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CES 2024 レポート〜 Expoの注目サービスを一挙紹介 〜



1. はじめに

 CTA(Consumer Technology Association)の起源となるRMA(Radio Manufacturers Association)は1924年に組織された。その後、技術の進化により組織も変化しながら成長してきた。そして今回のCES(Consumer Electronics Show)はRMAが組織されてから100年目の記念大会となった。CESとしては、CES 2024は57回目の開催となる。CTAの発表者によると最大の登録者数を記録したのは2017年の184,279人だ。コロナ後登録者数は増えているが、CES 2024の登録者集は参加者、出展者、メディアを含めて、145,000人程度だ。
 前回のニュースレターではCES 2024の一般公開前に開催されたMedia Dayについて報告したが、本稿は一般公開されたCES 2024について報告する。


2. CES 2024の会場

2-1. 会場周辺の様子

 活気が戻ってきたCESだが、それに伴い交通渋滞も戻ってきた。CTAは、主要ホテルと会場、会場と会場を繋ぐ無料のShuttle Busを提供しているが、お昼頃から夕方までの渋滞は”酷い”の一言だ。Shuttle Busに乗るまでに1時間近くかかり、目的地に着くのにも1時間かかることがある。LVCC(Las Vegas Convention Center)があるTech EastとVenetian ExpoがあるTech Westの間はモノレールで移動できる。CES 2024期間中は一回券が$5.50、24時間券が$13.45だった。モノレールは5分ごとに運行され、LVCCとVenetian Expoは一駅5分くらいなので、来年参加する人は、モノレールを移動手段の一つに加えることを勧める。

Shuttle Busのルート一覧(出展: CTA)

2-2. 展示会場

 前号でも報告した通り、CES 2024はTech East、Tech West、Tech Southの3エリアで開催された。Tech EastにあるLVCC West Hallには、自動車メーカー、サプライヤーなど、自動車関連の企業が集まっていた。自動車業界との関係構築を狙うAWS社や自動車に多くのプロセッサーを提供しているQualcomm社もLVCC West Hallにブースを設けていた。
 LVCC NorthにはDigital Health、Vechicle Tech、Smart City、Robotics、IoT、Enterprise、FinTechなどの企業が出展していた。多くのOEMがLVCC West Hallに出展する一方、Honda社はLVCC North Hallに出展していた。
 ここ数年話題になっているSONY社が大きな展示スペースを構えるLVCC Centralでは、伝統的な家電に加えてMetaverse関連の展示が多く見られた。Metaverseに関してはXreal社、Vuzix社などのハードウェアベンダーだけでなく、Canon社やTDK社が展示し、B向けソリューションを紹介していた。
 そして、LVCC Southは今年もClosedだった。近い将来、中国籍の企業の出展が解禁になった時にLVCC Southは中国籍の企業で埋め尽くされると想像される。
 Venetian Expoの1Fは、Eureka Parkと呼ばれるStartupが多く出展しているスペースだ。近年はEureka Parkを見るためだけに参加する参加者もいる。
 Venetian Expoの2Fは、Smart Home、Life Style、Food Tech、Micromobilityなどの展示が見られた。Food Tech Zoneでは日本にも進出しているYo-Kai Express社が新製品のBoba Tea Machineを出展し、多くの参加者がデモの様子に見入っていた。 CES 2024はCES 2023同様、Tech East、Tech West、Tech Southの3エリアで開催される。
2020年に完成し、コロナ禍を経て2023年にCESデビューしたLVCC West Hallは、全ての展示ブースが売り切れたそうだ(出典: CTA)。LVCC West Hallには自動車メーカー、サプライヤーなど、自動車関連の企業が集う。LVCC Centralでは、伝統的な家電に加えて、Web3やMetaverse関連の展示が多く見られる。日本でも話題になっているXreal社はかつてはMicrosoft社、Intel社などが出展していたLVCC Centralの入り口近くで出展している。
 CES 2024でもMedeia RoomはLVCC Westに設けられていることから、CTAはCES 2024でも”Automotive”がCES 2024の注目トレンドと考えているのだろう。

CES 2024の会場概要(出典: CTA)


3. CES 2024概要

3-1. 出展者動向/参加者動向

(1) 参加者動向
 参加者数などの情報はCES 2024直前まで更新され、CTAは、CES 2024一般公開前の情報として、展示会場は2024年より10%増えて2.4M sqft(約223平方メートル)、参加者数は135,000人以上、Eureka Parkに出展しているStartupは1,400社以上、全出展者は4,300社以上と発表した。

CES 2024の様子(左: Numbers、中: Euraka ParkのDirection、WestからNorthに向かう参加者)

(2) 出展社動向
 出展社の傾向としては、CES 2024は韓国企業、韓国Startupが大きく勢力を拡大した大会となった。これまでEureka Park人気を牽引していたFrench Tech(135社)を遥かに凌ぐ数の韓国Startup(550社以上)がEureka Parkに集結していた(出典: CTA)。ちなみに日本企業のEureka Parkでの出展社は52社だった。
 韓国企業の勢いはEureka Parkだけでなく、CES 2024の会場のあちこちで韓国企業を見かけた。それもそのはず、CES 2024には897の韓国企業のブースが設けられていた。

Eureka Park内の韓国ブース(青色)(出典: CTAの資料を筆者が編集)

3-2. サービストレンド

 CTAの発表によると、以下の45のカテゴリーの製品、サービスがCES 2024で紹介された。その中で、CTAが一番注目しているのは、AI、Sustainability、Inclusivityの3つ。CTAがその次に注目しているのがDigital Health、Expanding Mobility、Human Securitiesだ。InclusivityとHuman Securitiesに関しては、5G、AI、Cybersecurity、IoT、Metaverse、Space Techなどの技術を駆使して実現しているソリューションを会場で見かけた。 CTAが事前に発表した注目トレンドは以下の18カテゴリーだ。

CES 2024に出展しているサービス・製品のカテゴリー


4. CES 2024 Expo

 ここでは、CTAがあげた注目技術についてExpo会場で見つけたソリューションを紹介する。

4-1. AI

 CESにおけるAIの展示は、AIエンジンそのものというより、AIを活用したサービスや製品の展示が多い。ここではAIを活用したユニークな製品を紹介する。
(1) Rabbit社
 CNET社やEngadget社などのテック系メディアがRabbit社のRabbit r1を一斉に取り上げた。Rabbit r1は、Generative AIを組み込んだPersonal AI Deviceだ。Rabbit社Founder&CEOのJesse Lyu(以降、Jesse)さんは”簡単で直感的に使える世界最小のコンピューターを作ることが私たちのミッションだ。”という。Rabbit社は、そのミッションを達成するために自然言語で操れる仕組みを導入し、コンピューターを直感的に扱えるコンパニオンのようにした。既存のSmartphoneはアプリケーションベースのデバイスで、目的に合わせてアプリケーションを使い分けなければならない。Rabbit社が開発したのはLLM(Large Language Model)ではなくLAM(Large Action Model)で、ユーザーのアクションをトリガーにしたAIだ。

Rabbit r1のChatGPT機能(出典: Rabbit社)

 Rabbit r1は他の製品より10倍も性能が良いChatGPT端末としても利用できるが、Rabbit r1の自然言語ベースの音声AIはボイスコマンドの域を遥かに超えている。例えば、Rideshareを予約する場合、目的地、乗車人数、荷物の数を指定するだけで、Rabbit r1がユーザーに変わって最適な車両を予約してくれる。ユーザーはRabbit r1のスクリーンに表示された内容を確認して”確認”をタップするだけだ。さらに、フライト、ホテル、レンタカーを伴う複雑な旅行の予約もユーザーに変わって予約して旅行ガイドも送ってくれる。まさにJesseさんが目指すパーソナルコンパニオンだ。

Rabbit r1を使ったRideshareの予約(左:オプションなし、右:オプションあり) (出典: Rabbit社)

 Rabbit r1にはカメラが搭載されている。例えば、カメラで冷蔵庫の中身を撮影し、「美味しいけれど低カロリーの料理を教えて」と質問すると、おすすめ料理を教えてくれる。
 Rabbit r1が現時点で対応している言語は英語だけ。計画としてはArabic、Chinese、French、German、Hindi、Japanese、Korean、Spanish、Swedish(アルファベット順)に対応するそうだ。
 Rabbit r1の機能にも驚いたが価格にも驚かされた。Rabbit r1と類似の機能を提供し、日本でも話題になっているHumani社のAI pinは端末価格が$669で、$24/monの月額費用がかかる。一方のRabbit r1は$199で月額費用などのHidden Feeはない。
 Rabbit r1は2024年3月ごろの出荷を予定しているが、今申し込んでもすぐには届かない。Rabbit社は4回目の増産を予定し、今申し込むと2024年6月ごろの出荷になる。

Rabbit r1の機能概要(出典: Rabbit社)

4-2. Sustainability

 Sustainabilityは、ここ数年、毎年のように注目分野に挙げられる。Media Dayに開催されるPress Conferenceを見ても、ほとんどの企業が”Sustainabilityは私たちにとって重要なテーマだ。”と発表する。しかし、LVCC North HallにSustainability Zoneはあるものの、Expo会場に目立った展示は見られない。その中でHyndai社とEneos社の展示について紹介する。
(1) Hyundai社
 Hyundai社の今年のテーマは”Ease every way(あらゆる方法での便利さの追求)”だ。Hyundai社は、「ソフトウェアとAIだけでなく、水素エネルギーを活用した人間中心のLife Innovationsの実現を目指す。」と発表した。Hyundai社のブースでは、Delivery Robot、MaaSの展示に注目が集まっていたが、Hyundai社の水素エネルギーシフトを推進する”HTWO”の生産、貯蔵、輸送、利用にわたるHydrogen Value Chainソリューションも紹介されていた。展示ブースでは、Hydrogen Value Chain以外にも廃棄物から水素を生成するWaste-to-Hydrogen、Plastic-to-Hydrogenに関する説明もあった。

Hyndai社の水素ソリューション

(2) ENEOS社
 ENEOS社はCES 2023同様、LVCC NorthのAI/Robotics Zoneに出展していた。ENEOS社がここに出展するのは、材料開発を高速化する汎用原子レベルシミュレータの”Matlantis”を紹介するためだろう。併せて同社はEV用潤滑油、サーバー用冷却油を共同開発しているGRC社の液浸冷却サーバーシステムを展示していた。CES 2024はさらにPercefoni社を活用したCarbon Footprint Managementソリューションを展示していた。Percefoni社の説明員によると、ENEOS社は社内のCarbon Footprintの把握、管理のためにPercefoni社のソリューションを採用したそうだ。その後、ENEOS社は同社への出資、販売パートナーとして連携を深めている。

ENEOS社のブース(左)とPersefoni社によるENEOS社のCarbon Footrint調査結果(右)

4-3. Inclusivity

 Diversityという言葉はよく耳にすると思うが、Inclusivityという言葉は耳慣れないかもしれない。私は、Diversityは個々のIdentityが受け入れらている状態を示し、Inclusivityは個々のIdentityが受け入れらている状態においてお互いを認め合いながら、あらゆる機会が平等にある状況を示す言葉だと理解している。
(1) Indoor/Outdoor Navigation
(a) Hearsee Mobility社
 NPOのHearsee Mobility社よると、目に障害がある人の30%は外出するとを不安に感じ、ほとんど外出しないそうだ。そこで、同社は目に障害がある人が不安を感じることなく外出できるソリューションを開発した。同社が開発したのは、シールのように薄いRFIDを目印にするMobileアプリとMobileアプリと連動した専用の杖だ。RFIDは建物内の柱、壁、扉など目印になりそうな場所に貼る。まずユーザーはMobileアプリで目的地を設定する。目的地を設定した後、ユーザーはMobileアプリと杖を持って歩き始める。ユーザーがRFIDの前を通過すると、MobileアプリがRFIDを検知して、”前進”、”右折”、”左折”などの次のアクションを音声で通知するとともに杖にも信号を送り、その信号を受けた杖のハンドル部分が振動する。振動によって方向を示すソリューションもあるが、今回はそのような機能は実装せずにシンプルなものにしたと説明してくれた。
 Hearsee Mobility社は、GPSパートナーと連携しOutdoor Navigationも提供している。

Hearsee Mobility社のデモの様子

(b)Okeenea社
 Okeenea社が提供しているソリューションは前述のHearsee Mobility社とほぼ同じだが、同社は専用の杖は提供していない。Okeenea社は施設管理者からの注文を受けると、施設の設計図を見ながらRFIDを設置する場所を決める。設計が終わると同社の作業員がRFIDを天井に設置する。ユーザーは同社のMobileアプリを使って目的地を設定し、Mobileアプリの音声ナビゲーションに従って、施設内を移動する。Okeenea社もGPSパートナーと連携したOutdoor Navigationも提供している。
 Okeenea社はHearsee Mobility社と違って専用の杖を必要としないため、目に障害がない人も同社のアプリを使って迷うことなく施設内を移動できる。
 Okeenea社のビジネスモデルはサポートする敷地面積単位の課金で、施設オーナーに課金し、ユーザーは無料で利用できる。目に障害がある人の30%を商業施設や観光施設に誘引できるのであれば、コストメリットはあると思う。

Okeenea社のナビゲーション環境

4-4. Digital Health

 Digital Healthも数年前から注目度が高まっている分野だ。過去にはSleep Tech、Mental Health、Meditation(瞑想)が人気で、パンデミック後には多くのTelemedicineソリューションが出展されていた。昨年は、Asics社やSuntory社(初出展)が出展するなど、日本企業の存在感を高めていた。しかし、今年は将来ブームになりそうな出展は少なかったと思う。昨年、Healthcare Zoneに出展していたAT&T社は今年はHealthcare Zoneを離れて、Connected Car Zoneに出展していた。事前の案内ではAging Techも注目分野だということだったが、企業ブースに小さなテーブルがいくつか並んでいた程度だった。そんな中でも存在感を示し、多くの日本のメディアが取り上げていた日本企業のソリューションを紹介する。
 
(1) SHISEIDO(資生堂)社
 CES初出展のSHISEIDO社は鼻の骨格から20年後の肌の状態を予測するソリューションと適切な美容法の習得と実践をサポートすることができるARアプリケーションの”Beauty AR Navigation”の2つのソリューションを出展していた。”Beauty AR Navigation”も興味深いが、ここでは鼻の骨格から20年後の肌の状態を予測するソリューションについて紹介する。
 SHISEIDO社の研究員の説明によると、長年の研究により肌の状態と肌の下の毛細血管の中の酸素量が密接に関係していることが分かったそうだ。同社の研究によると毛細血管の中の酸素量が多い人は年を重ねても肌の状態が良いという。そこで、SHISEIDO社は毛細血管の中の酸素量が鼻骨格に依存することを発見し、鼻骨格からしわやたるみといった将来の肌のトラブルを予測するシステムを開発した。このシステムを支えているのが、SHISEIDO社が長年蓄えてきた多数の顔写真と肌のデータ、および個人の肌に関する経年データだ。SHISEIDO社は、それらのデータを多変量解析して将来のしわやたるみなどの肌のトラブルを予測し、予防に必要な成分をレコメンドできるツールを開発した。
 SHISEIDO社は、このツールを活用して店頭でお客様をカウンセリングしながら、お客様に必要な成分を含んだ商品を試してもらうことを考えている。同ツールは、2月ごろのリリースを予定されている。
 SHISEIDO社は、出展場所も慎重に選んだそうだ。説明員によると、CES初出展であったため、どこに出展したらいいのか分からなかったそうだ。CES 2024にはDigital Health Zone、Lifestyle Zoneがあるが、そこには出展せずにVenetian Expo内のConference Roomで出展していた。Conference Roomは一目に付きにくいため多くの集客数は期待できないが、SHISEIDO社の技術や活動を真に伝えたい人にリーチできると考えたようだ。

鼻骨格に着目した将来の肌トラブルの予測システム

4-5. Mobility

 VolksWagen社やMercedes社がKick-off Keynoteを務め、Toyota社がePalletを発表した頃のCESはAutomotiveがCESの一番の目玉だった。その後EVへ注目テーマが移ったが、パンデミック後はEV人気も一息ついた感じだ。CTAも今回のMedia Dayの”Trend to Watch”では、陸上移動のためのMobilityに加えて、海上、空中のMobilityに注目が集まっていると説明していた。
(1) Expanding Mobility
(1-1) 三菱電機(株)
 毎年CESに出展し、CTAのメンバーにもなっている三菱電気(株)は面白いソリューションを展示していた。
(a) Delivery Robot
 三菱電気(株)は提携しているCartken社の二つのモデルのDelivery Robotを展示していた。一つは、Model Cと呼ばれる小型のDelivery Robotだ。Cartken社のDelivery Robotはカメラのみで実現する自動運転で屋内と屋外のどちらでも安定して走行できることが特徴だ。Model Cは、2023年4月1日の改正道路交通法の施行のセレモニーで紹介されたので知っている人もいるだろう。Model Cは愛知県常滑市のイオンモールに導入されているほか、茨城県つくば市では楽天と提携しスーパーやレストランなどから自宅、オフィスなどへ配達するサービスも導入されている。アメリカの大学キャンパスでは1つのキャンパス内に100台のModel Cが縦横無尽に自動配送しているそうだ。もう一つはModel Eと呼ばれるDelivery Robotでスーパーやレストラン、病院などでさらに高重量や複数の荷物を運ぶのに適している。欧米では工場内での自動搬送などにもすでに活用されている。

Cartken社と連携したDeliverty Robot(左: Model E、右: Model C)

(b) Drone
 私がもう一つ気になった展示は、Droneベンダー向けに開発されたDrone Operation PlatformのAnymileだ。DroneベンダーはAnymileを利用することで、Droneの飛行オペレーションに関するソフトウエア開発をせずに済むため、Droneの機体開発に集中できる。
 陸上、会場を問わずに垂直に離陸し、その後固定翼により水平飛行するDroneを開発しているUKに本社があるSpeeder Systems社はAnymileを利用している。
 Speeder Systems社のDroneは、映画Star Warsに登場するX Wingを彷彿させるようなフォルムのDroneだ。飛行距離は固定欲にしては40 miles程度だが、広めのカーゴスペースには70kgまでの荷物が詰める。Speeder Systems社co-founder&CTOのTadao Denis Ozistekさんは、 「このカーゴスペースにはDroneを乗せて飛ぶことができる。まさに、DroneのMothershipだよ。」とニコニコしながら語ってくれた。

三菱電機(株)のAnymileを活用したSpeeder Systems社のDrone

(1-2) HL Mando社
 前回のニュースレターで紹介したCES 2024 Innovation Award Best of Innovationを受賞した駐車スペースの効率利用を実現するValet Parking Robotを開発している韓国のHL Mando社はLVCC Northのブースでデモを行っていた。デモの内容は2台のRobotが自動車の下に潜り込み、デモスペースを縦横無尽に自動車を自動運転(Level 4)で移動させるものだった。
 自動車の下に潜り込んだ同社のRobotはタイヤの位置を検知し、左右二本ずつのアームで自動車をゆっくりと少しだけ持ち上げる。そしてプログラムに従ってRobotが所定の位置まで移動させ、移動が完了するとRobotはホームポジションに戻る。
 この技術を支えているのは、中国のHESAI TECH社の2台のLiDARと2台のカメラだ。以前はVelodyne社のLiDARを使っていたそうだが、品質、価格の面でHESAI TECH社のLiDARに切り替えたのかもしれない。日本にはValet Parkingの文化はないが、駐車スペースに制限がある状況は日本も韓国と同様だ。ショッピングモールにおいて同社のRobotは、駐車場渋滞の解消と新たなパーキング体験の提供の両面で集客ツールになると思う。ショッピングモール以外にも多くの可能性を感じた。

HL MandoのValet Parking Robot

4-6. Human Securities

 CTAがいうHuman SecuritiesはCybersecurityとは違い、CES 2024では”食の安全”に関するものだった。
(1) FoodTech
 今年もVenetian Expo 2Fに”FoodTech Zone”が設けられた。昨年と比べると出展エリア、出展者数、出展内容も増えていた。日本で多くの導入実績がある日本のDAY BREAK社は、同社が製造している急速冷凍庫のグローバル展開を目指して出展していた。
(a) Yo-Kai Express社
 Yo-Kai Express社はラーメンマシンを開発しているStartupで、日本の有名ラーメン店とコラボしたラーメンマシンを首都高のSA(サービスエリア)や熊本空港に設置している。Silicon Valleyではショッピングモールやフードコートなどに同社のマシンが設置されているのだが、NTT Researchのオフィスにも同社のラーメンマシンが設置されている。
 Yo-Kai Express社はCES 2024でBoba(タピオカ) Teaマシンを出展していた。昨年末に同社Founder&CEOのAndy Lin(以降、Andy)さんから昨年末に話を聞いていたが、実機を見るのは初めてだった。「Bobaは水分を含むとブヨブヨになって美味しく無くなるよね。どうしているの?」と質問すると、Andyさんは「じゃあ、今注文してみよう」と言ってデモを見せてくれた。
 同社のBoba Teaマシンの中はたくさんの容器が入っていた。まず、Bobaの種類を選び、次にドリンクのFlavorを選んで注文を確定する。コンテナを収納している棚が回転し、ロボットアームが注文したBobaの容器を掴んで、所定の位置に移動させる。同じ要領でFlavorの容器とミルクティーの容器を所定の場所に移動させる。私は抹茶味を選んだのだが、次に抹茶の粉とミルクティーを混ぜる作業が行われた。Andyさんは、「毎回こうやってFlavorを混ぜるからFleshなんだよ。」と言っていた。抹茶とミルクティを混ぜる作業が終了すると紙コップにドリンクを注ぎ、最後にBobaを紙コップに入れて調理は終了。調理が終わると紙コップにフィルムを貼って、取り出し口から紙コップが出てくる。この一連の作業が約4分。今回はマシンの中が見れたので長いと思わなかった。店舗で対面で注文する時間より短いと思うが、待ち時間が長いと思う人もいるかもしれない。

Yo-Kai Expressのブース(左)と同社のBoba Teaマシンの内部(右)

5. おわりに


 CES 2024でも新しい製品やトレンドなど多くの発見があった。誰もが目を見張るような製品は少なかったかもしれないが、将来性を感じる製品も多くあった。今回、EVメーカーのXPENG社は、乗用車タイプの”空飛ぶクルマ”を出展していた。”コンセプトカーの参考出展”と思った人がほとんどだと思うが、CES 2016にehang社が出展していた”人が乗れるDrone”を思い出してほしい。ehang社は実物大のモックアップ、コンセプトビデオ、ちょっと浮いた程度の実証実験のビデオを紹介していた。多くの人が写真を撮っていたが、このDroneが空を飛ぶ姿を想像できた人は少なかったと思う。しかし、ehang社は2021年6月に岡山県笠間市で、2021年12月には福島県浪江町で実証実験を行った。CESに出展されている製品は打ち上げ花火的なものもあるが、将来の可能性を想像しながら会場を回るとワクワクが数倍に膨れ上がり、視察も有益なものになると思う。

XPENG社の乗用車タイプの”空飛ぶクルマ”


以上、


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