高所での作業
優美堂で施工作業をしていた時。「なるほどな」っていう興味深い体験をしたので、ここに書いておきます。
神田小川町にある、80年前に建てられた元額縁屋さんの建物をリノベーションする作業中。僕は、二階で作業をしていました。解体作業によって壁や天井などの板をだんだんと外していき、二階の床も脆い板だけに。踏みどころが悪いと、バキッと踏み抜きそうになります。それなりの高さがあり、一回のフロアはコンクリートなので、落ちたらたぶんそれ相応の怪我をしそうなのは分かってました。
普段、そんなに高いところは得意ではなく、どちらかというと崖やビルの端っこの方に行くと、不安でたまらなくなる方です。普通に、高いところは怖いのですが。
この時は、ちょっと違ってました。優美堂の二階で、極めて脆い床板の上で、壁を剥がしたり、断熱材をインストールする作業中。何度か、メリッと床板が割れ落ち、自分自身も一瞬「落ちるかも」という瞬間がありました。が、高さに対する恐怖はほとんどなく。手元の作業に集中していると、自分が高いところにいるという意識も薄れていって。バランスの悪い場所でも冷静に普通に作業をすることができました。
自然に「恐怖」を克服できている感じで。なんていうんだろう。「ダイバージョン」とでもいうか、集中力を別のところにもっていくと、怖く無くなる感じ。「気をそらす」ってことですかね。怖いと思う対象に意識を集中すると怖くなる。だから、違うところに気をそらす。すると、怖く無くなる。
これは、ちょっと面白いなと思いました。
昔見た、確か東京タワーだったと思うのですが、その建設中の写真。職人さんたちが信じられないくらい高い場所で作業しているのですが、みんな平然としていて。その写真を見ているこっちがドキドキ怖くなってしまうのですが、写っている人たちはみんな普通に作業をしている光景。あれが、ちょっとだけ理解できたような気がします。
まぁ、せいぜい落ちても軽い骨折くらいの高さですから、東京タワーの高さとはくらべものにはならないですけど。高所作業は、きちんとハーネスをつけたりなど、安全装備が大事ですよ。優美堂でも、外の看板のペンキを塗る際は、みんな足場に命綱をつけて作業をしてました。
三脚の使い方なども、優美堂の施工作業でだいぶ慣れました。三脚のてっぺんに手をかけて、重心を少し後ろ目にして素早く上ったり降りたり。そして、下りたと同時に三脚を傾けて、そのまま次の地点に移動。また登って、作業、と。単純な作業を何度もひたすら続けると、少しずつ無駄な動きが減っていき、効率よくできるようになる。他の人の動きを見て学んだり、あるいは自分でも試行錯誤してみたり。そういうのが、とても面白い。もともとの経験が浅いので、現場で学べることがたくさんある。初心者で飛び込むのって、伸びしろがとても大きいので、楽しいです。最初はみんな、初心者ですからね。
「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。