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Photo by
fu2050
本歌取り二編
其の一 令和の胡瓜
詩も川も臍も胡瓜も曲がりけり 橋閒石
令和の胡瓜は曲がっていない
びっくりするほど真っ直ぐである
スーパーに箱のまま置かれているが
縦に真っ直ぐ隙間なく
みっしりと並んでいる
令和の臍と詞もまた
曲がってはいない
真っ直ぐな言葉が
真正面の臍に届く
一方で
川は年月が経つほどに曲がるそうである
従って川だけが唯一
令和の世で
曲がっている物である
其の二 石粒
兄事する石塊のありひきがへる 中原道夫
私は20歳の頃石粒に兄事していた
有給をとって放浪の真似をしていたある日
お岩木山の石粒の姿に打たれた
雨が降ればちょっと動き
風に煽られればコロコロ転がる
己の意思とはむとんちゃくに動くことを
苦としない
ただただ空だけ見て
そこに佇む
川床の石粒になっても
今までと同じ顔で
空を見ているのだろう
コレガイイカモ
コレニナロウ
いつの間にか目標は
石粒でなくなったけど
どこかの道端で
分身の石粒が空を見ている
と思うのは悪くない