クソッたれの空
俺は
クソッたれな街に生まれ
クソッたれな学校を卒業し
クソッたれな奴らと
クソッたれな仕事をして
クソッたれなアパートの部屋で
クソッたれな窓から
クソッたれな空を見上げて
クソッたれな毎日を送っていた
でもそんなある日
俺の人生を変える出来事が起こった
俺は自販機の脇に転がった
百円玉を一枚拾った
俺のクソッたれな人生で
こんなにもラッキーな事が起こるなんて
俺は拾ったその百円で
宝くじを一枚買ったね
ジャンボじゃなくて
当選金額の少ないやつさ
そしてその宝くじが当たったんだ
1000円
なーんだって言うなよ
最初はゼロだったんだから
俺はその1000円を持って
パチンコに行ったよ
そしたら何と
大当たりの連続で
店を出た時には10万円に変わってた
すごいだろ?
でも話はこれで終わりじゃないんだ
俺はその10万円で
宝くじを買ったよ
今度は当選金額の多い
ジャンボ宝くじさ
そしてそれがまた大当たりさ
三億円
3000円じゃないぜ
三億円
今度は凄いって言ってもいいぜ
俺は派手に遊びまわった
俺の周りに
クソッたれな奴らが群がってきた
三億円はあっという間に
消えていったよ
そして
俺の周りに群がってた
クソッたれな奴らは誰もいなくなった
それから俺は遠い街へと移り住んだ
その街は
俺の生まれたクソッたれな街より
もっとクソッたれな街だった
俺はもっとクソッたれな奴らと
もっとクソッたれな仕事をして
もっとクソッたれな毎日を送っていた
ああ、もう一度
自販機の脇で百円玉を見つけた
あの日に戻る事が出来たら
今度は宝くじなんて買わないのに
何に使うのかって?
もちろん俺のこの
クソッたれな人生を変えるために
貯金するのさ
百円くらい貯金したって
何も変わらないって?
そうでもないぜ
実は俺、彼女が出来たんだ
クソッたれなこの俺に
黙って付いて来てくれる
今までの俺の人生で
唯一のクソッたれじゃない人間さ
俺の夢は
お金を貯めて
オンボロでもいいから
安い軽自動車を買って
彼女を誘ってドライブに出かける事さ
生まれてから一度も見たことのない
クソッたれじゃない景色を探しにね
ちっぽけな夢だろ?
でも俺、彼女といるうちに気付いたんだ
クソッたれだったのは
俺の周りのすべてじゃなくて
俺の心だったってね
俺は今日も
クソみたいに働いて
クソッたれなアパートの部屋に帰って
クソッたれな窓から
少しずつクソッたれじゃなくなってゆく
青い空を見上げながら
毎日を過ごしている
いつか
この空が
この窓が
この部屋が
そして
俺の周りのすべてのものが
クソッたれじゃなくなったら
その時は
彼女にプロポーズするつもりさ
それまで俺はもう少しだけ
このクソッたれな街で
クソッたれな生活を続けるよ