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YCAM Interlab Camp vol.5 ホモ・コーデンス—AI時代、人類はどう描くのか 参加レポート

こんにちは,ToLpazと言います!
今回は,2024年10月25日(金)〜27日(日)の期間に開催された「YCAM Interlab Camp vol.5 ホモ・コーデンス—AI時代、人類はどう描くのか」というイベントに参加してきました.
多くの学びと気づきを頂き,忘れないうちに言葉にしようということで筆を執りました.
参加レポートと題しつつも感想主体,かつ稚拙な文になりますが,どうか最後までお付き合い頂けると嬉しいです!


自己紹介

改めまして,ToLpazです.「とるぱーず」と読みます.
WebやXR系の技術が好きで,趣味ではゲームをしたりVRの世界へ没入したり,小説や本を読むのが好きです.

VRChatで使用しているアバター

X:https://x.com/T_yao_K
VRC:https://vrchat.com/home/user/usr_ac13bafe-d8db-4be3-a7c9-8697200d0b66

普段は大学生をしながらVRChatというメタバース空間で過ごしています.
「ラノベ×フルダイブVRでOZ的異世界を創り、当たり前にする」という志のもと,今まで相当数読んできたライトノベルで培った,異世界やファンタジーの世界観を実現しようとしています.

今回はYCAM初参戦,アートの世界にしっかり触れるのも初めてということで本当に多くの刺激を受けました.
アカデミックなエンジニアの世界に居た私が,アートの世界へ足を踏み入れて何を感じたのか.
良い感じに言語化できたと思います.

それでは,よろしくお願いします!

イベント概要/振り返り

さて,感想を語る前に簡単にではありますが,どのようなイベントだったか,というのを振り返っていこうと思います.

▽公式イベントページ▽

本イベントでは、コンピューターのアルゴリズムによって生成される「ジェネラティブアート」の制作を行うアーティストや研究者らを招き、AI技術とコーディングを組み合わせた表現手法を実践的なハンズオンとレクチャーを通じて探求します。

公式イベントページより引用

概要に関して,公式イベントページから引用させていただきました.
ジェネラティブアートをテーマに多くの企画がありました.圧倒的に充実したハンズオン,トークイベントがあり,最終的にはハッカソンとして個々人が100枚の絵を描き,発表する,というイベントでした.

p5.jsというJavaScriptのライブラリを用いて,コードで絵を描くということをこの三日間集中的に行いました.

講師やYCAMのスタッフの方々のサポートが手厚く,多様な方が集まった中で全員がちゃんと作品を発表できていて,本当に素晴らしいイベントだったと思います.

一日目

一日目はオリエンテーション,p5.jsのハンズオンを始めとしたさまざまな企画がありました.
p5.jsとは何か?プログラミングはどのようにすればいいのか,どのようにコードで絵を描くのか等々.プログラミング初心者にも分かり易い充実したハンズオンが中心でした.
今振り返ってみると一日目が一番タフだったな…と思います.さすがに全部を振り返っていくと文字数的にすごいことになりそうなので,特に印象に残ったものをピックアップしていこうと思います.

ホモ・コーデンスとは?

オリエンテーションの中で,イベントの題名にもある「ホモ・コーデンス」について触れられていました.
ホモ・コーデンス.直訳すると"コーディングする人"ですね.
スライドでは以下のように記されていました.

Using algorithms of code to create new digital, generative cultures.

オリエンテーションスライドより

ホモ・コーデンス:コーディングによってデジタル・ジェネラティブな文化を作る人.

ここでジェネラティブについて触れておきます.
ジェネラティブはジェネレート(生成する)の形容詞表現で,何かを生み出す能力を意味します.
ジェネラティブアートとは,アルゴリズムやAIを使用して自動的に生成される芸術作品,です.

これだけを読むとなんのこっちゃいって感じですが,私なりの理解を下に示そうと思います.

ジェネラティブアートの簡単なイメージ図

最終的に作品を出力するのはコンピュータ等で,その作品を出力させるためのアルゴリズム等を人間がつくる,という感じです.
人間が作成しているのはあくまでアルゴリズムであるので,作品が出力される度に異なる様相になる,というのがジェネラティブアートであると理解しています.

コードを書く事で創作活動をするホモ・コーデンス.そこへコードを生成できるAIが登場してきて,今後どのようにして人類(ホモ・コーデンス)はジェネラティブアートを描くのか.をテーマにイベントが進行していきました.

Alive Painting

画家である中山晃子さんが行われているAlive Paintingを体験できるイベントがありました!

Alive Painting(1)
Alive Painting(2)

参加者全員が一手づつ描いていって,作品に変化を加えていきました.
自己紹介でも言いましたが,アートの世界にしっかり触れるのは初めてだったので,この時は上手く言葉にできない不思議な感情を抱いていました.
ただ,目の前で行われているのは今ここでしか見れない作品を参加者全員で作っていて,儚さと同時に感動を覚えていました.

特に印象に残っているのは,私が作品に手を加えた時のことです.
前の人が加えた変化を見ながら,「この色をこんな感じに入れたら面白いんじゃね?」と考えて手を加えました.が,私としては思ったような変化じゃなくて少し落胆していました.
しかし,
「あぁ,良いですね~」
と言いながら作品への変化の解釈を話す中山晃子さんがやけに印象に残っています.

二日目

さあ,二日目です.一日目は人間がコードを書いて絵を描く,というのが中心でしたが,いよいよAIが中心の企画になりました.
AIを用いてどのようにコーディングを行うのか,というハンズオンや,AIをテーマにしたトークイベントが開催され,夕方からはついにハッカソンが開始されました.
二日目も同じく,特に印象に残ったものをピックアップしていこうと思います.

ハンズオンのレベルの高さ

これは二日目,というよりも全体通しての印象になるかもしれませんが,行われるコーディングのハンズオンのレベルが高かったです.
AIを使っているとは言え,クラスを用いたオブジェクト指向のプログラミングや,VScodeの説明,Github copilotの導入までありました.

私は情報系の学科に通っているので当然習った内容ではあるのですが,これを短期間のイベント,かつプログラミング初心者の方がいる中でやるのか…!と衝撃をうけていました.
周りを見てみるとちゃんとハンズオンの内容はできているみたいだったので,参加者の方もサポートされている方もすげえな…!
とただただ驚いていました.

生成AIは回収的

トークイベントの中で木原共さんがおっしゃられていた,「生成AIは回収的」という言葉が特に印象に残りました.
AI絵からなんとなく感じていた,「なんか見たことあるなあ」という感覚が,

潜在空間の中からの「回収」であり既視感の先に行けない

とバチバチに言語化されていて,とても腑に落ちました.

今回のイベントはアートが主体だったので,AIを使った面白い表現について主に議論されていました.
AIを使う中で人間の意図や軌跡を残しつつ表現する.
その後のハッカソンにおいて,自分の思考や思いをどのように作品に込めるか,という部分で非常に参考になるお話でした.

また,木原さんはゲームを開発されている,とのことでCursorについての話やAIについて感じていること等,共感できる話が多かったです.

三日目/作品紹介

いよいよ三日目です.昼過ぎまでハッカソン開発,画像or一秒の動画を100枚提出し,ホワイエというYCAMの1階から2階へと続く大階段の前に拡がるフリースペースで発表が行われました.

ここで,私が作成した作品を紹介しようと思います.
私は二つのコードを作成しました.

一つ目は枠に色が付いた四角(□)を沢山描画し,地球ではない世界の世界地図を生成するものを制作しました.ノイズを使ってマップを生成しているのですが,そのノイズの中にリサージュ曲線の要素を入れると良い感じに入り江とかの複雑な地形が生成されるようになりました.
以下の画像は二つのパターンを動画で撮ってgif画像にしたものです.

制作作品1-1
制作作品1-2

二つ目は,魔法戦を再現したく,魔法陣と動き回る色が付いた玉を制作しました.玉にはリサージュ曲線を二重でかけて複雑な動きにしたり,玉同士が当たると弾ける演出を付けました.開発に使っていたノートPCではマシンスペックが足りず,これ以上リッチな表現にできなかったのが心残りです…
こちらも同じく画像は二つのパターンを動画で撮ってgif画像にしました.

制作作品2-1
制作作品2-2

感想戦

さて,ここまで約3700文字書いてきてようやく,感想です.
主に二つのテーマで語っていこうと思います!

頂いたコメントが嬉しかった話

三日目の発表の時,その発表を受けて頂いたコメントが嬉しかったです.
自己紹介の時,異世界やファンタジーの世界観を表現しようとしていると述べましたが,実はその世界観を人に見える形でアウトプットするのはこれが初めてでした.
アート表現も自分の世界観を表現するのも初めてだし,とにかく作りたいものを作ろう.というマインドで今回のハッカソンに臨んでいました.
しかしいざ発表してみると

"子供の頃に想像したファンタジーの世界のような印象を受けました"
"赤い点が街なのかなーみたいに想像が広がる"
"ちゃんとゲームマップになってるのすごい"

等の感想を頂きました.
まさか自分の表現したものが誤解なく伝わるとは思わず,とても嬉しかったです.
子供の頃に想像したファンタジーの世界というのはまさに今の僕の世界観のそれで,ライトノベルにハマったのもその想像に近いものが作品としてあったからだと思います.
上手く伝わったのが嬉しかったのはもちろん,何よりも”僕はちゃんと自分の世界観を表現できる”という自信になりました.
この体験は,必ず今後の活動の力になると思います.

別世界に居るような感覚

これが一番私がこのnoteを通して伝えたいことになります.
アカデミックなエンジニアの世界に居た私が,アートの世界へ足を踏み入れて感じたこと,です.

失敗も成功も,優劣も無い

一日目の企画の中であった,中山晃子さんが行われているAlive Paintingを体験できるイベントで特に強く感じました.
私が加えた一手は,私の中では上手くいかなかった一手でした.想定通りの挙動を得られなかった,やり直し.となるような感覚の一手でした.
しかしあろうことかそれを"良い"と言われ解釈まで広がっていたことに,不思議な,別世界に居るような感覚を覚えていました.

他にも,ハッカソン中に
(なんか納得いかないなあ…)
とできたものを眺めていた時に,横からフラっと講師の方がやってきて
「かっこいいですね!」
と声をかけていただいたりもしました.

私はこの三日間,自分がつくったものに対するネガティブ思考を肯定で上書きされる体験をしました.
振り返ってみると,このネガティブ思考は学校の課題や制作で,想定通り動くものを,求められるものを作ることが良しとされる世界に居たことで形成されたのかなと思います.

今まで何かものづくりをするとき,これ本当に必要か…?とか,完成度が低すぎる…とか色々考えてしまい自信を失うこと,失敗を極端に怖がることが多かったのですが,そんな過去も含めて打ち砕かれるような体験でした.

また,発表に対するコメントが批評ではなく感想や解釈だった,というのも大きかったです.

今まで僕が居たのはあくまで学校という無数にある評価軸のうちの一つであり,一歩外に出てみるとそこにあるのは批評ではなく解釈だった.

おそらく,このイベントの参加者はそれぞれ異なるバックボーンを抱えていて,本当に様々な人が集まっていたというのもあると思います.でもだからこそ,広くてフラットな世界でした.

今年度から学外活動が多くなった僕ですが,ここに来てようやく,学外活動を始めてから感じていたことを言語化できたように思います.

最後に

今回のイベントを通して,私のものづくりに対するマインドが大きく変わりました.

今まで私は,自分がつくりたいものと求められるものが上手く重なったものを作ろう,というマインドでした.どちらかを取るなら求められるものを作ろうとする傾向が強かったです.
しかし今は,とにかく作りたいものを作る!になりました.
自分の作りたいもの,表現したいものを優先する気持ちがとても強くなりました.

これは作りたいものを作ってちゃんと伝えたいことが伝わった,失敗したと思ってもそれは他の人から見たら失敗じゃなかった経験のおかげです.

他にもジェネラティブアートの歴史についての話やライブコーディングの話,デイリーコーディング体操の話などなど,この三日間に学んだこと・体験したことはまだまだあるのですが,あまりにも長くなるということで,今回はイベントに参加して強く影響を受けたことを中心にお話させていただきました.

最後になりますが,講師の方やYCAMのスタッフの方を始めとしたこのイベントに携わったすべての方々へ.
今回は本当に素晴らしいイベントを開催して頂きありがとうございました!
技術的にはもちろん,精神的に大きく成長することができました.
この経験を力に,今後も頑張っていこうと思います.

ありがとうございました!!!

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