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これからの企業のあり方 - ゼブラ企業 Savvy Cooperationの例

企業のあり方への意識の変化

これまで世界経済は急速に発展してきました。投資を行いビジネスを成長させる、経済は常に、またある意味急速に成長し続けることを前提としてきました。しかしながら、今回のコロナショックはこれまでの経済や社会のあり方を見直すことを迫られているような気もします。

コロナは企業に社員の生命、生活を重視する必要性を求めており、社員の働き方や社員やその家族の健康への配慮がより一層求められます。先日読んだ日本経済新聞の記事で日本電産の永守氏が利益を追求するだけでなく、自然と共存する考え方に変えるべきだといった内容のコメントをしていたことは印象的でした。

今後さまざまなステークホルダーを重要視する考え方が広まる中、法人のあり方も目的に合わせてさまざまな形態が取られていくのではないかと思います。企業の目的によって変わる物の一つに法人格があります。事業を始めようとする人にとっても悩むポイントの一つですが、今回はその法人格について少し考えてみたいと思います。

法人の目的

誰のためにどんな目的で設立するのかによって適した法人格があります。代表的なものを下記にあげてみました。
株式会社:
株主が出資比率に応じて議決権を持ち、原則として利益分配も出資比率に応じてなされる。
合同会社:
経営者が株主となり、議決権、利益分配は出資比率に関係なく定めることが可能。
一般社団法人:
原則として一人一票を持つ会員が議決権を持ち(別途定めることは可能)、利益分配できず事業の再投資に回される。
特定非営利活動法人(NPO):
市民のための活動を行う団体であり、原則として誰でも会員になることが可能。一人一票を持つ会員が議決権を持ち、利益分配できず事業の再投資に回される。
組合:
一人一票を持つ組合員が議決権を持ち、事業活動は組合員のために行われる。一定の制限のもと、利益分配が可能。

Savvy Cooperationの例

Zebras UniteのメンバーにアメリカNYCをベースとするSavvy Cooperativeという法人があります。先月アメリカのゼブラ企業の例としてZebras UniteのHeadquarterから紹介してもらい、創業者のJen Horonjeffとzoomで話しました。Jenは、幼少期に若年性突発性関節炎と診断され、それ以降自己免疫疾患に悩まされ、7年前には脳腫瘍を取り除く手術も行いました。そういった背景もありコロンビア大学などで医療に従事していましたが、薬が作られる過程において十分に多様性を持った患者のニーズが汲み取られておらず、また患者の持つ貴重な経験や情報に適切な価値付けがされていないとの問題意識を持ち、2016年にSavvy Co-opを立ち上げました。Savvy Co-opはオンラインプラットフォームを作り、製薬会社や医療機関がヒアリングやサーベイを行うための患者とのマッチングの機会を提供しています。また、その際の価値付けに際してのコンサルティングサービスなども行なっています。

Savvy Co-opは事業としてもユニークな事業ですが、もう一つ特徴的なのはその法人形態にあります。Jenは患者のための事業をつくりたいと考えていたので、患者が議決権を持つ組合形式で法人を設立しました(アメリカではPlatform Co-opと呼ばれたりします)。

元々、外部資金はほぼ入れずブートストラップでやってきましたが、その後ビジネスが拡大し需要が増えるにつれ、Jenは資金調達の必要を感じていました。そこで、Co-opメンバーからの賛同を得て投資家を迎え入れることを決定しました。従来のCo-opとは違った米国初となる新たなCo-opの形をつくり、法人のオーナーを患者、従業員、創業者、株主 4つのクラスに分けました。これによって、一部の株主ではなくステークホルダー全員が経営に参加できる形を実現しました。

これからの企業のあり方

私は過去に従業員が大株主となっている企業に債権者として関わったことがあります。その企業はブラジルに本社を置く多国籍企業でしたが、経営が傾き倒産の危機をむかえていました。凄腕の経営者をアメリカから迎え、リストラを含めた経営再建を始めましたが、従業員を解雇したことによる反発から株主である従業員から経営者はクビにされてしまいました。この話については別途詳細を書く機会があればと思いますが、このように、オーナー、経営、従業員など違った立場にいる人が兼任することは事業が上手くいっている場合は良いですが、危機に面した際の意思決定などには考慮する必要があります。Savvy Co-opもこれからそう言った局面を迎える日があるかもしれません。

先月Savvy Co-opは米国のベンチャーキャピタルから資金調達を行いました。日本でもNPOや社団法人などの形式をとる起業家や彼らに資金提供する投資家が現れてきていますが、このように、世界でも従来の株式会社という形だけでない新たな法人を創る起業家が増えてきています。

コロナショックによって急速な経済成長を目指してきた社会が一時的に停止した中、ステークホルダーを重視した事業という考え方はより加速される気がしています。アメリカやイギリスにもCertified B CorporationやCommunity Interest Companyと呼ばれる法人形態が現れてきています。株式会社には株式会社の利点がありますが、一方で、企業のあり方の再考を求められるこれからの時代にはより多様な法人形態を志向する起業家も現れてくるのではないでしょうか。

田淵 良敬(共同創設者/Co-Lead, Tokyo Zebras Unite

Tokyo Zebras Unite Webページ・連絡先
https://www.zebrasunite.com/tokyo
https://www.facebook.com/tokyozebrasunite/
hello.tokyo@zebrasunite.com

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