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カウンセリングとトヨタ生産方式:「なぜなぜ分析」で本質に迫る

皆さんは「なぜ?」という問いかけを、普段の生活の中でどれくらい意識したことがあるでしょうか。家庭や仕事でのちょっとした疑問や問題を解決する際、深く考えることが大切だというのはご存知かもしれません。
今回は、キャリアコンサルタントとして感じたカウンセリングの現場と、本業で経験した世界的に有名なトヨタ生産方式に取り入れられている「なぜなぜ分析」という手法に焦点をあて、両者の共通点とその意義について考えてみたいと思います。

カウンセリングにおける「なぜ?」

カウンセリングの基本は、相談者との信頼関係を築き、心を開いてもらうことです。
そのためには、単に表面的な言葉だけを聞くのではなく、その背景にある思いや状況を掘り下げることが必要になります。
ここで役立つのが、繰り返し「なぜ?」と問いかける技術です。たとえば、パートナーとの関係や仕事でのストレスなど、表面的には些細な問題に見えても、その裏には深い理由や感情が潜んでいることがよくあります。

相談者に「なぜそのように感じるのか?」と問いかけることで、本人も気づかなかった感情や思考が明らかになり、問題の本質に近づくことができます。このプロセスは、共感を生み出すだけでなく、具体的な解決策を見出す上でも非常に効果的です。実際、信頼関係が深まると相談者は自分の内面をより素直に語れるようになり、その結果、問題の根本原因が明らかになるのです。

トヨタ生産方式の「なぜなぜ分析」

一方で、トヨタ生産方式における「なぜなぜ分析」は、製造現場の「カイゼン」活動で、起こっている問題の原因を探るための手法として広く知られています。
ここでは、ある問題が発生した際に、単に表面的な原因だけでなく、根本的な原因を突き止めるために「なぜ?」を連続して問いかけます。
たとえば、製品に不具合が発生した時、その原因をつきとめるため「なぜ起こったのか?」⇒「それはなぜ?」⇒「それはなぜ?」・・・といった具合です。
このプロセスを通じて、表面上は見えなかった深い原因が明らかになり、再発防止のための対策が具体的に立てられるようになります。

両者に共通する「深堀り」の力

カウンセリングの技術を学んだことで、本業で知ったトヨタ生産方式のカイゼンにおける「なぜなぜ分析」にある共通する点があることに気づきました。
それは、「ある問題に対して深く掘り下げる」姿勢です。
どちらの場合も、単に表面の現象を捉えるのではなく、その背後にある本当の理由や原因に迫ることが大切だという点で一致しています。

たとえば、家庭内でのちょっとしたすれ違い。
表面的には「言い合いが続く」といった現象に見えるかもしれません。しかし、カウンセリングでは「なぜ、そんな風に感じたのか?」、「なぜ、話が噛み合わなかったのか?」と掘り下げることで、実はお互いの期待値の違いや、過去の経験が影響していることに気づくことがあります。
同様に、工場での不具合も、単なるミスではなく、作業手順や設備の問題、さらには現場のコミュニケーション不足といった直接の原因が潜んでいることが明らかになるのです。

具体例で見る実践法

ここでは、実際のシーンをイメージしてみましょう。

相談シーンの場合

例えば、Aさんは仕事と家庭の両立に悩んでいます。カウンセリングの場面では、まず「なぜ、今そのように感じるのか?」と問いかけます。
Aさんは「仕事でミスが続いて、家でも責任を感じてしまう」と答えたとします。
さらに「なぜ、ミスが起こるとその責任感を強く感じるのか?」と質問を重ねると、実は昔の経験から「失敗は許されない」という思い込みがあることが分かってきます。
このように、繰り返し質問することで、本人も気づかなかった心の奥底の原因を明らかにすることができるのです。

職場での改善の場合

一方、工場やオフィスでの問題解決にも「なぜなぜ分析」は大いに役立ちます。例えば、製品の品質に問題があった場合、初めの「なぜ?」に対する答えは「部品の品質管理が甘かった」かもしれません。
さらに「なぜ、品質管理が甘かったのか?」と問い続けることで、実は作業手順の不備や、従業員への教育不足が根本原因であることが明らかになります。
このように、深堀りすることで、表面的な対策だけではなく、根本的な改善策を講じることが可能になります。

応用編

結婚生活や仕事は、常に新しい課題や問題に直面します。
カウンセリングにおける共感の技術と、トヨタ生産方式の「なぜなぜ分析」は、一見すると遠い世界の話のようですが、実は日常生活でも大いに応用できる考え方です。
たとえば、夫婦間での意見の食い違いやコミュニケーションの行き違いがあったとき、表面的な不満に終わらせず、深く「なぜ?」と問いかけることで、お互いの気持ちや考えの根底にある真意に気づくことができます。

また、仕事においても、ただ「うまくいかない」と感じるだけでなく、問題の本質を探る姿勢を持つことで、より効果的な改善策を見出すことができるでしょう。これにより、仕事のストレスやミスを減らし、より生産的な環境を作ることができます。

おわりに

今回ご紹介した「なぜなぜ分析」の考え方は、カウンセリングとトヨタ生産方式という一見異なる分野で活用されているものですが、どちらも「本質に迫る」という共通の目的を持っています。
私たちの日常生活や職場でも、問題の表面だけでなく、根本原因に目を向ける姿勢は非常に重要です。

20代、30代の皆さん、特に既婚者の方々は、家庭と仕事という二つの大切な場面で多くのチャレンジに直面しているはずです。
ぜひこの「なぜなぜ分析」の考え方を日々のコミュニケーションや問題解決のヒントとして取り入れてみてください。問題の根本に気づくことが、より良い未来への第一歩になるはずです。

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