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α9 IIIで小鳥の飛翔を撮影

2024年12月にソニーのフラッグシップ機、α1 IIが発売されたが、ほぼ時を同じくして3年8ヶ月使ってきたα9を手放した。
タイトルにもあるようにα9 IIIを購入するためである。
そして2週間ほど前にα9 IIIが手元にやってきた。


金額的にはフラッグシップ機であるα1 IIと大差はない。
α1 IIが価格ドットコムでみると89万円。
α9 IIIがソニーストアで79万円くらいだった。その差10万円……
ここまで高いと10万円は誤差だろう……

どちらにしても新旧α1はまったく欲しいとは思わなかった。
初代α1はチルト式モニターであること。
これだと縦位置のローアングルショットは諦めなければならないだろう。
2代目こそバリアングル、チルトを兼ねたモニターに変更されたが、5000万画素は必要ないと判断した。
ちなみにα9を購入した2021年3月もすでにα9 IIやα1は発売されていたが、金額的に安く買える初代α9を選んだ。
ソニーストアで新品購入だったが、その直後にソニーでの販売は終了された。

初代α9の短所と長所

実際に初代α9を使ってみて、いくつかの不満な部分がわかってきた。
①持ちづらいグリップ。現在併用しているα7 IVはグリップは随分改善されている。
②最速のSDカードを使っても時間のかかる連写後の書き込み。現在α7 IVを併用しているが、こちらはCFexpress Type Aのカードを使っているので、連写してもバッファフルとは無縁である。
③最新のマウントアダプターLA-EA5には完全対応していない。ミノルタ・ソニーのモーターの入っていないAマウントレンズはMFでの使用になる。

欠点ばかり書くのもかわいそうなので、使ってみて良いところも挙げてみる。
①Aマウント機とは別次元に感じるAF性能。買ってからしばらくはマウントアダプターでAマウントレンズを使っていたのでよくわからなかったが、200-600mmを購入してからはその快適さ、素早さ、トラッキングの便利さに圧倒された。
②ブラックアウトフリーのファインダー。
③バッテリーの持ちが良いこと。ちなみに同じバッテリーを使うα7 IVは体感でα9の2/3程度に悪化している。
④秒間20枚の連写。
なんだかんだといって、利点の方が多く、総じて良いカメラだったと思う。

α9。純正のグリップエクステンションを装着している。
ネットで売却する時に撮影したもの。
α9の写真はサヨナラする時のこれだけでした。

α9 III購入の動機

α9 IIIで魅力だったのは最高秒間120枚の連写。
初代α9と同じ使い慣れた2400万画素センサー。
CFexpressカードが使えること。
ソニー初のプリ撮影機能。
持ちやすそうなグリップ。
鳥認識機能とAIプロセッシングユニット。
グローバルシャッターについては初代α9のローリングシャッターでもまったく不満はなかったので、あまり気にしていない。

そしてお家にやってきました。

26年の時を隔てた9ナンバーが揃った。
両方ともミノルタAマウントの50mm単焦点をつけているのは密かなこだわり。
それにしてもコーティングが違うのか、中に入っているCMOSセンサーのせいか、レンズの色が違って見える。

1998年のミノルタα-9
2024年のソニーα9 III
親子のように歳が離れているが、両肩のダイヤルは一緒。
ミノルタのDNAが受け継がれているかというと、見た目くらいかな?
ただ、ミノルタAマウントのレンズはアダプターでしっかり使える。

初代α9と同じように野鳥を撮ってみた。

結論を先に書くと、
①AFは期待したほど凄いものではなかった。
②プリ撮影機能のおかげで飛び出しは驚くほど簡単に撮れるようになった。
③秒間120枚の連写は飛翔のわずかな羽の形の変化も捉えてくれるので、ベストショットを選びやすくなった。
④CFexpressカードのおかげで書き込み時間に気を使わず撮影できるようになった。
⑤発表当時にいわれていたノイズが出やすいという話は、実際にJPEGだと初代α9よりはノイズが多いのかもしれないが、RAWで撮影してノイズ処理をすれば特に問題なかった。

AF性能は初代α9よりも少し良い程度?

①のAF性能だが、小鳥の飛翔に関しては周囲に草や枝が入り込みやすいせいか、飛翔した瞬間はプリ撮影によって撮影できたとしても、AFポイントは鳥が止まっていた枝のままで、鳥に追随しないことが多い。
つまり、鳥が前後へ動くとピンボケになってしまう。
もちろん条件がよければAFが追従してくれることもあるが、10回のうち1〜2回くらいだと思う。
カワセミは割と小さい鳥で撮っている方も多いが、あちらは水面や遠く離れた向こう岸がバックになることが多く、森の小鳥とは条件がかなり違っていると思う。
AIプロセッシングユニットもどれほどの効果があるのか疑問である。
例えばこの写真。

JPEG撮って出しでノイズ処理はしていません。

鳥は丸見えだが、背景の色と似た鳥なので、AFポイントは鳥に合っているが、鳥認識はしていなかった。ただ正方形の緑の表示がEVF上に示されるだけである。
時々鳥に合わせて長方形で囲んだ緑色の枠が出ることもあるが、すぐに正方形の合焦の表示に戻ってしまう。
これが背景がもっとスッキリして、鳥とのコントラストが強ければ鳥認識すると思う。しかし、こちらとしては「これで鳥認識しないのか? 森の中での撮影はこんなのしょっちゅうだぞ」という感じである。
「いやいやAIなんだからこれくらい学習できるよね」と言いたいところだが、これが現実である。

この場合もカメラのピントは鳥が止まっていた枝のままになっている。
ただ真横に飛び出してくれたので、鳥にピントが合っている。
しかしこの後のカットからは鳥が後方へ飛んだため、だんだんとボケて行く写真になっている。
こちらもノイズ除去していません。

AIプロセッシングユニットなるものは、なにも障害物のない大空を飛び回るワシ、タカや水面を飛ぶカワセミ、ツバメなどにはいいのかもしれないが、雑然とした森の中だと難しいのかもしれない。
しかし、そもそも私はひどい枝被りであえて鳥にカメラを向けることはしない。
双眼鏡も使って極力体全体が見えるポジションに移動し、また飛んだ時のことを考えてある程度周りに飛び上がってもスペースがあるアングルになるように撮影している。
しかし、それでも認識率で言えば良く言っても半分以下である。
言うなれば「私のペースにカメラのAIが追いつかない」という感じ。
もちろん止まりものならこのままでも支障はないのだが、こちらは飛んでいる瞬間を狙っているのだ。

下の写真はコゲラの飛び出し。
これだけ大きく写っているが、飛び出す鳥にピントが食いついていかない例。

一枚目はまだ枝に足が触れている状態。コゲラのピントは問題なし。

2枚目(実際はこの間に4枚ほど画像がある)で完全に足が離れている状態。
一見綺麗に写っているように見えるかもしれないが、この時すでにコゲラのピントは甘くなっている。これ以降はまったくダメだったので撮ったその場所で消去した。
カメラは鳥ではなく、下の止まっていた枝に食いついたままである。
コゲラが枝にいるときは鳥認識がオンになっていたが、急な飛び出しにカメラ(レンズ)が追いつかないのか、飛び出しの羽ばたきで対象物の形が変わり、鳥認識が機能しなくなってしまったのか?
とにかくこれほど条件が良さそうな撮影でもバッチリ決まらないことが多いのである。

体感的に見通しの良い草原ならまったく認識率は変わってくると思う(昨夏にAIプロセッシングユニットの搭載されたα6700で体験済み)。こちらは抜けた背景が多いので使用感も良好だった。
また鳥認識していても、すぐ後ろにある枝にピントが持っていかれることも多く、鳥認識→枝→鳥認識→枝と目まぐるしく変わることも多い。こういった場面はα6700を使ったときよりも頻繁に遭遇する。
まだまだ改善の余地がありそうな気がする。
いやそれでないと困る。

次の写真は成功例。

鳥の下にある枝にとまっていた。
飛び出し直後はピントが甘くなったものもあったが、カメラは鳥を追ってくれた。
これは鳥認識でしっかり撮影できたパターン。

枝に止まっている状態で鳥認識し、飛んだ瞬間にシャッターを切った。
枝から飛び出して手前側へ飛んできたが、きちんとAFが追従してくれた。
この後の数十枚の画像もほぼピントが来ていた。
しかし、これくらいなら初代α9でも同じようなものは撮れていた。
だからこそ「AFは期待したほど凄いものではなかった」という文章に繋がる。
今は色々と設定を変えながら、最適な状態になるように模索している最中だ。

圧倒的に便利なプリ撮影

②のプリ撮影だが、これはあるのとないのではまったく結果が変わってくる。
鳥の飛び出しに関しては、これがないと撮れる回数は1/10以下になってしまうだろう。
とにかくα9、α7 IV、α6700と使ってきて、飛び出しの瞬間を撮るのには苦労した。
意外かもしれないが一番難しかったのはα9である。
プリ撮影機能がないので、ある程度飛び出しそうになったらシャッターを押して連写しながら飛ぶ瞬間を待つのだが、そんなことをしているうちにバッファが一杯になってしまって、連写速度が落ちた時に飛び出すということが多かった。
α7 IVは連写でバッファフルになることはないのだが、秒間10コマしか撮れないのでバッチリ決まった写真を得るのが難しかった。また機械式シャッターはガコガコ音がして無粋だし、鳥も驚きそうなので電子シャッターを使っていたが、飛ぶ方向によってはローリングシャッター歪みが大きく出てしまうことがあった。
α6700は連写によるバッファフルになることもあるが、回復が早いので比較的使いやすかった。電子シャッターによる歪みもα7 IVほどひどくないのでまだマシだった。しかし連写速度は秒間11コマなので、やはり少ない。
結局、痛し痒しでどれも決定打に欠けていたが、なんだかんだと飛び出しにはα9の出番が多かった。

現在ソニーのミラーレス機ではプリ撮影機能がついているのはα9 IIIとα1 IIのみである。
他社では何年も前からこの機能が実装されていたのだが、ソニーはようやくである。しかもハイエンド機ばかり。他社のようにミドル機やローエンド機にも入れて欲しい機能である。
ただ他社ではいくつか制限があるようで、ファイル形式はJPEGしか使えないなどあるようだ。
α9 IIIも何らかの制限があるのかもしれないが、とりあえずRAWで撮影できているので今のところ問題はない。
私は0.4秒の設定で使っている。

120枚/秒の高速連写はとても良い

③の秒間120枚の連写。
プリ撮影時にはこの設定にしているが、これのおかげで細かく変化する羽の状態が記録できている。
このなかから数枚のベストショットを残して、あとは消去している。
このまますべて画像を残していると、30分の撮影ですぐに5000枚、10000枚に達してしまう。
フラッグシップ機α1 IIは30枚/秒までの連写なので、この点だけでもα9 IIIで良かったと思える点である。

連写の例① 
編集せずにそのままJPEGにしているのでノイズが残っています。
設定は120枚/秒にしている。
ただしあまりに枚数が多いので、かなり省いている。

連写の例②

下の動画は秒間120枚の連写で撮影した88枚の画像を繋ぎ合わせて動画にしたもの。フレームアウトするまでしっかり鳥を追いかけてくれた。画像は日の出直後で暗いが、高速シャッターのため露出不足のまま撮影した。ISOは12800まで上がっている。

CFexpressカードで書き込み時間の短縮

④のCFexpress Type Aの採用で、書き込みが高速になり、ストレスから解放された。
もっとも秒間120枚の連写は持続時間が2秒未満である。さすがにこのペースで撮影してしまうとすぐにバッファフルになってしまうが、実際には飛び出しは一瞬で、次の瞬間にはフレームアウトしているので、連写の枚数は一度で50〜100枚くらいのことが多い。
しかも次の連写の時にはすでに書き込みが終わっていることがほとんどなので、連写速度が遅くなるといったことは今のところない。
CFexpress Type Aはソニーαしか採用しておらず、Type Bに対して割高なのが悩ましいが、最近は少しずつ値下がりして買いやすくなってきた。

心配していたノイズは杞憂だった

⑤画像のノイズの出やすさだが、確かに以前の機種と比べてノイズは強い感じがする。しかしRAWで撮影して現像時にノイズ除去をしているので気にすることはない。
80万円近くするボディにお金を出せる人なら、それなりの現像ソフトも持っているだろう。私もAdobe LightroomのAIノイズ除去があることを前提にこの機種を選んでいる。
ただJPEGで暗所撮影をするとおそらく他の機種に見劣りするのであろう。
最低感度はISO 250だがこのカメラは動体の一瞬を撮るための高速連写機という考えなので、ある程度速いシャッタースピードで撮ることが多く、結果ISOは上昇気味なので特に気にしていない。
所有している500mm F4 Gを絞り開放で使って、シャッタースピードを1/4000秒で明るい所で撮影しても大きく露出オーバーになることはないだろう。
もっと綺麗に写るカメラは他にたくさんあるので、必要な人はそれを使えばよく、ここに不満をいっても意味がない。
α9 IVではもっと画質が改善されると思うが、何年も先の話だろう。

その他にも改善点がいくつかあった

他に細かいところでは、ボタン類は初代α9よりも押しやすくなっていて、手袋をしていても使いやすくなった。
これはすでにα7 IVでも実感していたが、ハード、ソフトウェア関わらず最新モデルになるほど使い勝手は良くなっている。
例えば昨年夏に買ったα6700(2023年発売)でもそうだったが、撮影画像確認で連写ごとの再生時に、連写の1枚目が残したい画像で、それ以外を消去したい時が面倒だった。
仮に連写の2枚目のみを保存したい時はその画像をプロテクトし、それ以外の画像を一度に消去できるのだが、1枚目だけはその方法が使えなかった。
なぜそんな仕様なのかよくわからないが、とても不便だった。これはα9、α7 IV、α6700に共通していた。
それがα9 IIIではこの不具合(?)が解消されて使いやすくなった。

あとはISOオートで設定できる範囲がα9の頃はISO 400とか1600とか6400とか一段ごとしか設定できなかった。
これがα7 IVではISO 640や2000、8000などでも設定できるようになっていた。

グリップも改善していて、冬用の暑い防寒グローブをしていても何とか使えている。ただAマウントのα99のようなグリップならもっと持ちやすいのだが、大きくすることにソニーの技術者は抵抗があるのだろうか?
縦位置グリップ一体型にする必要はないと思うが、もうちょっと持ちやすさを考えて大きくしてもいいのではないだろうか?
初代α7から徐々に大きくなってきているが、この微妙な大きさの変化はいらないです。何ならα7 IIを出す時に今のα9 IIIの大きさにしても良かったんじゃないですか?

メモリーカードのフォーマットや画像の消去も以前より速くなっている。
特にα9でのフォーマットは時間がかかっていたが、α7 IVでは見違えるように時間がかからなくなった。

他にも細々したところが使いやすくなっている。
でもこれって、もっと早くなんとかならなかったの?
というより、ソニーは使う人のことをどれだけ考えて作っているのだろうか?
数十年に及ぶ一眼レフの歴史の重みのないソニーだから使いにくいのか?
とにかくソフトウェアで解決できることは後出しでもいいので、どんどん修正して欲しい。

なんだかんだとマイナス面も色々書いたが、総じて買って良かったと思っている。
野鳥撮影でこれまで一番酷使したのは6年ほどメインで使ったα99 IIだが、このα9 IIIもこれから長いつきあいになりそうだと思っている。

α9 IIIで撮った小鳥の飛翔写真

いずれもレンズはSEL200600G。

ヒヨドリ
鳥がかなり大きく撮れているので、この状態ならピントは鳥についていく。
早朝ということもあり少し暗い。
アカゲラ。
これは止まっていた右の木にピントが張り付いたまま。
ただ横への飛び出しなので、この後数枚はピントが来ていた。
ハシブトガラ。
こちらはこの後のコマも割とよくピントが合っていた。
ヤマガラがカメラ寄りに飛び出した。
意外とすっきり背景に見えるが、ピントが良かったのはこの数枚後まで。
バックの明るい背景に引っ張られたのか?
あとは徐々に甘くなったので没。
メジロ。
これはファインダーの端に行くまで割とピントが良好だった。
ヒヨドリ。
これだけコントラストがくっきりだとしっかり追いかけてくれます。
ヒヨドリ。
これは何とかヒヨドリにトラッキングが追いついたパターン。
光も十分でコントラストが高い状態では食いつきが良い。
シジュウカラ
こちらに向かってくるところ。
少し曇っていて、コントラストが弱いためか、この数枚後からはピントが甘くなり没に。
シジュウカラ。
ツグミ
同じくツグミ。
真横の飛び出しなので問題なし。

野鳥写真といえば総じて羽を閉じて止まっているものが多いが、空を飛べる鳥ならではの動きのある瞬間を残したいものだ。
羽を広げた瞬間を写真に残し、尾羽の数を数えたりしている。
鳥によって枚数に違いがあるのか?
鳥類で共通なのか?
こんなことは図鑑的な写真では気にすることもなかったが、新たな鳥の見方ができてとても楽しく感じている。

まだ使い始めて日も浅いので、いずれ使い込んだ頃に新たに感想を書いてみたい。

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