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わかるアートに出会った時は、、

X上に流れてきて目に留まり、思わずブックマークしたアートがある。
福島県の高校生が制作した作品だ。

藤岡岳之🇺🇦@東北で不動産賃貸業を経営より

白い台紙の上に青色の福島県が置かれている。その台紙には東日本大震災に伴う原子力災害をきっかけに福島県民に向けられるようになった罵詈雑言が幾つも記されている。
そしてその誹謗中傷を上書きするように、鑑賞者が「今の福島」に抱く考えや感情が貼付けられている。さらに、青色の福島県にはおなじく鑑賞者が「未来の福島」に抱く展望・希望が書き置かれている。

ガツン!とやられた。
そのシンプルさに。
その深さに。
この作品を生み出したアート思考はシンプルで深く、そして強い。

罵詈雑言の多くは私自身も見覚え聞き覚えのある言葉だった。
刺激の強いものは、私は聞かなかったことにして流していた。
この作品はしかし、そのすべてを受けとめている。

そして、その誹謗中傷を、フクシマではなく福島を体験してくれた鑑賞者のポジティブなメッセージで上書きしようとしている。付箋は半透明で、貼ったからといって直ちに悪意の言葉が消えるわけではない。上書き作業は現在進行中なのだ。さらに、「成長中」の青い福島の未来への展望も忘れない。

そしてこれが重要だと思うのだが、この作品はこれで完結してはいない。もう一つ対となる絵画がある。

福島に向けられた罵詈雑言。作品に記録した高校生は、あえて「フクシマ」と向き合ったより

作者の自画像だ。
そこには思春期の不安定な気持ちがびっしりと書き込まれている。

対で成り立つ作品にした理由を、作者は次のように語っている。

「辛いこともあるけど、私も福島もまだまだ成長(復興)途中。未熟で『青い』けど、逆に言えば伸びしろはたくさんあることを表現したかった。私たちはずっとかわいそうな存在でいなければならないの?そんなことはないと思う」

福島に向けられた罵詈雑言。作品に記録した高校生は、あえて「フクシマ」と向き合ったより

私は、現代アートがあまり好きではない。
作者の「アート思考」を読み解くのに疲れてしまうからだ。でもときどき、スッと入ってくる作品がある。そんなときは思い切りしゃぶりつくすことにしている。

(799字)

このエッセイについて

作者意図

いつもは、課題本読了後すぐにどんなテーマで書くか思いつくのに、今回は「何を書こう?」と思いあぐねていました。アートについて最近何かあったかなと振り返ってみたら、今回取り上げたこの作品に感銘を受けたばかりだと思い当たりました。そこで、まずはこの作品を紹介しつつ、どんなところに感銘を受けたのかを書こうと思いました。
結びの「しゃぶりつくす」とは、ある動画プロデューサーが語っていたことで、感銘を受けて私自身のモットーにしていることです。

完成までの経緯

この作品は第2稿です。原稿の熟成をテーマにして3か月目ですが、今回はあまり熟成ができませんでした。原因は、何を書くのかがなかなか決まらず、10月末には課題本を読了していたのに第1稿を書き始めたのが11月13日だったことです。これまでより2週間近く遅かったのです。第1稿は字数を気にせず書きたいことをすべて書き14日に完成させました。数日後800字の字数制限に合わせて第2稿に書き換えました。また数日おき、21日に微調整して第2稿を完成させました。体調不良もあり、今回はここで完成とすることにしました。あともう1週間あれば、第3稿まで行けたかもしれません。


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