ウソップが一味を辞めてまでメリー号にこだわった理由をまじめに考えてみた 【見えてくるウソップの武士道】 ~ONE PIECE 哲学(W7編)~
導入
最近になってまたワンピースを読み返している。今ちょうどウォーターセブン編を読み返したところだ。ワンピースのすごいところは同じ場面でも子供の時に読むか、あるいは大人になってから読むのでは感じ方が全然違ってくるところだろう。(どの作品にも言えることかもしれないが)
そしてこのウォーターセブン編でもそういったことがあった。それはルフィとウソップが言い争いになった場面である。
最初読んだ時は「なぜそこまでウソップがメリー号にこだわっていたのか」がわからなかった。どう考えてもルフィ側の方が正しいでしょ!と思っていた。だが今は違う。ウソップの気持ちがすごくわかるなあと思った。ただこれは感覚的な話だったので、改めてなぜウソップは一味を抜けまでしてメリー号にこだわったのか、その理由を一度しっかりと言葉で書いてみた。あくまで僕の解釈なのでワンピースファンの一意見だと思って理解してもらえればと思う。
批判A
例の場面でウソップ側に問題があるだろうと考える人は大方以下の主張をするだろう。(yahoo!知恵袋から引用)
批判A
「メリー号がカヤさんから貰った大切な船なのはわかるけど、沈むってわかりきってるのに他の仲間を危険にさらしてまでメリー号にこだわるのはおかしい。」
↑上記の指摘はすごく全うだなと思う。Aさんの意見は正しい。理屈(客観)の話では。第三者目線で見るとどう考えてもメリー号は乗り換えた方がいいに決まっているからである。
だが上記の指摘は当事者(ウソップ)のプライド(主観)の部分を完全に突っぱねてしまっている。そこ(プライド)の部分の話をこの記事ではしっかり書きたい。
ルフィとウソップが言い争いになった本当の理由
まずそもそもなぜルフィとウソップがケンカをしたのか。そこを勘違いしている人が多いような気がする。ルフィとウソップはメリー号どうこうの話で言い争っていた訳ではない。そこが根本的に間違えているのだ。あくまでそれは表面的な話でありそこが本質ではない。
ではルフィとウソップはなぜケンカをしていたのか。
それはお互いに譲れないプライド(メンツ)あったからである。ではそのプライドとは何か。
双方のもつプライド(メンツ)をみていこう。
ルフィのプライド(メンツ)
ルフィには船長としてのメンツがあった(長の決定は絶対)
ルフィの立場としては船長として一度決めたことをあとから仲間に反対されて決定を取り消すような「迷い」を見せると他のクルーにカッコつかない。船長としての威厳があやふやものになってしまう。
つまり、
◎【ルフィのプライド(立場)=船長としての威厳】である。これは至極わかりやすい。
ウソップのメンツ(プライド)
一方ウソップにも一味のクルーとしてのメンツがあった。
それは1人のクルーとして自分の意見も尊重されてほしいというプライドである。ここでウソップの心境を確認してみよう。
ウソップはフランキー一家殴り込みの一件で
仲間からの頼み(2億ベリーの保護)一つ遂行できず、また仲間に助けてもらった。また足手纏いになっちまったというところにウソップは「負い目」を感じていた。
また、実はそれ以前でもウソップは一味に対して「負い目」を感じる場面があった。それは時を少し遡ってウォーターセブンに入る前のこと。一味は海軍大将青キジ(グザン)と接触していた。この時一味は青キジに完全敗北してしまう訳だがその一連の騒動の後にウソップはこんな事を言っていた。「俺はただバタバタ騒いで終わったよ、、、、」
この発言はウソップが船長や仲間に対し「無力感」を強く感じていたからこそ出た発言だと思われる。ここの場面でもウソップは足手纏いになってしまったな、、と感じそこに「負い目」を感じていたのだ。
これら2つの出来事が相まって
フランキー一家殴りこみの一件の後、ウソップは改めてこう思っただろう。「もしかしたら俺ってこの一味の中で重要度の低い《下》扱いされているかもな,,,」
「だって現実問題、ナミ、ロビンは女だから置いといたとしてもルフィゾロサンジは別格だしチョッパーだってあいつは悪魔の実の能力者で正直全然俺では敵わねえし、、、。」
そう言った意味でウソップは自分が一味から「下っ端(弱い者)」扱いされてそうで怖かったし不安だったのだ。(当然ルフィや他の仲間はそんな風には思ってないと思いますが、、、)
そんな心境の中で、ルフィが勝手に船長判断と言い独断で「メリー号を乗り換える」という決定をしたと言ってきた。
これには流石のウソップも考え直せ!と怒ったが、この時のウソップはそのこと以上にルフィは自分の意見を対等なクルーの意見として尊重してくれるのか?というところである種ウソップはルフィを試していたと考えられる。
たとえもし頭の中で答えが決まっていたとしても、
「たしかにそうだな。ウソップの意見も最もだ。もう少し考えよう」的な事を言ってもらえればあとでルフィが意見を変えようがウソップとしてはもうOKだ。
なぜなら一味の船長は自分の意見をいう対等なクルーの意見として受け入れているという証明になるからだ。つまり
☆「ルフィが自分の意見を対等な意見として受け入れるか、欲しかったのはその答えだった」
そしてもしルフィが「ダメだ。船長判断だ。決定は変えねえ以上。」
だけで終わらせてくれば
ウソップの意見は全く相手にされてなかったということになりやっぱり自分は一味の中で「下っ端な風に思われているんだ」と自分を理解することになる。
批判Aへの僕なりの解答
だからウソップにとっては
客観的に船が沈むからどうとかそういったことはどうでもよかったし、そもそもそんなことはわかっていた。
☆☆ただ一味のみんなが自分の意見を対等に扱うのかそれとも雑に扱うのか。欲しかったのはその答えだった。
対等な仲間として自分を扱うのかそれともまるで下っ端のように自分を扱うのか。別に対等に扱ってくれたら、船を乗り換えても構わないと思っていたはずである。繰り返すがウソップが欲しかったのは「自分の意見を対等に扱ってもらえてる感覚」。それさえ確認できればなんでもよかった。
そういう意味で「船長はおれの意見を対等に扱ってくれるのか」ウソップはルフィを試していた。
というわけで
◎【ウソップのプライド(立場)=一味の下っ端扱いされたくない(簡単に言うと舐められたくねえ)というプライド】
結論
その結果ルフィは割とそっけない感じでウソップの意見を一蹴したとウソップは感じ、こう思っただろう。
「やっぱりな。結局そんな感じで俺のことを見てるんだ。俺にだって舐められたくねえっていう男としてのプライドはある。そこのプライドを捨てて(自分は一味の中で下っ端扱い、つまり一味の中で力も立場も弱い奴で基本的に自分の意見も参考にしてもらえないくらいのみじめな存在であることを受け入れることをして)まで、この一味にいる理由はねえ。」と。これはまさに
「生き恥(プライドを捨てている状態)さらすくらいなら死んだ(一味から抜けること)方がましだ」と言わんばかりの武士道の精神である。
簡単に整理
ウソップのプライドを百獣海賊団で例えるなら
(a)キングがカイドウにアドバイス
→カイドウはキングのアドバイスを参考にする
なぜならキングはカイドウにとって「重要な存在」だから。
一方、
(b)ウェイターズのモブがカイドウにアドバイス
→カイドウはモブのアドバイスを参考にしない、なぜなら「下っ端」だから。
要はウソップはおれは(b)じゃなくて(a)の存在者だよな?
という確認がしたかったのだ。
だからウソップは「ルフィが自分の意見を参考にしている感じ」←これが欲しかった。
まとめ
生きていく上で「プライド」は非常に重要なものだと思う。客観的な事実だけを押し付けて物事を決定するのは非常に乱暴ではないかと感じている。
現代社会は科学が隆盛しているせいもあいまって「客観性」が重んじられる傾向にある気がする。一度そのような事実第一主義から離れ、今一度日本の古き良き武士道の精神を思い出し、人の「プライド(尊厳)」を考える必要があるのではないだろうか。それが「思いやり」であり現代人に少し欠けたものなのではないかと思うのである。