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鉛色の耳
今年の夏から秋にかけて、「鉛色の耳」という作品を作り発表しました。
見て下さった方、そうでない方に向けて今作がどのような発想のもと構築されていったのかを記しておこうと思います。
まず、以下が当日パンフレットに載せた私のコメントの一部です。
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『大学生活4年間の間に様々な経験をしました。その中で私は「うまれる」(2017)と「アイビー」(2018)という2つのソロダンスを作りました。実はどちらも振付の無い、即興性に身を委ねる作品でした。
私が踊る時に一番大切にしていることは“身体に嘘をつかせない”ということです。嘘に気付かないふりはしない、と言っても良いかもしれません。その場所の持つ力と自分の感情を信じ、内面の言葉を撒き散らすような踊りがしたい、そう模索してきました。そうするうちに「この感覚は、他者と共有し作品化することは可能だろうか」と考えるようになりました。それは自分にとっても相手にとっても厳しい作業となるだろうけれど、今それをやらなければいけない。そんな思いが、この卒研へと私を駆り立てたのです。
出演してくれた3人とは稽古中、本当にたくさん会話をしました。「私が外殻として振付をするから、中身は自分自身で満たして欲しい」と伝え「あなただったらどうしたいか」と問い続けました。3人は本当に根気強く私の問いに応えようとしてくれました。…』
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今回挑んだ事は大きく3つ
1. 「自分の即興ダンスを人に振り付ける」こと。エネルギーをその場で瞬間的に踊りに変える、回路(方法)の共有。
2. 即興音楽と調和する、音楽と踊りが互いに支え合うこと。
3. 最終的に、恐れずにそれぞれが自分の意思で動きを生み出し、掻き混ぜ、お互いがそれに敏感に対応できるようになること。
まずはわたしの踊り自体が、最初に“自分の心の奥底に根を張っている真っ黒いかたまり”に火を点けるところから始まるために
この自分の体験を他人に渡すとなるとどうしても「偽物」になってしまう、相手のものではない空っぽの何かになりかねないという危険性を感じました。
ダンス公演の中の振付などに様々な疑問を抱いていたので(多様なジャンルや作品を観てきた訳では無いので私の個人的憶測になってしまいますが)まず「作品において振付すること」について熟考しました。
わたしが追求したいものは“繊細さ”で、全てが作り物だと荒さが出てしまうし、3人がただのわたしの分身になってしまうことが嫌だった。
「鉛色の耳」にはわたしが振り付けたシーンと各々の即興的動作のシーンが混在していました。
scene1 ソロ 即興
scene2 デュオ 振付
scene3 ソロ 振付+後半即興
scene4 ソロ 即興
scene5 デュオ 振付
scene6 ソロ 振付
scene7 2人 即興
scene8 ソロ 振付
scene9 ソロ 振付
scene10 デュオ 振付
scene11 2人 即興
scene12 デュオ 振付
scene13 即興
(上記は中央でメインとして踊るものを書き出していて、その周りに存在するその他は全て即興的に自分で判断して動いたり動かなかったりしていた。)
“周りに存在するその他”の時に気をつけて欲しいと伝えたことも何点かあり、
・客席に座ってそれぞれの目線から見たときのアクトエリアの状況を1枚の絵として、自分で構図を判断しバランスを考え動くこと
・他の人と同じ形にならないこと
・偶に視線を自分に誘導するような動作をすること
などを伝えました。これが難しかった。
アクトエリアにいるのは4人だけ。音の中で空気を掻き混ぜ一時的に乱す、整える、わずかなバランスを取り合う理想としていた構成が完成しました。
常にどこかが成功し、どこかで失敗する、音楽と一緒に調整に調整を重ねる4ステージでした。
わたしにとっては毎ステが成功だし、毎ステに反省が残っていました。出演者3人も音楽のHatakeshockninもそうだったと思う。
でもそれぞれが、上手くいったところと逆に「動き過ぎた」とか「もっと対応出来たはずだった」「停滞させてしまった」などと細かいニュアンスを掴んで反省してくれていたのは今回わたしが1番やりたかったことだったし、卒研として成功(達成)できたとわたしは思っています。
終わらない公演をはじめてしまった感じがした。
卒業したら、暫く映像系だけで踊りや振付を続けていこうと思っていたけれど、「鉛色の耳」を終えてみたら公演を打つのが楽しくなってしまっていた。だからまた絶対に近いうちにどこかで打てたらいいなあと思っています。
「鉛色の耳」とは全然違うことをやってみるのも良いかもしれない。楽しみにしていて下さい。
ゆるりと次回公演のクラウドファンディング中↓
https://polca.jp/projects/PD9c7ctFZV7