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CES 2024 Media Dayレポート 〜 2024年の注目トレンドを開催前に先取り 〜



1. はじめに

 新年恒例の年次カンファレンスのCES(Consumer Electric Show)が今年もNevada州Las Vegas市で開催される。
 CES 2024は1月9日から1月12日の4日間で開催されるが、開催2日前(1月7日と1月8日)には恒例のMedia向けにCES 2024の見どころの共有、Unveiled Las Vegas(Media向け展示会)や、BOSCH社、Samsung社、SONY社などの企業のプレス発表が行われた。
 本稿では、CES 2024開催前にCES 2024の見どころや注目企業について報告する。日本のメディアも取り上げると思うが、他のメデイアとは違う視線の報告もあるので、1月9日から現地でCES 2024に参加する人も日本でネットニュースを見る人も参考にしてほしい。


2. CES 2024の会場

2-1. 会場周辺の様子

 AWS re:Invent 2023が開催された12月は街のあちこちでFormula 1の熱気を感じる施設が残っていたが、スタンドなどはすっかり片付けられ、普段のLas Vegasに戻っていた。街のあちこちに設置されている電光掲示板やモノレールは、CES 2024の開幕に合わせてGoogle社の広告が占拠されていた。

Las Vegas市を独占したGoogle社の広告

2-2. 展示会場

 CES 2024はCES 2023同様、Tech East、Tech West、Tech Southの3エリアで開催される。
2020年に完成し、コロナ禍を経て2023年にCESデビューしたLVCC West Hallは、全ての展示ブースが売り切れたそうだ(出典: CTA)。LVCC West Hallには自動車メーカー、サプライヤーなど、自動車関連の企業が集う。LVCC Centralでは、伝統的な家電に加えて、Web3やMetaverse関連の展示が多く見られる。日本でも話題になっているXreal社はかつてはMicrosoft社、Intel社などが出展していたLVCC Centralの入り口近くで出展している。
 CES 2024でもMedeia RoomはLVCC Westに設けられていることから、CTAはCES 2024でも”Automotive”がCES 2024の注目トレンドと考えているのだろう。

CES 2024の会場概要(出典: CTA)


3. CES 2024概要

3-1. 出展者動向/参加者動向

 12月7日に開催されたMedia Previewで主催者のCTA(Consumer Technology Association)は、CES 2024は100回目のCESで、出展者は4,000社以上、展示会場は2024年より10%増えて、2.4M sqft(約223平方メートル)、Eureka Parkを中心としたStartupの出展者数は1,200社を超えていると発表した。CTAはCES 2023と比べて出展者数は22%、Startupは14%の増加を見込んでいる。
 参加者については、150以上の国と地域から13万人以上の参加が見込まれている(2023年12月31日時点)。Fortune 500の300社以上、グローバルブランドトップ100の84社が参加することになっている。CES 2023の参加者が11万7千人だったので、CTAは11%の増加を見込んでいる。

3-2. サービストレンド

 CTAが事前に発表した注目トレンドは以下の18カテゴリーだ。

CTAが注目するトレンド(出典: CTA)


4. CES 2024 Media Day

4-1. CES 2024 Tech Trends to Watch

 CES 2024期間中および 2024 年を通して注目すべき技術トレンドを紹介する本セッションは、Mediaの注目度が高いセッションで、日本のメディアのみならず、世界中のメディアが多く参加する。1時間前には開場を待つ長蛇の列ができ、まともに写真が撮れないほどの混雑ぶりだった。
 12月7日のMedia Previewでは、Gen-AI、Automotive、Toodtech、AgTech、Digital Heathを注目トレンドとして紹介していたが、「将来のトレンドはAI、Sustainability、Inclusive(包括)の3つだ。」と語ったのは、CTAのDirector of ResearchのJessica Boothe(以降、Jessica)さんとCTAのDirector of Thematic Programs and resident futuristのBrian Comiskey(以降、Brian)さ
ん。

未来を作る3つのトレンド(出典: CTA)

 以下に、この3つのトレンドと、それに加えて紹介されたCES 2024で注目テーマについて報告する。

本セッションを担当したBrianさん(左)とJessicaさん(右)

(1) AI

 Microsoft社が35年ぶりにキーボードのデザインを変更するなど、AIはConsumerとEnterpriseの両方にインパクトを与えている。また、CTAの2023年9月の調査では「44%の人が、AIはすでにインパクトを与えている、もしくは1年以内にインパクトを与えるだろう。」と回答しているそうだ。
 その一方、Privacy、偽情報、安全性、雇用に関する関心も高い。

AIに関する明(左)と暗(右)(出典: CTAの資料をもとに筆者が編集)

(2) Sustainability

 エネルギー効率の改善、リサイクルの徹底に加え、Battery Carbon Footprintを最大で25%削減するGrapheneのような新たなMaterialの開発、Renewables Energy Infrastractureへの投資、水素、核融合の実証実験などの取り組みがsustainabilityを加速させる。

(3) Inclusivity(包括)

 AIやSustainabilityのように誰にでも受け入れられる”Inclusivity”の実現は各業界で注目のテーマである。本セッションでCTAは、Gamin社のSmart Watch、Ocean Pink社のUMAY社(Secure Walking Tool)、EssilorLuxottica社のHearable Glassesを例に挙げていた。

(4) その他の注目テーマ

 本セッションでは、上述の3つのトレンドに加えて、以下の3つをCES 2024における注目テーマとして消化された。
(4-1) Digital Health
 Digital Healthが今以上に成長するためには、Personalization、Accessible、Intelligentがさらに進むことが必要。
 また、女性向けのDigital Healthに関しては、高いコスト、その他の優先事項、受診機会の制限が大きな課題で、コストの低廉化、受診機会格差の解消が必要不可欠で、66%の女性がDigital Healthcareが未来のHealthcareだと回答している(出典: CTA’s The Future of Women’s Digital Health Solutions, October 2023)。

女性向けHealthcareの課題(出典: CTAの資料をもとに筆者が編集)

(4-2) Mobility
 Electrificationの波は陸上に限らず、海上、空中へと拡大し、CES 2024では約300社がConcept Car、Infotainment System、EV(eMotercycle, eBoat、eVTOL)、Autonomous Mobilityなどを出展している。

Mobility業界に拡大するElectrification(出典: CTA)

(4-3) Human Securities Tech
 CES 2024では、Economic securityを支えるMarket Access Tool、Community Safetyを改善するCommunity技術、食の安全を守るFarm-to-Table技術も注目技術だと紹介があった。

CES 2024におけるHuman Seculities Techの例(出典: CTA)

5. Unveiled Las Vegas

 Unveiled Las VegasはCESの開催前にMedia限定で開催される展示会で、Mediaにとっては、ひと足さきに出展社と話ができる貴重な機会となっている。今年のUnveiled Las Vegasには約180社が参加し、参加したMediaもコロナ後最大の人手だった。会場の外にはOverflowが設けられていたが、そこに収まらないほどのMediaが押し寄せた。ここでは、私の目線で気になったStartupを紹介する。

入場制限された入り口付近(左)とMediaで埋め尽くされたUnveiled Las Vegasの会場(右)

(1) Earbuds

 CES 2024開催前から気になっていたのがEarbudsだ。音楽の視聴目的ではなく、同時通訳、脳波モニターと音楽視聴以外の機能を実装したEarbudsが目を引いた。この3社以外にECG機能を実装したEarbudsを開発しているStartupがCES 2024で展示している。

同時通訳EarbudsのCEH Technologies社(左)、TimeKettle社(中) 、
脳波モニターEarbudsのNaqilogix社(右)

(2) Robot

 韓国のHL Mando社は駐車スペースの効率利用を実現するValet Parking Robotを開発している。同社の2台のロボットが自動車の下に潜り混み、ゆっくりと車体を持ち上げる。そしてロボットは自動車を目的の場所まで運んでいく。同社は、Valet Parking Robotにセンサーを搭載し、Level 4の自動運転を実現している。現在はHyundai社と実証実験を行いながら、商業施設の駐車スペースの有効活用への適用を目指している。「将来はホテルやレストランのValet Parkingへと市場を拡大していきたい」と語ってくれた。HL Mando社はCES 2024 Innovation Award Best of innovationを受賞している。

HL Mando社のValet Parking Robot

(3) センサー

 YellowScan社はDroneにも搭載可能なLiDARやRaderを使ってインフラの内部の損傷状態、作物の成長状況をモニターできるセンサーを開発している。ブースに展示されたDroneに目を引かれる人が多かったが、ポイントはそこではない。YellowScan社からはInvitationをもらっていたが、メールには書かれていないCase Studyが用意されていた。同社は空中からでも水面下の海底や川底の状態を分析できる技術を開発していた。同社のセンサーのサイズは大人が抱えるくらいの大きさのため、Toy Droneに搭載できないが、インフラの点検用に利用されている商業Droneであれば、搭載可能だと思う。同社はすでに日本でのパートナーがいるため、いつでもデモを見せてくれるそうだ。

YellowScan社のセンサー(左)、Droneに搭載した様子(中)、水面下の分析結果(右)

(4) Smart Glass

 Crowd Fundingで大成功を収めたので知っている人もいると思うが、Jetroの支援を受けて日本からやってきたVixion社はユニークなSmart GlassのVixion01を開発している。Vixion01は、フレームに付けられたダイヤルを回して焦点を合わせると、どんな距離の物でも再調整なしでいつ焦点を合わせたのかが分からないほど一瞬で焦点を合わせる。
 Vixion社は技術もユニークだがチームもユニークだ。Hoya出身者が立ち上げ、コンサル経験者、霞ヶ関出身者が一丸となって成長を目指している。昨年実施したCrowd Fundingでは、目標金額の500万円を遥かに超え、目標金額の85倍の資金を調達した。Vixion01は価格面でも他社製品と比べてアドバンテージがある。市販されている他社製品の価格は30万円/台のものが多いが、Vixion01の価格は10万円/台と既存の製品の1/3以下の価格になっている。
 ただ、課題がないわけでもない。市販品のレンズを使っているため少し視野が狭い印象を受ける。この課題については解決に向けて開発を始めているそうだ。フル充電で10時間の使用が可能だそうだが、常にメガネをかけている人からすると、Battery Lifeの改善が望まれる。

Vixion01の内側(左)と外観(右)

(5) Drone

 SwiterlandのJedsy社はユニークなFull AutonomousなDelivery Robot開発している。会場ではデモビデオを見せてくれたのだが、それがリアルなCase Studyとはすぐには思えないような飛び方をする。配送元と配送先の壁にDocking Stationを取り付ける。Droneは、そのDocking Stationから飛び立ち、そのDocking Stationに着陸する。デモビデオを見る限り、着陸というより張り付く(ドッキングする)イメージだ。配送社はDroneの上部の蓋を開けて荷物を入れ、受け取り社はDroneの上部の蓋を開けて荷物を取り出す。Droneへの充電はDocking Stationを通じで行われる。Jedsy社は軽い貨物を頻度高く配送することで実績を積みたいと考えているため、病院と研究機関の間のサンプルの輸送をターゲットにビジネスを展開している。食品や生活用品の輸送は次のステップで実現したいと言っていた。

格納(左上)、離陸(中上)、飛行(右上)、ドッキング(左下)、充電(中下)、受取り(右下)
(出典: Jedsy社)

6. 企業のPress Conference

 Media Dayの2日目はBosch社、Panasonic社、SONY社などがPress Conferenceを行なった。Bosch社、Panasonic社、Samsung社などはMandalay BayのカンファレンスルームでPress Confenceを行なったが、SONY社は例年どおりLVCC Centralの自社ブースで行なった。

(1) VolksWagen社

 メイン会場のフロアから少し離れた会場で行われたVolksWagen社のPress Conferenceは直前にメニュー追加されたにも関わらず、多くのMediaが詰めかけていた。
 VolksWagen社は同社のFlagshipモデルのID7のみならず、VolksWagen社のすべての車種にAI機能を搭載し、音声でエアコンやナビゲーションなどを操作できるようにすると発表した。具体的には、Cerena社とPartnershipを組み、人間と自動車のHuman Interfaceの革新、Personalization、カスタマイズ可能なUX、Immersiveな乗車体験の提供を目指す。
 Cerence社と共同開発したCerence Chat Proは、LLMとシームレスに連携し、20ヶ国語に対応している。また、クラウドからいつでもUpdateできるようになっている。Cerence Chat Proは複数のラインナップで利用が可能で、遅延なく正確に反応するのが特徴だ。

VolksWagen社のPress Conferenceの様子

(2) Bosch社

 いつものように“Like a Bosch”で始まったBosch社のPress Conferenceの今年のテーマはEnergyだった。「効率的なエネルギー消費は大切だが、Social、Economic、Enironmental Concernsの3つのバランスを取ることが必要。」と説明したのはBosch社Member of the Board of MangementのTanja Ruckert(以降、Tanja)さん。
 Bosch社は、化石燃料によるエネルギーの最適化と水素の活用を進め、ElectroMobility Value Chainを構築していると説明した。
 Bosch社は自動車の電化についても積極的で、CES 2024 Innovation Award Honoreesを受賞した自動充電システムのCARIADには同社の技術が使われている。
 また、同社はEVの走行距離を最大化に効果があるSilicon Carbideを用いた半導体を製造するため、$1.5Bを投じてCA州Roseville市に工場を建設している。

Bosch社のエネルギー戦略

 Bosch社がHydrogenに積極的に取り組んでいることは先述したが、Hydrogen Fuel-cell PowertrainをStuttgart市の工場で製造を始め、Direct-fuel Hydrogen Engineの製造を2024年末までに始めると発表した。さらに全米にHydrogen Hubsを建設すると公約した。
 本セッションを見る限りBosch社は、環境問題についてElectrificationとHydrogenの二つを軸にソリューションを提供するようだ。

Bosch社のHydrogen戦略

 Bosch社の最後のメッセージはDigitalizationだった。Softwareは同社にとって重要な要素で、Software Defined Vehicleの実現はゴールの一つだそうだ。同社は、AWS社と連携した新たな運転体験を提供しようとしているほか、車両の位置や状態を監視する仕組みの開発にも取り組んでいる。

Bosch社のDigitalization戦略

 Tanjaさんは、「Electrification、Renewable、Energy Efficiencyが成長の鍵だ。」とPress Conferenceを締め括った。

(3) Valeo社

 Valeo社のPress Conferenceのテーマは、近未来のMobilityを堅実に見据えたElectric、Autonomous、Software Defined Vehicleの3つだった。同社はこの3つのテーマに沿って、EV化の加速、ADASの加速、Lightingとインテリアの新たな創造を目指している。

Valeo社の具体的な取り組み

 EV事業に関しては、同社が開発した”6 in 1 Powertrain”とSoftwareの組み合わせにより、電力消費を最適化し、EV車の走行距離の拡大を実現している。また、人体に影響が少ない低周波を使った無線充電システムの開発と、充電時間を最大で30%短縮する仕組みの開発も行なっている。

Valeo社の”6 in 1 Powertrain”(左)とWireless Charging(右)

 Software-Defined Vehicleに関しては、8,000人のSoftware Engineerが開発を進めていると説明があった。
 Valeo社は、ADAS、Software-Defined Vehicleなど、未来のMobilityの実現に向けてGoogle Cloud、Applied Intuition社、Qualcomm社、BMW社、Mobileye社、Renault Group社などのパートナー企業と連携しながらの開発を続けている。

(4) Ottonomy社

 Ottonomy社Founder & CEOのRitukar Vijay(以降、Vijai)さんは、セッションの冒頭で「Retail/eCommerce、Restraunt、Airport/HotelなどのHyperLocalと呼ばれる市場は2027年までに$3.6Bに達する。」と説明し、Ottonomy社が狙う市場の大きさを説明した。
 Ottonomy社の戦略は、HyperLocal市場をターゲットに、同じプラットフォームを使って違うタイプのRobotを提供することだ。そうすることで、多様化するターゲットに対応しながらビジネスの拡大が望める。また、目的によってDelivery RobotのPeak Timeが異なる点もOttonomy社にとっては好都合のようだ。

Ottonomy社が狙うHyperLocal市場の成長トレンド(左)と多様なモデルのRobot(右)

 Ottonomy社はLocker MarketplaceのHarborを提供しているLuxer One社と提携して、HarborブランドのDelivery Lockerを提供している。Luxer One社は固定型のロッカーを提供しているため、実際にロッカーを利用するエンドユーザーとの接点を持っている。Ottonomy社にとっては、Luxer One社がエンドユーザーを開拓してくれるため、Luxer One社とのパートナーシップはOttonomy社にとってビジネス面で大きなベネフィットとなっている。

Luxer One社のロッカーを利用している企業ユーザー

 Vijayさんは、「Ottonomy社のRobotは環境にも優しい。」という。Vijayさんによると、Ottonomy社のRobot1台で1ヶ月で52kgの二酸化炭素の排出を抑制できているそうだ。
 現在、50台のRobotが世界各地で動いていて、ユニークなCase Studyも生まれている。Ottonomy社のRobotは駆動部と貨物部分がAPIで連結できるようになっているため、Airbnb社が部屋の鍵を届けるMobility Lockerとして使ったり、スタジアムでビールの移動販売Robotとして利用されるなどの事例が生まれている。さらに、Ottonomy社のRobotに多くのセンサーが実装されていることに目をつけた警察が、危険物の検知や街のパトロールにOttonomy社のRobotを利用しているそうだ。

Ottonomy社のRobotの利用事例

(5) SONY社

 SONY社のKeynoteは、Columbia Pictures社の100周年記念に始まり、アニメ配信、SportTech、PlayStation 5へと続いた。
 そして、クリエーターが深い没入感の中で創造性に富んだ作品を生み出せるようにすために開発したHMD型"Spatial Content Creation"システムの発表へと話を進めた。このシステムは、クリエーターがRealとVirtualの世界を意識せずに行き来しながら創作活動ができるように開発された。
 ただ個人的に残念に思ったのは、このHMDはSONY社のBoothでは展示しておらず、開発パートナーのSIEMENS社のBoothでしか展示していなかったことだ。穿った見方もしれないが、SONY社は本気でこのHMDを商用化しようと思っていないのかもしれない。

HMD型"Spatial Content Creation"システムの外観

 会場に設けられたVIP席の最前列にモータージャーナリスト達が並んでいたので想像できたが、今年のPress ReleaseでもSONY Honda Mobility社からAFEELAのUpdateがあった。
 SONY Honda Mobility社President & CEOの川西泉(以降、川西)さんは、デモ限定と説明した上で、PlayStation 5のコントローラーを使ってAFEELAをステージの袖から真ん中まで移動させた。

PlayStation 5のコントローラーで運転されてステージに登場したAFEELA

 昨年までは車両本体の機能や提供するコンテンツに関する発表が多い印象を受けたが、今年は人と自動車の関係を再定義し、AIを活用したADAS(Advanced driver-assistance system、先進運転支援システム)の先の世界観として、自動車をEntertainment Spaceへと進化させると宣言した。それを実現するためにArchitecture、センサー群、Qualcomm社のSnapdragonの採用、Epic Games社の高度のグラフィック技術を活用した自動運転シミュレーションについて発表があった。また、対話型パーソナルエージェントの開発にあたり、Microsoft社のMicrosoft Azure OpenAI Serviceとの連携についても発表された。

ADASを目指すArchitecture(左上)とパートナー(右上、左下、右下)

 そして、従来の自動車メーカーの枠にとらわれず、社外のクリエーターや開発者が自由にAFEELAの上で動作するアプリケーションやサービスを開発できる環境を提供し、Creativityを表現・共創できる場として「AFEELA共創プロジェクト(仮称)」を発表した。

AFEELA共創プロジェクト(仮称)を通じたInfotaiment(参考)

7. Keynote

 CESのKick-off Keynoteは、Microsoft社、VolksWagen社、Mercedes社、Intel社など時代を彩った企業のトップが務めてきた。そして、今年はSIEMENS社がKick-off Keynoteを勤めた。”Technology to Transform the everyday, for eveyone”というKeynoteのテーマに促されて、SIEMENS社President & CEOのRoland Busch(Roland)さんがステージに登場した。

SIEMENS社のKeynoteのテーマ

 Rolandさんは、RealとDigitalを融合させたIndustrial Metaverseというコンセプトを披露して話を進めた。Rolandさんは「Industrial MetaverseはInnovation、Sustainability、新しい技術へのアクセスを加速させる重量なコンセプトだ。」と説明した。Industrial Metaverseを構成する技術群で一番重要なのが”Digital Twin”、続いて”Software Defined Automation”、3番目に重要なのが”Data and AI”で具体的にはGenerative AIやLLMに当たる。AIに関してはMicrosoft社と提携していることを発表していたが、本KeynoteにおいてAWS社との提携を発表した。

SIEMENS社の新たなコンセプト(上)と構成する技術群(下)

 さらに、SIEMENS社は先述したSONY社のHMD型"Spatial Content Creation"システムの開発をサポートしている。SIEMENS社との連携、HMD型"Spatial Content Creation"システムの説明のため、SONY社Executive Deputy President, Technology and Incubation のYoshinori “Yoshi” Matsumoto(以降、Matsumoto)さんは、HMDをつけたままステージに上がった。SIEMENS Digital Industires社でSONY社を担当しているCedrik Neikeさんとの会話が終わった時Cedrikさんが、「これは置いていって」と言ったが、Matsumotoさんは「これは一つしかないからダメ」といって持って帰った。
 私の隣にはBosch社のPress Conferenceを務めたTanjaさんが同僚と熱心に話を聞いていて、Rolandさんが新しいコンセプトやパートナーシップを発表する度に、Tanjaさんは同僚と何か話していた。賞賛しているというよりは自分達との違いについて話し合っている様子だった。

8. Innovation Award

 CESの見どころの一つに、Innovation Awardがある。CTAは2023年11月15日に、29のカテゴリーで3,000以上の製品の登録があったと発表している。CES 2024の登録数は、CES 2023と比べて40%も増えたそうだ。
 CES 2024 Innovation Awardへの登録数が多かったトップ2カテゴリーは”Digital Health”と”Sustainability, Eco-Design & Smart Energy”だった。そして、初めて”Human Security for all”のカテゴリーから”Best of Innovation”を受賞する製品が生まれたそうだ。また、今回新設された”AI”カテゴリーは全体の7%を占め、市場が注目していることを改めて示した。

CES 2024 Innovation Awardのカテゴリー

 CES 2024のWebサイトには356の製品しか掲載されていないが、CTAは522の製品を”Innovation Honorees”として認定し、その中から27の製品を”Best of Innovation”に認定したと発表している(11月15日時点)。CES 2024では、NEC社の”Face & Facial Parts Monitoring System”が”Innovation Honorees”を受賞し、Honda社の”Honda Motocompacto”が”Best of Innovation”を受賞している。そして、2社の日本のStartupも”Best of Innovation”を受賞している。 
 Innovation Awardには応募するが出展しない企業もいるため、Awardを受賞した製品を確認したい人には、Venetian Expo 2階のInnovation Award Showcase(Booth #56332、予定)に立ち寄ることを勧める。

CES 2024 Innovation Award: Best of Innovation

9. おわりに

 Media Dayを見る限り、CES 2024も見どころが満載で4日間の会期では全て見て回れそうな気がしない。
 次号以降では、Keynote、Startup展示など、日本のメディアとは異なる独自の視点でCES 2024の様子を伝えたいと思うので、楽しみにしてほしい。


以上、


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