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本歌取り二編

其の一 令和の胡瓜
 詩も川も臍も胡瓜も曲がりけり 橋閒石
令和の胡瓜は曲がっていない
びっくりするほど真っ直ぐである
スーパーに箱のまま置かれているが
縦に真っ直ぐ隙間なく
みっしりと並んでいる
令和の臍と詞もまた
曲がってはいない
真っ直ぐな言葉が
真正面の臍に届く
一方で
川は年月が経つほどに曲がるそうである
従って川だけが唯一
令和の世で
曲がっている物である

其の二 石粒
 兄事する石塊のありひきがへる 中原道夫
私は20歳の頃石粒に兄事していた
有給をとって放浪の真似をしていたある日
お岩木山の石粒の姿に打たれた
雨が降ればちょっと動き
風に煽られればコロコロ転がる
己の意思とはむとんちゃくに動くことを
苦としない
ただただ空だけ見て
そこに佇む
川床の石粒になっても
今までと同じ顔で
空を見ているのだろう
コレガイイカモ
コレニナロウ
いつの間にか目標は
石粒でなくなったけど
どこかの道端で
分身の石粒が空を見ている
と思うのは悪くない









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