犬の爪切りとシャンプー・トリミング
犬を飼っていると食事や散歩といった毎日の世話のほかに、ブラッシング、歯磨き、耳掃除、爪切り、シャンプー・トリミングといった手入れが欠かせません。これらの手入れは本来、飼い主が自ら行うべきことですが、シャンプー・トリミングなどはかなり手間と時間が掛かることや、専用の道具がないことなどを理由にペットショップやトリミング・サロンに出しているケースも多いのではないでしょうか。特に大型犬の場合、これらをプロに任せるのはかなりの出費(約1~2万円)となりますので、経済的な面でも飼い主の負担は大きくなります。
本稿では、その中でも私が特に重要視している爪切りとシャンプー・トリミングについて飼い主自ら行うべき理由と簡単な方法について解説したいと思います。
爪切り
犬の爪切りは、なぜ必要なのでしょうか (特に大型犬)。それについて分かりやすく説明した記事がありますので紹介します。(グレート・デーンのブリーダーさんが書かれたブログです)
爪切りは「犬が嫌がるのでできない」「切り過ぎて出血するのが怖い」などと理由をつけて避ける飼い主が多いのですが、記事にもあるとおり飼い犬の健康を考えれば毅然として自らの手で行うべきです。
本来であれば飼い犬の爪切りは、犬が恐怖の感覚を身に付ける生後3か月くらいまでに習慣化し恐くないことを刷り込むことで、成長してからの恐怖反応を予防することができスムーズに行えるようになるはずです。しかしながら、その時期を過ぎてしまって、犬が爪切りを嫌がる(あるいは怖がる)場合は、オヤツで釣ったり二人がかりで保定したりして何としても切ることを習慣化しなければなりません。自らの手で飼い犬の爪を適正な長さに保つことは必須であることを肝に銘じて、「切る」と決めたら如何に飼い犬が嫌がろうとも最後までやり遂げましょう。
犬の爪切りは「ギロチンタイプ」と「ニッパータイプ」に大別されますが、どちらが良いということはありませんので、自分で使いやすい方を選択してください。(一般的にはギロチンタイプの方が切る長さの狙いが付けやすく広く使われているようです)
また、切るのがどうしてもダメであれば、電動ルーターややすりを使う手もあります。
爪を切った際、誤って切り過ぎて出血することがあります。その時は慌てずに出血個所に止血剤を塗ります。クイックストップ "Kwik Stop" という黄色い粉末の止血剤(人間にも使用可能です)が有名ですが、出血がひどくなければ小麦粉や片栗粉でも代用できます。止血剤は通販で購入することもできますが、高価であまり使うこともないので、かかりつけの獣医師に少量分けてくれるよう頼んでみるのも手です。
爪切りを使って爪を切った後は、ルーターややすりを使って面取りをして切断面を滑らかに整えることを忘れないでください。面取りをしないでバリが出たままだと、散歩時に爪がアスファルト等に引っかかり、そこから縦に割れて爪が剥がれることがあります。(ひどいケースでは出血するほど深く割れます)
シャンプー・トリミング (大型犬)
自分でシャンプーする大型犬の飼い主は慣れていると思いますので、ここではやり方について詳述しませんが、効率よくシャンプーをするためのヒントを二つほど挙げておきます。
シャンプーをする際、最初に犬の全身を濡らしますが、特にゴールデン・リトリーバー、フラットコーテッド・リトリーバー、シベリアン・ハスキー、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、グレート・ピレニーズなどの長毛・ダブルコートの犬種は、いきなりシャワーで水をかけてもコートが水を弾いてなかなか十分に被毛を濡らすことがとできません。そんな時は、希釈したシャンプー液をスポンジに含ませて全身を軽く拭った後に、シャワーを当てると簡単に全身の被毛を皮膚まで濡らすことができます。(これはシャンプーの界面活性効果により親水性が高まり被毛のすき間に水がしみ込みやすくなるからです)
シャンプー(やリンス)が終わると全身を乾かすことになります。この乾燥の段階ではタオルドライが中心で、一部、乾きにくい個所(耳回り、わきの下、陰部等)にドライヤーをかけるというのが一般的だと思いますが、大型犬の場合、これでは全身を十分に乾燥させることが難しいうえ、時間が掛かり飼い主にかなりの重労働を強いることとなります。何よりも、乾燥が不十分では被毛が高温多湿な環境を好む雑菌の絶好の繁殖場所になってしまいます。よって、犬・飼い主双方の負担を軽減し被毛・皮膚が生乾きにならないように、シャンプー後は手間をかけず短時間でしっかりと乾かす方法を考えなければなりません。
このような場合に威力を発揮するのが犬専用のブローワーです。専用のブローワーは様々なものが市販されていますが、特に前述の長毛・ダブルコートの大型犬種に使用するには強力なものが必要で、個人的な経験をもとにお勧めするのは、すばりアメリカ製の「K9-II」です。値は張りますが、1700Wの強力な風量・風圧で被毛に着いた水分を飛ばして、あっという間に全身が乾きます。(使用に当たっては、直接、風が目や外耳道[耳の穴]に当たると危険なので注意が必要です。できればブリーダー等の経験者の指導を仰いでください)
トリミングについて言えば、ゴールデン・リトリーバー、フラットコーテッド・リトリーバー、ニューファンドランド、バーニーズ・マウンテン・ドッグなどの長毛・ダブルコートで垂れ耳の犬種でも難しいことはありません。ドッグショーに出すわけではないので二か所くらい気にかけてトリミングすれば十分です。
まずは耳回りです。伸びてしまった毛を耳の形に切りそろえます。垂れ耳の裏に隠れている頬(人間で言うモミアゲのあたり)は毛をかなり切り取っても大丈夫です。(特に夏季は垂れ耳で蒸れますので思い切って刈り込みましょう)
もう一か所は足先です。足先のトリミングを怠ると指の間の毛が伸びてきて指が広がって歩様が悪くなったり、足裏が毛で覆われて犬が肉球によって地面の状態を知ることができなくなったり発汗が妨げられたりと、様々な問題が生じます。また何より、伸びた毛に泥やゴミが絡まりやすくなって不衛生な状態に陥りかねません。
足先のトリミングは、犬の足指の間からはみ出した毛だけを切るのではなく、足指の間の毛を自分の指を突っ込み掻き出し立てて、犬の指の表面に合わせて全て切り取ります(仕上がりの見てくれを考えると「すきバサミ」の使用を勧めます)。また、足裏の毛は肉球の保護を兼ねているので、あまり深く切らず(刈り込まず)肉球にかかった毛先部分だけを切る方が良いでしょう。
その他、飾り毛や尾などを整えるのはお好みで行ってOKです。また、髭は切っても大丈夫ですので、これもお好みで。トリミングでは失敗を恐れず大胆に切りましょう。切り過ぎても直ぐに毛は生えてきますし、何よりも回数を重ねることによってトリミングの技量が向上します。
このように幾つかのポイントを念頭に置いて日常の手入れを行えば、飼い犬の健康を維持できるばかりでなく飼い犬との距離がぐっと近くなります。大事な飼い犬です。他人に任せることは避け、できる限り自分の手で世話をすることが肝要かと思います。