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ノゴマの観察記録

今年は例年になくノゴマが多い気がする。
局地的なのか、北海道全体なのかはわからないが、草原の探鳥地ではいくつものつがいが確認できた。


足環君がお出迎え

5月中旬、今年最初に見たノゴマは足環付き

ゴールデンウィークを過ぎると近所の森林公園の渡りの鳥たちが一段落する。

今年は5月中旬に初めて草原へ行ってみた。
囀りながら迎えてくれたのは3つの足環のついたノゴマだった。
しきりにメスを呼んでいるのか、観察中も飽きるほど囀っていた。

営巣始まる

で、下の写真。1ヶ月ちょっとあいてしまった。

6月中旬
営巣中のオス
メスの姿はなかったが、ここを離れなかった
おそらくこの近くに巣がありメスが抱卵しているのではないかと考えた

この期間は近所の森林公園ともう一つの草地ばかりでこちらには足を向けなかった。
久しぶりのこの日は2ヶ所でノゴマの営巣を確認した。
1ヶ所は抱卵中。
もう1ヶ所は孵化して、雛に餌を与える段階に入っていた。
二つの巣のうち、雛が孵った方がちょっと心配な場所に巣を作ってしまっていた。

駐車場の横にいたオス

これが問題の巣を作ったノゴマのつがい。とりあえず「つがいA」とする。
オスの方。
このつがい、公園の駐車場のすぐ横の繁みに巣を作ってしまった。
これはみんな気づくだろう。
観察しやすいが……

餌を咥えるメス
この枝の下に巣がある

こちらが件のつがいのメス。
ノドの赤がはっきりしていて綺麗だ。
大抵の図鑑ではノドの白いメスが載っているが、この個体は赤が割とはっきりしている。
この1羽だけだとオスのノゴマと勘違いしてしまいそうだが、近くに餌を咥えたオスがいるのでちゃんとメスだと認識できる。

で、このノゴマのつがいが数メートルの距離でも逃げずに撮れてしまう。
なぜかというと、この枝の真下に巣があるからだ。
孵化したようで、オスメスともせっせと餌を雛に運んでいるが、大丈夫だろうかと心配しながらちょっとだけ撮らせてもらってその場を離れた。
この写真は午前4時11分だ。
この時は駐車場の車も自分のが1台だけ、他に誰もいなかったが…

その後、公園内を2時間ほど観察、撮影して車に戻ってみると、この巣の前に三脚を置いたカメラマンが3人。
たぶん自分よりもずっと年上。
時間は朝6時過ぎ。
しかも椅子を置いて長期戦の構えらしい。
ここは駐車場だし、巣の数メートル手前で三脚置いて、そんな事したら親鳥が警戒して餌やらなくなるんじゃ…
撮影のマナーも、野鳥に対する思いやりも何にもない。
すでにこの巣の事はかなりの人に知れ渡ってしまった様だ。
いくら撮りやすいからって「いやいやそれはだめでしょ」と心の中で思ったが、見ず知らずの人に言ってトラブルになるのも嫌なので、ノゴマには悪いがそのままこの場を後にした。

日曜日で好天だったのでこの後も続々張り付いた人がいたのではないだろうか?

巣はどうなったのか?

6月下旬
バックのピンクはハマナスの花
どうやら駐車場横の巣は終わってしまった様だ
巣立ったのか放棄なのか詳しくはわからないが…

で、上の写真は1週間後になる。
例の巣の近くにいたオス。
この1週間の間もチェックしていたが、自分の見る限りは、餌をやっているところは見ていない。
今日は、あのつがいは? 雛はどうなったのか?
時間的に巣立っているかもしれないとあたりを見てみたが、どこにもいない。
おそらく数日は巣立っても巣の近くで餌をもらっているんじゃないかと想像していたが、姿はなかった。
では、まだ巣立ち前なのかと思って離れたところで待ってみたが、餌を持ってくる様子はない。

どうやら近くにオスが鳴いているが、これがつがいの片われなのか、別の個体なのかはわからなかった。
鳴き声は囀りだったが、何処となく悲しそうに聞こえたのは私の先入観の所為である。

双眼鏡で見ると、離れたところにノドの赤いメスも見えたが、さっぱり餌を与える仕草は見えない。

野鳥の本ではノゴマではないが同じ草原性の小鳥で、孵化した雛が3〜5体いて、1日の観察中に餌やりが100〜200回と書いてあった。
そのくらい親鳥が世話をしないと育たないのだ。
しかも雛はだんだん成長し、日に日に餌の量も増える筈である。
それがカメラマンが張り付いて、単純に餌の回数が半減したら、雛は死んでしまうのではないだろうか?
すると親鳥にとってその巣はもう用無しである。

自分の感じとしては巣を放棄してしまったんじゃないかという見解なのだが、はっきりしたことは解らない。
三脚で撮影していたカメラマンはそんな知識すらないのかもしれなし、その後の巣の経過なども知ったことではないのかもしれない。
鳥が好きで写真を撮っているのだったらもう少し配慮してもいいのではないかと思う。
もしかすると、単なる被写体の一つとしてただ鳥を撮っているだけかもしれない。
しかし、そんな無知が野鳥を追い詰めていると思うと残念な事だ。
特に年配の方にこの様な周りが見えなくなるカメラマンが多いように思われる。
というより、野鳥カメラマンは自分より年配者がほとんどだが。

張り付いていた撮影者に対しては憤りしかない。

メスの巣作りを確認

さて、気分を変えて次のノゴマちゃんに行こう。

ちょっと離れた所にもう1羽ノドの赤いメスがいた

とりあえずいつも通り園内をチェックしてみると、ノドの赤いメスがいた(上の写真)。
件の巣を放棄して、100メートルほど離れたところに避難してきたのかと思って見ているとなんと巣作り中だった。
このつがいをここでは「つがいB」とする。

枯れ草をこれでもかと咥えて来た

枯れ草をどんどん咥えて戻ってくる。
後で画像を見てみると、どうやら件の巣のメスとは違う個体のようだった。
そうか、今から巣作りかと場所だけ確認してその場を離れた。

ちなみにノゴマの場合は巣作りはメスが担当する様だ。
おそらく抱卵もメスの担当なのだろう。
これまでの観察だとカワラヒワ、ベニマシコ、ノビタキはメスが作って、オスは警備担当らしい。
この手のことはハンディタイプの野鳥図鑑では書いておらず、はっきりしたことは言えないので悪しからず。
意外と多くの鳥がメスが巣を作っているのかもしれない。
やっぱり卵を産む場所なので、自分の好みに仕上げたいのだろうか?

北海道の草原の定番、ホオアカやコヨシキリは雌雄の区別がつかないが、これらの種も同じなのかもしれない。

数万円する分厚い野鳥図鑑なら書いてあるのかなぁ?

次の写真は10日後。

巣作りしていたつがいBのメスのノゴマちゃん

どうやら巣作りも完了し、現在は抱卵中の様だ。ただずっと卵を抱いているわけにもいかない。やはり食べないと生きていけないわけで、巣からチョロっと出てきて食べ物を探しに出かけて行った。
たぶん数分から10分程度で戻って来ると思うのだが、帰って来るのは確認しなかった。
でも、メスが出ていくと何処にいたのかオスがすかさず巣の近くにやって来た。

つがいBのオスは足環君だった

さすが警備担当のオスだなーと感心して双眼鏡で見ていると、足に特徴があったので写真におさめた。
何と例の足環君だった。
うまくやっているようである。

7月中旬になった。
どうやら雛が孵ったようだ。
ただ、まだ羽が揃っていない時期なので、メスは巣に入って暖めているのだと思う。餌の頻度はそれほど多くない。

足環君
虫を咥えている

オスの足環君が虫を咥えて持ってきたが、メスが巣の中にいるので近くで待機している。
メスが出てくると巣に入って餌を与えているが、距離があるためか雛の声はまったく聞こえない。

ノド赤のメス
クモのようなものを咥えている

メスも虫を咥えてくる。
一度巣に入ると、メスはしばらく出てこない。
おそらく、まだしばらくは雛を暖めてあげる時間が必要な様だ。

別のオス
足環君の縄張りに入ってきた

上の写真は別のノゴマのオス。
足環君のテリトリーに侵入してきた。
どうするのかと見ていると、やはり足環君が猛スピードで飛んできて、このオスを追い払っていた。

何を食べてる?

さて、次はすでに雛が孵っているノゴマのつがいだ。
ここでは「つがいC」とする。

公園内の別のつがいCのオス

園内のもう1ヶ所では別のつがいが巣にいる雛に虫を持っていっている。
6月中旬に確認していた巣だ。

いそいそと虫を捕ってくるオス

孵化した様で、こちらもオスメスが忙しそうに虫を咥えてくる。
咥えているのはミールワームやワラジムシだろうか? バッタみたいのや、クモだかザトウムシの様な足の長い物を咥えていることもある。
ノゴマは地面をとことこと歩く。
スズメやカラ類はぴょんぴょん跳ねて移動するが、ノゴマはコマドリやコルリと同じくスタスタと歩きながら餌を探している。
だからなのか、餌も地面で捕れる虫が多い。
ノビタキなどはイモムシや毛虫を食べているのを見ることがあるが、ノゴマは木や草にいる虫よりも、ミールワームなどを好む様だ。

こちらのつがいは多くの人には知れ渡っていない事を願う。でも通路のすぐ横なので、見る人が見ればわかっちゃうな。

虫を咥えたメス

こちらのメスはノドの白い一般的な個体。
抱卵が終わったら今度は餌運び。ご苦労である。
やはり雛がいるので神経質だったが、ちょっとだけ撮らせてもらった。

脚の長いのを咥えているメス
なんだろう?

メスは用心深い

どの鳥もだいたいそうだがメスは用心深い。オスはあまり気にせず餌をあげに来るが、メスは同じ場所で待っていても途中で巣に近付かなくなる。するとオスが私の近くに来て地鳴きをする。目立つノドの赤を見せて、巣から引き離そうと私を誘導する様に少しずつ移動する。これがオスの重要な役割で、何かあったらオレに任せろとメスを安心させている様だ。こちらが距離をとるとメスはちゃんと餌をあげているので、それを確認してその場を離れた。

その後、無事巣から雛が出た様だ。
雛の姿はわからないが、餌をやる場所がまちまちで、雛は地上で親鳥を待っているみたいだ。
ただ草むらの中でまったく姿が確認できていない。
もう少し成長して草の上に出てくれればいいのだが、今のままでは影さえとらえることができない。

写真にはないが園内にはもう1ヶ所ノゴマの巣を確認している。
とにかくこんなにノゴマが多いのは初めてである。
件の巣も入れると4ヶ所は確認できたが、時間をかければもっと見つかりそうだ。

ノド赤のメス三度目

またまたノドの赤いメス
今までのとは別の場所

上の写真はまったく別のところで営巣中のメス。
この個体は今までよりも控えめだがちゃんと赤がある。
この場所は4年ぶりくらいに訪れた。
なんとこれで今年はノドの赤いメスを3個体確認したことになる。

上のつがいのオス

足環君がいっぱい

さて、5月中旬、今年最初に確認した足環のついているノゴマだが、それっきり見ることがなかったが、7月上旬に再会できたこと、ノド赤のメスとつがいになっているのは先に書いた通り。

2ヶ月弱で再会できた足環ノゴマ

ここは通路から数十メートル離れているので、これまで気付かなかったのかもしれない。

次に下の写真。

同じ園内だがかなり離れた所に別の足環君がいた
この子は黒い足環を付けている

最初の足環君とは距離でいうと700〜800メートル程離れた所で発見した。

上の写真を拡大
右足に二つの黒足環

片足に黒い足環が2つの子だった。
囀っているのでひょっとしてメスが近くで抱卵中かもしれない。

さらにもう一羽の足環君がいた。

もう一羽の足環君

黒足環君のすぐ近くで囀っていた。
双眼鏡で見ると足が赤いので写真を撮っておいた。
見ると赤い足環が付いていた。
写真では片足しか見えないが、双眼鏡では両方とも赤が付いていた様だった。
この赤足環君は囀っていたものの、落ち着きがない様子だったのでパートナーがいるかは不明。
ひょっとしたら募集中なのかもしれない。

ちなみに足環の鳥はノゴマだけではない。
私がこのエリアで確認したのでは、
コヨシキリ4体
ホオアカ2体
ノビタキ2体
アカモズ1体
という感じで大盛況である。
おそらく前年かその前の年にでもここで標識調査のための捕獲、放鳥がされたためだろう。
ノビタキの1体に関してはこの間、山階鳥類研究所に番号を報告し、この地での前年7月上旬の放鳥が確認できた。
ノビタキ以外はカラーの足環のみで番号等は無い様だ。
おそらくカラーの組み合わせで個体が特定出来る仕組みなのだろう。

ノビタキ以外の鳥は面倒なので報告していないが、これだけ目撃しているので、誰かがしているだろう。
というのは希望的観測だが、撮影マナーが残念な人たちが足環を撮っても報告するとは思えないな。


下の写真は最初の足環君のすぐ近くで囀っていたオス。

足環君の横にも別のオス

下にピンクの花が咲いていたので、縦構図で添えてみた。このピンクの花はカワラナデシコ。
このオスの足元にも巣があるのかもしれないが、きりがないので確認していない。

とにかく今年はノゴマが多い。

幼鳥(若鳥)発見

6月中旬から本格的な観察を始めて1ヶ月ちょっと経過した。
一番期待していたつがいCは巣から雛が出ていることは分かっていたが、幼鳥の姿は確認できなかった。
この場所は高さ50センチメートルほどの雑木が繁り、その間に雑草やハマナスが隙間なく生えているので、なんとなく親鳥の行動から場所は推定できても入っていくことができない場所だった。
で、そろそろ親離れになろうかという時期なので重点的にチェックしていたが、雑木の枝に黒い影が見えたので双眼鏡で確認すると、ノゴマの幼鳥だった。

ぱっと見た感じはヒタキ科の幼鳥とわかる
この場所が森林に近かったら、何の幼鳥か迷ってしまうかもしれない

どことなくノビタキの幼鳥を黒っぽくした感じに見える。
でもすらっとした脚はノゴマそのものだ。

伸びあがるといっそうノゴマらしくみえる

足の色がピンクっぽいのも特徴。
とりあえず2羽確認できたが、3羽いたのかもしれない。
いずれも無事に育ってほしい。
ここにはまだオスメスとも滞在しているが、この時は給餌の確認はできなかった。
でも、親が同じ繁みから飛び出したので、まだ給餌しているのではないかと思っている。

同じ場所にいたノビタキの幼鳥
体色も違うし、足は黒褐色

上の写真は参考のノビタキの幼鳥。
同じ時間に同じ場所に居た。
この子は巣立ち後まもない様で、まだ頭に産毛があり尾羽がとても短い。
でも元気よく飛んでいた。


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