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MSCHF- いたずらという名の社会批評

MSCHFというグループ、コレクティブを知っていますか?彼らの名前は知らずともこのJesus shoesは見たことある方が多いかもしれません。

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靴底にヨルダン川の聖水を入れたこのスニーカーは$1,425(日本円で約15万円)で販売され完売した今ではその倍以上の価格で取引されているそう。ヨルダン川というのはイエス=キリストが洗礼者ヨハネに洗礼を受けた場所として伝えられており、つまりキリスト(Jesus)×Nikeというコラボスニーカーだといえます。これは最近のやたらめったらに有名人とコラボして商品を売り出してるシューズブランドを揶揄した「いたずら」ということです。こういう社会や現代に漠然とある違和感に対して、皮肉を込めたクールな作品で批評を行うのがMSCHFというグループです。

ミームから作品へ

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MSCHFの「いたずら」にある大きな特徴の一つがインターネットや現実にあるMeme(ミーム)からインスパイアされた作品です。例えばこのバスボムはいわゆるToaster Bathbombのミームから引用されていることがわかります、しかし興味深い点はそれ以外の直接的に関係しないように感じる現象も取り上げてコンセプトにまとめているところです。

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MSCHFのHPからは背景となるリサーチのpdfがダウンロードできます、例えばこのバスボムであれば1:社会への不安、2:セルフケア、3:SNSでのパフォーマンス、4:理想と現実のサイクルが背景となっていて、そこでバスボムという存在の役割やToaster bathbombのミームへの分析が行われています。その中で過剰になる環境保護や若い世代(zoomer)の行動への批評も含まれています。このコンセプトペーパーの最後は現在の過激な世代や思想の分断それに関連しているような行動(例えば若年層の自殺)などを批判し笑いを用いることで問題を扱いやすくするという提案で締められています。

Expressions of devotion in text based media (i.e. on Twitter, or in comments on image-based platforms) verge upon self-flagellation. “Run me over with a truck, daddy!” an expression of mere admiration. As the threshold to feel rises ever higher we must turn to hyperbolic invocations of harm in order to effectively praise. When you laugh at your pain it makes it easier. 

"If you laugh at your pain it makes it easier to deal with sucky feelings and
stuff," - Anxiety & Depression Memes Facebook Page

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こういったジャストアイディアに見えてかなり社会背景を意識したアプローチが彼らの作品に引き付けられる理由なのかもしれません。


その他の作品

職場で隠れてネットフリックスをみるためのChromeプラグイン

タバコを吸えるあのうるさいチキンのおもちゃ

一番新しい作品は犬の鳴き声を悪口に翻訳するマシン笑


強いてジャンルで括るならばメディアアートと言えるような作品群ですがその中にあるユーモアや社会批評性はかなりデザインの文脈を持っているのではないかなとも感じます。そしてこの人たちの本当に凄いところは実装して市場投入までしてしまうところです、いわゆるデザインリサーチのアウトプットは論文であったり展示であったり、もしくは社会実装したものでもコンサバティブな印象があるのですがここまでポップに社会批評を落とし込んでいるところが非常に参考になるなと思いました。冗談か真面目かわからない部分やポップさと社会批評の両立という部分では60-70年代イタリアのポストモダニズムのようにも捉えられるかもしれません。


参考ページ:


公式サイト:

画像も全てこれらのサイトから引用したものです。

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