600)
夢の島熱帯植物館(¥250)
2,500円のパスを購入して、合計20,930円分の施設を訪れたので、だいぶお得に活用できましたね。こういう機会がなければ訪れることはなかったかもしれない美術館や博物館なども訪れることができました。
そして今回購入したのは、2024年バージョン。訪れることができるミュージアムのリストも少しアップデートがあるようです。施設によっては、常設店のみに利用できるものや、企画展のみのもの。割引のみの場所もあるので、事前に公式サイトをチェックしてみてください。
というわけで今月は、以下の場所を訪れました。
東京オペラシティ アートギャラリー
新宿の東京オペラシティにある公益財団法人東京オペラシティ文化財団が運営管理する「東京オペラシティ アートギャラリー」にて開催中の、松谷武判さんの作品展を観てきました。接着剤を用いてキャンバスに大きな気泡を作り出し、それをほかの画材と組み合わせたりしつつ、作品を形成していく。60年間同じ手法を使い続けながらも、常に新しい表現を模索し続けているようで、その変遷を見ていったら「すごいな」と思いました。80歳を超えても、現役で作品を作り続けていらっしゃいます。
このアートギャラリーは、空間や照明、展示の仕方など、本当にすばらしい。好きな美術館なので、今回ぐるっとパスを手に入れて、一番最初に訪れました。今回の企画展は一般入場料が1,600円ですので、他にも訪れたり博物館や美術館があるなら、ぐるっとパスでの来場がおすすめです。
東京都写真美術館
恵比寿にある、東京都写真美術館。私は学生の頃、専攻は陶芸彫刻だったのですが、他にもいろいろアート関連のクラスを受講していて、その中のひとつが写真でした。自宅のバスルームを暗室にして、そこでフイルムや写真を現像したり。卒業して最初に手にした職が「フォトグラファー」だったので、大学で学んでいてよかったな、と。
さて、この東京都写真美術館。2000年代の初めころ、恵比寿の会社に勤務していたこともあり、昔から何度も訪れている美術館です。今年の年始にもぐるっとパスで訪れる予定だったのですが、このパスが使える企画展のタイミングと日程が合わず、普通に無料の展示だけを見たのが前回。
今回はしっかりと、ぐるっとパスを使って「TOPコレクション 見ることの重奏」というタイトルの収蔵作品展示を鑑賞しました。マン・レイの作品など、何度かこの美術館で見たと思います。学生時代、図書館にあった写真集を食い入るように眺めて、自分でもソラリゼーションの手法で作品をつくってみたのを思い出します。
フランスの街を撮り続けたウジェーヌ・アジェの写真シリーズも良いですね。記録写真のような。それと関連して、ベレニス・アボットのニューヨークの写真も。街を見つめる目。まさに、重奏という感じの。
個人的にいいなと思ったのは、アンナ・アトキンスさんのサイアノタイプ写真。いわゆる、日光写真ですね。アンナさんは植物学者だそうで、植物標本の絵の代わりに、この日光写真の手法を取り入れたそうで。植物のシルエットを記録する、こういう使い方もあるんだな、と。
こちらの企画展は、通常の一般料金は700円ですが、ぐるっとパスの利用で追加料金はなしでした。
渋谷区立松涛美術館
「空」をテーマにした企画展。渋谷の松涛美術館で開催中の「空の発見」という作品展を見てきました。実は、年始のぐるっとパスを使った美術館巡りの際にも、2度ほどこの美術館を訪れているのですが、いずれも休館中であったり、営業時間外であったりして中に入れず。入場できたのは今回が初めてです。
まず、建物が素敵ですね。昭和56(1981)年10月に開館。白井晟一さんによる設計で、中庭にある噴水を取り囲むように展示空間が建てられています。階段の雰囲気も素晴らしい。
空をテーマに、江戸時代の屏風絵や浮世絵、あるいは泥絵といった風景画の中にある空から、次第にリアリティのある描写や構図が取り入れられた絵画、ならびに写真や映像なども含む現代アートに至るまで。さまざまな「空」を鑑賞することができます。アート作品だけでなく、富士山における気候研究の資料写真なども。
個人的には亀井竹二郎さんの、石版『懐古東海道五十三驛真景』油彩原画にすごく衝撃を受けて。全然知らない作家さんだったので、家に帰ってから少し調べたりなどしました。明治12年(1979)に23歳の若さでお亡くなりになったそうで。今回展示されていた作品はその2年前、1877年に東海道のスケッチ旅行で描かれたものだとのこと。比較的こぶりなキャンバスに、細密に描かれた東海道の景色は、静かな中に迫力があります。
通常の入館料は、一般1,000円です。この時点で、ぐるっとパスの2,500円分はじゅうぶん元をとれてますね。
世田谷文学館
一番直近の週末、三連休の最終日に訪れたのが「世田谷文学館」です。入口にたどり着いたときに、「あ、来たことがある!」と気づきました。2019年にここで小松左京展が開催されていた時に、筒井康隆さんがトークイベントに登壇された際に訪れていたのを思い出しました。中学から高校にかけて、小松左京さんや筒井康隆さん、そして星新一さんのSF小説などを読み漁ってましたので、筒井さんご本人にお目にかかれて感動でした。
そんな思い出のある世田谷文学館。この日は、ゆっくりどこかで読書がしたいなと思って。鞄の中に本を何冊か入れてこの文学館を訪れました。この日開催されていたのは、「寺山修司展」と「小説と映画の世紀展」。前者は入場料200円。後者は無料です。
寺山修司さんの手書きの原稿や手紙などがあって、その文字がなんとなく昔の手書きの映画字幕を思わせるような形で、なんか良いな、と。寺山さんは手紙魔だったそうで。常日頃から文字や文章で表現されていらっしゃんたんですね。
ひととおり展示を見た後、併設のカフェでパスタをいただきつつ。のんびりと読書。この日持参した本は、図書館で借りた文章読本的な3冊と、本棚から引っ張り出してきたトイレに関する1冊。図書館で借りた本のうち、1冊はすでに原書をKindleで購入済み。もう1冊も面白かったので後で改めて読むためにKindle購入。持参した『トイレまんだら』は、以前文庫サイズで読んでいたのをあらためてハードカバーで手に入れたもの。なぜか最近、「トイレ」にご縁があるので。
ランチと読書の後、近くにある「蘆花恒春園」という徳富蘆花さんの旧宅があった場所へ。こちらはぐるっとパスに掲載されている施設ではないですが、こうして美術館や博物館をめぐりながら近くにある面白そうなスポットに立ち寄るのも、このパスの楽しみ方のひとつ。
秋晴れの気持ちがよい午後の日差しを浴びつつ、公園で遊ぶ子供たちの歓声が響く中、園内を散策。徳富蘆花さんって、面白い人だなぁ。現代の金額に換算して1億円くらいを使って世界一周をしたり。と思えば、晴耕雨読を実践して自宅で畑仕事をしたりなど。
絵を描くのも趣味だったそうで、この日は記念館で「蘆花と冨士」という特別展示もあり、徳富蘆花さんが描いた富士山の水彩画も見ることができました。
ぐるっとパスを使ったミュージアム巡りは、来月もまだまだ続きます。
焼き物の街、常滑の旅
10月のミュージアム巡り、ぐるっとパスを購入したのもひとつですが、実は自分にとってメインの企画であり、一番楽しみにしていたのがこの常滑への旅。10月12日から13日の一泊二日で、愛知県の常滑を訪れてきました。
常滑は、言わずと知れた焼き物の街。昔から陶磁器の生産が地場産業として栄えていました。日本六古窯の一つ。最盛期には80以上の窯元が存在していたそうです。常滑の街を歩くと、今は使われなくなった煙突があちらこちらと目に入ります。「やきもの散歩道」という観光コースもあるのですが、私はそこも通りつつ、煙突を見つけるたびに寄り道をしつつ。常滑の街をぶらり散策しました。
登窯広場 展示工房館
「登窯広場 展示工房館」に入ってみました。こちらの登窯は、大正10年頃に作られ、昭和23年頃の大改修を経て昭和55年まで実際に使用されていたそうです。窯の中に置かれたベンチに座って、しばしその内部の雰囲気を味わいました。常滑では、戦時中に液体燃料を補完するための大きな甕もつくられていたそうで。実際に使われることはなかったそうですが、その巨大な甕も屋外に展示されていました。
とこなめ招き猫通り
「とこなめ招き猫通り」で、巨大な招き猫や39個の招き猫作品に癒されつつ。こんな風に、街の中にたくさんの陶芸作品が展示されているのも、この町の魅力ですね。
とこなめトイレパーク
INAXライブミュージアムの敷地内にある、「とこなめトイレパーク」へ。トイレが主役の公園です。実際に、用を足すこともできます。公園を流れる水の音と、乙姫の音とのハーモニー。風が通り抜けていって、今まで使ってきたトイレの中で一番気持ちがよかったかも。
世界のタイル博物館
INAXライブミュージアムの敷地内には、博物館や工房、展示エリアなどがあり、一般700円のチケットを購入するとすべての施設に入場することができます。もちろん、無料で楽しめるエリアも多いので、チケットなしでも楽しめると思います。
今回私は、トークイベントを聴講するために訪れたので、イベント参加費と入館チケット、展覧会書籍などを含めて、2,500円を支払いました。
「世界のタイル博物館」では、古便器コレクション「デザイン性豊かな昔の便器」という展示があり、美しい染付の陶製便器などが展示されており、その実用性と造形美に感動しました。
やきもの工房
「やきもの工房」で、陶芸の歴史と文化、つくる過程などを展示から学びます。伝統を受け継ぎつつ、新しいものを創造していく。その姿勢が素晴らしい。
この工房の入り口には、黄金に輝くトイレが設置されており、特に晴れた日の夕方は西日に照らされた便器がキラキラと輝いて美しいです。
建築陶器のはじまり館 テラコッタパーク
「建築陶器のはじまり館 テラコッタパーク」には、明治初期から1930年代頃に建築によく使われていた「テラコッタ」の建築装飾が移築展示されています。テラコッタとは、イタリア語で焼いた土という意味。フランク・ロイド・ライトによる「帝国ホテル旧本館(ライト館)」のほか、「横浜松坂屋本館」「旧郵船ビルディング」「大阪ビル1号館」「朝日生命館(旧常盤生命館)」「東京大学医科学研究所(旧伝染病研究所)」「聖路加国際病院」など、様々な建物のテラコッタ装飾が展示されていました。
土・どろんこ館
そしていよいよ、この度のメインの目的とも言える、INAXライブミュージアムの「土・どろんこ館」前の敷地に展示されている中銀カプセルタワービルのA1304号室カプセルユニットへ。
2022年に竣工50周年で解体されてしまったこのユニークなビルは、黒川紀章さん設計によるもの。二つのタワーに、140個の独立したカプセルがくっついているという、とても変わったビルでした。
私は、ちょうど5年前の2019年10月から11月にかけて、このビルのA504号室に住んでいました。建物自体も面白いのですが、ここに集まる住人達も個性的な方が多くて、この住むにはちょっと不便なカプセルに楽しみながら住んでいるのがとても印象的でした。僕が住んだのは1か月だけでしたが、退出したあともずっと住人の方や、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトの前田達之さんとは仲良くさせてもらってます。
今回、そのプロジェクトの前田さんと、INAXの浴室事業部の大北達也さんとのトークイベントがあるというので、このミュージアムへやってきたというわけです。このカプセルの、ユニットバスをつくったのが当時伊奈製陶という会社名だったINAXさん。当時、開発製造にかかわった方々はすでに高齢で退職されていたようでしたが、インタビューなども行って当時の貴重なエピソードを聞かせていただきました。ハンドレイアップ成型という手法で、ひとつひとつていねいにつくられたユニットバスは、当時の技術が詰まったものでした。
というわけで、この日のミュージアム巡りは以上で終了。夜は、空港施設内にあるカプセルホテル「TUBE Sq」に泊まりました。カプセルつながりということでね。
フライト・オブ・ドリームズ
常滑から東京に帰る日、最後にもうひとつのお楽しみ。中部国際空港 セントレアの敷地内にある、フライト・オブ・ドリームズへ。ここには、ボーイング787の試作機がそのまま展示されています。
ボーイング787は、ANAがローンチカスタマーとして最初に発注した飛行機。2011年に羽田の格納庫で開催されたService Ready Operational Validation(SROV)発表会イベントには、僕も参加させてもらいました。格納庫に入ってくるその迫力は、今でも忘れません。
そのボーイング787の試作機が間近で観られるということで、開館前から並んで入場。13年ぶりにまた下から見上げることができて感動。さらにコックピットも見学できました。
この、フライト・オブ・ドリームズの入場料は無料です。
常滑、良い旅でした。
三連休の週末だったので、東京に帰ってきた日の翌日は前述の世田谷文学館へ。のんびりと読書しつつ。その帰り道に銀座のSHUTLに立ち寄って、一周年記念の展示を鑑賞。ここは、中銀カプセルタワービルのふたつのカプセルユニットが設置されているクリエイティブスペース。
中銀カプセルタワービルの140個あったカプセルユニットのうち、23個のカプセルが保存・再生されて日本各地や世界に旅立って、第二の人生を送ろうとしています。常滑のINAXライブミュージアムでの展示や、この銀座のSHUTLもそう。これから新しいプロジェクトもどんどん公開になる予定。私が住んでいたカプセルも、その中のひとつ。ミュージアム訪問や、カプセルの推し活は今後もどんどん続いていきます。
編集後記
普段からわりと美術館や博物館を訪れることは多いのですが、10月はぐるっとパスを購入したり、常滑を旅したりなどして、通常よりもだいぶ多めにあちこち訪れました。月末から来月にかけても、見たい展示がいろいろ。本当にぐるっとパスは素晴らしい。また、六本木の森美術館も久しぶりに年パスを購入したので、こちらも何度も訪れたいと思っています。
今回もお読みいただきありがとうございました。
次号は、「東京散歩ぽ」の中川マナブさんです!
「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。