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Tom Leeはアメリカ関税の第一弾をこう見る


イントロ

みなさん、こんにちは。
先週金曜日に発表されたカナダ、メキシコそして中国への関税を可能とする大統領令をめぐって、週末はクリプトマーケットが大きく下落、さらに今日のマーケット明け前の先物も、すべてのメジャーインデックスでマイナス値を示していました。

そんな中、マーケット明け前にTom Leeがこの関税第一弾の影響等に関する見解を述べていましたので、さっそく紹介したいと思います。



関税の影響を軽減するメカニズム

まず今回のインタビューの冒頭で、番組アンカーが今日の下落も”Buy the dip”なのかと聞いています。

Overnight, it was actually, I think when futures opened, it was almost twice the decline. So, the small caps were down four, NASDAQ down over three. It's good to see sort of markets are catching their breath. It's the second Monday shock, right? Last week was Deep Seek. But I'd say actually it's almost a victory that if we open only down one and a half percent, because I think there was quite a lot of panic over the weekend.

Interview on CNBC television @2/3/2025

和訳(意訳含む)「昨晩からの先物市場の動向を見ていると、主要指数は今日のマーケットオープン時の下げの倍ほど下げていました。小型株指数先物は4%、Nasdaq先物も3%以上の急落でした。ですから、現時点での市場の反応は一息ついた様相ですので、これは安心材料です。今回は2回目のMonday Shockですよね?先週月曜はDeep Seekのニュースでした。ですが先ほども述べたように、今日の市場が1.5%程度の下落でスタートできているのは、株式市場にとっては勝利だと言っていいと思います。」

とはいえセクター別でみると、今回の関税が相場に与えた影響はディフェンシブ株とテック株や景気循環株で明らかに異なります。

2025年2月3日のUSセクター別パフォーマンス | Data source ; Yahoo Finance

このような関税は単に交渉材料であり、長期間にわたって課税されるわけではないというマーケットのこれまでの想定は見直されるべきか、と問われたTom Leeは次のように答えています。

I'd say there's decent odds that, let's say we go three months out, that the tariffs will be rolled back because concessions were received. And there are also other mechanisms in place to sort of protect markets from the downside. I know people think this is an unlimited risk scenario for stocks. But if the tariffs come into play and other countries go into recession, those central banks will be easing, which will actually improve liquidity. So I'd say that as bad as things look, I do think there's downside protection.

Interview on CNBC television @2/3/2025

和訳(意訳含む)「私の見立てでは、相手国の譲歩を引き出し、関税を取り下げるまでに3か月位かかると思います。また、関税の悪影響から米国経済を守るいくつかのメカニズムもあります。皆さんは、関税政策が株式市場にとって無制限のリスクシナリオだと見ているでしょうが、本当に関税が適用された場合、相手国の方が景気後退に入る可能性が高く、その結果、その国の中央銀行は利下げをする、つまりマネーの流動性は改善することになります。ですから関税による悪影響は思ったほど大きくはならないと言えます。」

確かにカナダやメキシコのように、貿易全体に占めるアメリカの比重が非常に高い国々にとっては、関税のインパクトはアメリカよりも相対的に強く作用するはずですので、そうなった場合の相手国側のシナリオとしてはあり得そうな話だと思いました。

また、他にも関税が発動されると、相手国通貨とアメリカドルとの為替がドル高に傾くので、それによっても一定程度輸入品の価格上昇を抑制することができるというロジックも理論上は納得できます。

ただし、このようなシナリオは多くの前提条件や仮定のもとに成り立っているように見えますので、実際にはやってみないとわからないというオチのような気もします。



マーケットと消費者の反応

次に、今回のような関税がアメリカ国民に与える影響と、アメリカ国民がトランプ政権に与える圧力について話題が及びます。

I do think Americans vote with their wallet. So, if they're feeling the pain, just like when they feel pain at the pump, it does affect confidence. And I think if people are feeling in their wallet what they have to pay and, you know, many Americans actually don't have an ability to absorb all these huge costs. So, I think you're going to feel the pain.
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That's right. Greedflation was, I think, a bigger problem before. I think there is a lot more pushback and it's going to be tougher for companies to pass on prices. But I'd also, you know, take some of the executive order at face value. You know, this isn't really about rewriting all of trade practices as much as it is trying to get Canada and Mexico to talk about the flow of illegal drugs and illicit chemicals, etc.

Interview on CNBC television @2/3/2025

和訳(意訳含む)「アメリカの有権者は自身の財布の中身を見て投票します。例えばガソリン価格が上昇して実際にインフレの影響を感じると、それは明らかな苦痛となりますし、実際、多くの人々は関税によって引き起こされるであろう価格の上昇を吸収できません。」

関税コストを誰が引き受けるのか、という論点は昨年の大統領選挙キャンペーンのときからずっと議論されてきました。企業側がコストを引き受けるかもしれませんが、これを機とみて商品価格を引き上げる企業もいるでしょう。

和訳(意訳含む)「そうですね、過去にもあったGreedflatoin(強欲なインフレ)はより重大な問題でした。ですが、現在は消費者側からの強い拒否反応が予想されるので、企業側が関税コストを商品価格に転嫁するのはより難しくなっていると思います。個人的には今回の大統領令を額面通りに受け取ってもいいと思っています。つまり、これは現行の貿易慣行を塗り替えるようなものではなく、カナダとメキシコ両国に違法ドラックや化学物質の流入を防ぐための単なるツールである可能性です。」

以上のように、今回のインタビューでのTom Leeのトーンはどちらかというとトランプ政権が想定する方向で物事が進んでいくとみているようです。



ISM製造業景気指数

ISM Manufacturing PMI and S&P 500 forward EPS before today's release

ちなみに、今日は関税にかかわるニュースで株式市場が動揺している裏で、Tom Leeが以前から指摘していた非常に重要なISM製造業景気指数が発表され、遂にそれが50を上回ったことが確認できました。(上図は、今回の発表前にFundstratが指摘したISM PMIとS&P500のEPSの相関。下図は、1月の結果を含むISM製造業景気指数の最近の動向。)
ここ2年間はISM製造業景気指数の上昇を伴わずに将来EPSだけが上昇していましたが、今後製造業も景気が上向くとすれば、仮にサービス分野のEPS成長の減退が生じても相殺してくれるかもしれません。

ISM Manufacturing PMI since 2021



最後に

今朝のマーケットオープン前には関税による相場の急落を覚悟していましたが、終わってみれば、Tom Leeが言うように主要指数は1~1.3%ほどの下落で踏みとどまりました。
また、今日行われた、アメリカ・メキシコ、そしてアメリカ・カナダ両国の首脳電話会談でそれぞれ関税実施の1か月延期が決定したようですので、今日のところはTom Leeの予想通りといったところでしょうか。
あとは、中国の出方が気になりますね。それでは!


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