コロコロ変わる名探偵
ある家の主人で高野探偵の親友の林氏が何者かによって殺害された。林氏はネクタイを結んでいたようで、大きな鏡の前で倒れている。誰かが近づけばわかったはずだ。争った形跡もないことから顔見知りの犯行とされた。
「林氏が死ぬ間際に書いたと思われるダイイングメッセージは『こう』。つまり犯人は被害者の子、孝太さんです!」
「俺はやってない! 親父が殺されたとき、俺は出張で千葉にいたんだ」
「彼のアリバイは警察で確認が取れたよ、高野くん」
「じゃあ奥さんの幸さんだ! 幸は『こう』とも読むからな」
「奥さんのアリバイも確認済みだ」
「警部! 近隣の聞き込みの結果、事件当時に金槌を持ってこの家から慌てて出てくる人を目撃した人がいました。鹿撃ち帽にコートを着た男性だったとのことです。それに林氏は『こうや』という親友の話をよくしていたそうです」
「親友のこうや……」
「これで決まりですね。犯人はあなただ!」
高野は目の前にある大きな鏡を指差した。