コロナ危機の今だからこそ考えたい「会社の目的」:ゼブラ企業
コロナウイルスによって、社会が未曾有の混乱に陥っています。
一人一人の生活・勤務スタイルも変わり、事業継続・資金の確保に奔走している経営者も多くいます。
一方、こうした有事は、これまでの「常識」を省みる貴重な機会でもあります。
こんな最中だからこそ、とある経営者の発言を契機として
「会社とは何のためにあるのか」
「会社の存在目的とは何なのか」
といった問いについて考えてみたいと思います。
成長・利益を目的とした経営
1月のTokyo Zebras Uniteのイベントで、ある経営者から、こんな意見をいただきました。
最近、上場が目的だと公言している経営者がいたり、資金調達の有無、金額や時価総額の大きさ、利益・売上の多寡だけで競争して、マウントをとる起業家が多いと感じています。
資金調達をして、華々しくプレスリリースを出し、社員をどんどん増やす。綺麗なオフィスを整備し、SNSで楽しそうな写真をあげていく。
そういう企業を見ていると、自分は違うところを目指しているとわかっていても、本当に今のままでいいのかと自問することがありました。
また、そういった他社の動きが気になる経営陣や社員がいることも理解していました。
今日の勉強会に参加して、そうした「成長を目的とした経営」とは異なる経営の在り方を学びました。
自分たちが目指す企業・経営の形を、ゼブラ企業という言葉を通じて概念化することで、今後のマネジメントに役立ちそうです。
「会社の目的は金を稼ぐこと、利益を上げることである」
「利益の最大化が会社の目的である」
ひと昔前までは、それが常識だったのでしょう。今でもそう言っている人は多くいます。
(会社法105条など、法律的には、今でも、会社は「営利を目的とする」ことを前提とした体系になっています)
最近の経営者の中では、資金調達の有無、金額の大きさ、時価総額でもって優劣を競っている人もいるようです。
いずれも、自分は大いに違和感を覚えます。
売上や利益を何のためにあるのか
もちろん、売上や利益を上げることが悪いと言っているのではありません。
売上や利益は前提・手段であって、目的ではないということです。
多くの事業では、その目的・目標の達成のためには、売上をあげないと活動原資がありません。
そして、事業を続けていくために、もしくは今回のような非常事態があったときでも活動が続けていけるように、利益を確保して、一定の資金を貯めながら活動することが必要となります。
そういった意味で、「売上や利益は事業の前提」です。
一方、逆説的に言えば、売上や利益なしで目的が達成できるのであれば、売上や利益は不要です。
たとえば、自分たちの事業に必要な物資・人員が、十分な寄贈とボランティアでまかなわれ、売上なしでもその活動が成り立つのであれば、売上は不要です。
また、売上に応じて活動することを旨とする会社であれば(貯蓄・投資をする必要がないので)、利益を出す必要もないでしょう。
資金調達の必要性を本当に突き詰めているか
同様に、資金調達も、手段であって、目的ではありません。
その事業・活動において、資金調達が必要だから資金調達を行うのであって、必要もないのに資金調達を行うことは愚の骨頂です。
(個人的には、本来必要のない資金調達が大量になされている一方、「この事業は資金調達して拡大を目指した方が(社会にとって)良いのに」と思うことが多々あります。
資金調達が必須となるような事業領域やビジネスモデルはたしかにあります。
しかし、資金調達には制約条件が付きものであり、そうした事業領域やビジネスモデルはであっても、メリット/デメリットを十分に勘案することが必要です)
変わり続ける会社の目的
「経済成長することが、皆の共通した目標である」、「経済成長して、売上・利益が伸びて、GDPが伸びれば、みなが幸せになる」という時代では、
会社の目的は、「金を稼ぐこと、利益を上げること」であり、「利益の最大化」が会社の目的だったのでしょう。
(今でも、そういう信条を抱いている人がいますし、世代的な特徴もあるかなと思います)
ただし、これからの日本においては、個々人の生き方が多様化しているのと同様、
個々の会社が、それぞれ、「なぜ自社が存在しているのか」を問うことが必要ではないでしょうか。
(「利益を稼ぐこと」が会社の目的であることを前提にしている今の法制度も見直す必要が出てくるでしょう)
当然、個々人でも法人でも、生きていく/存続していくうちに、その目的は変わっていきます。
私自身も経産省にいた6年前、前職(ベンチャーキャピタル)に勤めていた2年前と今とでは、世界観がかなり変わり、自分が担うべき役割の認識も変わりました。
同じように法人も設立した時と数年後では、担うべき役割や存在する目的は変わっていくと思います。
ただし、(「利益をあげることが目的」といった思考停止に陥らず、)
その瞬間、その瞬間で、「なぜ、その企業が存在するのか」という目的を問い続けることは、
経営者や株主含め、その会社に関わる人とのコミュニケーションを円滑にするという意味でも有意義です。
ゼブラ企業(Zebras)とは
前回の記事において、
「ゼブラ企業」とは、自社の成長や利益を第一の優先順位とするのではなく、
より良い社会の形成に寄与することを第一とし、持続可能な範囲での成長を追求している企業の総称
と述べました。
「より良い社会の形成に寄与すること」を会社存在の目的とすること。
どういう目的を持ち、どういう社会を作りたいのか、どのような影響を周りに与えたいるのかをより具体的に言語化し、
社員、株主や取引先、顧客などのステークホルダーに対して伝えていくことがゼブラ企業の要件です。
また、そこから導き出される必然的な結論として、
「会社は株主のもの(所有物)であり、株主価値の最大化が会社の存在目的である」という「株主至上主義」を捨て、
多様なステークホルダーへの貢献を重視としていることもゼブラ企業の特徴の一つです。
もちろん、売上、利益を追ってはいけない、目標を掲げていけないわけではありませんが、
それらを目的にしてはいけない、(制約条件ではあっても)最重要事項ではないということです。
先日の経営者の言葉を聞いて、「ゼブラ企業」という概念自体、こうした経営者を励まし、繋がり合い、そして広めていくために生まれてきたのだと実感しました。
そして、こうした有事の際にこそ、立ち止まって、これまでの常識を省みてみることが必要なのだと実感しています。
引き続き、Tokyo Zebras Uniteでは、ゼブラ企業の創業・成長支援の方法論を模索しています。
1. 投資や協業の機会の創出
2. 知見の交換
3. Zebras Uniteや世界のゼブラ企業に関係するナレッジの共有
といった活動を行なっていきますので、
ご関心をお持ち頂けた方は、ぜひ、ご連絡ください。
(文責:陶山 祐司(Tokyo Zebras Unite Co-Leader))
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Tokyo Zebras Unite Webページ・連絡先
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