海外生活で心が折れる時

 駐在前に多くの駐在の諸先輩からこのようなことを言われました。
「駐在して3ヶ月くらいにね、正体不明の高熱をみんな出すんだよ。
気をつけてね。まぁ、緊張で気が張っていた状態から気が抜けるんだろうね。」
そんな助言を心に留めて、2008年から開始した私。

幸か不幸か高熱は出ませんでした。
しかし、諸先輩方が言っていたアメリカで海外駐在を初めて3ヶ月後くらいに、
とてつもなく落ち込んだ数日がありました。

この頃は、家探し・引越しも終わり生活の立ち上げは概ね完了。
これから仕事も本格的に動き出せる状況にようやくなったタイミングでした。
しかし、その時の私は英語も思うように通じない。
私が思っていることも英語で伝えられない。
数行のメールを読むのも時間がかかる。
英語でメールを数行書くのも何時間もかかってしまう。
挙げ句の果てに自分が読んだ/書いた英文が正しいか
数時間かけて確認して間違っていないか怖くてうじうじしていた時期。

毎日、「なぜこんな事しかできないんだろう。なんでここまで英語がわからないんだろう」と悩みながら会社に行っていました。

そんな気持ちのまま週末を迎えました。

生活の立ち上げも概ね完了していたので、
その日は気分転換にお昼からお酒でも飲もうと決めていました。

意気揚々と午前中から近所の酒屋に行くと、
州の法律で土曜日の午前中はお酒の販売が禁止されており、
買うことができませんでした。

若干、落ち込みながら家に帰り昼まで時間をつぶしました。
そして、再び近所の酒屋に。
無事にハイネケンを購入し、近くのスーパーに行きおつまみを買い。
家に帰り着きました。

おつまみを机の上に並べて、いざビールを開けようと王冠をひねろうとした時、
全く開きません。

ご存知の方も多いかもしれませんが、アメリカで売られているアメリカブランドのビールは瓶の王冠はひねれば外せます。
なぜか、この時の私はアメリカブランドではないハイネケンの瓶ビールを購入していました。これは、ひねっても開きません。

仕方ないと栓抜きを探したのですが、引越しの荷物に紛れて栓抜きは見つかりません。

この時、栓抜きがない時にビールの王冠を外す方法を思い出しました。
ドアの金具のところを使用すると開ける方法。これを試してみました。

うまく王冠を金具にはめ込んで、瓶を動かすとようやく王冠は外れました。
しかし傾けながら開けていたのでビールは半分ほど溢れてしまいました。

溢れ、床に広がって行くビールを見て
「おれは、アメリカでまともに仕事もできない、普通にビールを飲むことも出来ない」
そんなことを思いながら泣いていました。

この瞬間は今でも鮮明に思い出します。

正直なところ、今となっては冷静に栓抜き買いに行けよ・・・とか思ったりします。
しかし、その時の私は、相当思いつめていたようで
こんな些細なことがきっかけで崩れてしまいました。

その後ビールを飲み、夕方くらいには寝落ちしていました。

最近、この時の話を英語で悩んでいる後輩に話しました。
自分にもこんな若い時があったのだなと、懐かしくすら感じました。

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