建物高さ日本一!TOKYO TORCH!図面に込めた「想い」を語ります。
0.はじめに+私たちのこと
初めまして。三菱地所設計のTOKYO TORCH設計室です。
私たちは、2027年度に東京駅のすぐ北側に完成を目指しているプロジェクト・TOKYO TORCH の設計を行っているチームです。
初めての投稿となる今回は、チームメンバーの大迫がチームの紹介とともに、なぜnoteを始めたのか、どんなことをここで語っていくのかを書いてみます。
超超高層・複合機能建築であるこのプロジェクトを設計する私たちが、日々葛藤し、悩みながら、どのような「想い」を未来の街に描こうとしているのか……。現在進行形のプロジェクトを設計者自身の言葉で語るプロジェクトストーリーです。
マスタープラン、デザイン、ランドスケープ、エンジニアリング、コンストラクションなど、多様な視点から、これまでに積み上げてきたもの、まさにこの瞬間立ち上がっていく姿、その先の未来に込めた「想い」について語っていきたいと思います。
1.TOKYO TORCHプロジェクトとは?
TOKYO TORCHプロジェクトの敷地は、東京駅のすぐ北側、大手町二丁目常盤橋地区。その内容は、A・B・C・D棟の4つの建物と、その周囲に連続する広場や公園の整備など多岐にわたります。
A棟は「常盤橋タワー」(2021年)として完成し、D棟も間もなく「下水道局棟」として完成予定です。残るは7,000㎡の公園空間(「TOKYO TORCH Park」)を含むC棟と、日本一の高さを予定しているB棟(Torch Tower)。ともに2027年度に竣工を予定しています。
「超超高層・複合機能建築」と呼んだように、複雑で前例のないプロジェクトなので、技能を補完し合い、経験を共有するために「次世代デザインチーム」として、コアアーキテクト・デザイナー=三菱地所設計、デザインアドバイザー=藤本壮介建築設計事務所(Torch Tower頂部)、永山祐子建築設計(同低層部)、Fd Landscape(広場)の体制を組み、設計に臨んでいます。
2. 図面に込めた「想い」を語ります。
私たちの仕事は「絵を描くこと」、つまり建物を建てるための「設計図を描くこと」です。そんな私たちが言葉で書き連ねていきたいことは、
建物が建ち出でるまでの試行錯誤と、図面に込めた「想い」です。
私たちの成果品、集大成である「設計図」は形 や素材、構成などを、迷いなくきれいに引かれた「線」の集合で表現します。
でも実は、その線を引くまでに私たちはいろいろな検討を行います。空間の模型をつくったり、スケッチを描いてみたり、イメージをレンダリングしたり、シミュレーション解析をしてみたり……。ひとつの案だけでなく、いくつもの案を試します(ちなみに、B棟の外装では50案はくだらない数のデザインを検討しました)。
それだけの数があるので、最終案に絞る途中では、幾多の「迷い」や「悩み」などが生まれます。そのような「想い」 を研ぎ澄ませ、濃縮させてひとつの線にまとめていくのが、設計の仕事です。
noteを通じてみなさんにお伝えしたいと思っているのは、その過程で私たちが考えたこと、悩んだこと、「図面」には現れなかった、線と線の間にかくれている言葉たちです。
すべての建物には、その建物を設計した設計者がいます。その建物がそのカタチに立ち上がるまでに至る、多くの人の手による数々のストーリーがあります。
大規模かつ複雑なこのプロジェクトともなればなおさら。
私たちのプロジェクトストーリーから、TOKYO TORCHの、そして建築の設計の面白さ、仕事としての素敵さを知っていただきたいと思っています。
図面に込めた「想い」を語ります。
3.noteに書くもの
アイデアや考えが図面のカタチへと落とし込まれる間際に立ち消えていく、普段は日の目を見ない「想い」にはさまざまなものがあります。
消えていったアイデアへの「想い」
これはよいのでは?と思ったアイデアから、まずは案をつくってみます。これを囲んで、みんなで喧々諤々、議論を交わし、吟味していきます。ただ、実際に建てられるものはひとつ。この過程で、個人的にはいいと思っていた案を泣く泣くボツにすることもあります。
しかし、こうした案は、ただ消えてしまうだけではありません。決定案の中にその一部が盛り込まれたり、逆に、決定案の「案の強度」を高めたり。
立ち消えていった案への想い、そんな話もできたらと考えています。
このカタチにしたことへの「想い」
私たちは敷地について、特に大事に、丁寧に考察を重ねます。その場所のもつ歴史、交通インフラや都市工学的な位置づけなどをどのように生かし、そこにある課題をどのように解決しようとしているか。いまの社会にどう貢献しようとしているのか……。社会のあり方が大きく変わってきた今だからこそ、大事にしたいフィロソフィーを伝えたいと思います。
あるいはただの(だけど重要な)「悩み」
私たちの描く線は、ただの線ではありません。その線は、鉄、コンクリート、ガラスなど、さまざまな素材になり代わって現実の世界に立ち現れます。とても誇らしくやりがいのある仕事です。
それと同時に、社会的にもインパクトが大きい作業です。
建築の持つスケールや影響を考えると、設計は、一歩まちがえると暴力的でネガティブな行為ともとられかねません。それゆえ、責任感を伴う悩みもあります。
そんな責任感の強いチームメンバーだからこそ、ここでは本音の悩みも聞けるかもしれません。
このnoteには、これから執筆するメンバーのいろんな「想い」が立ち現れることでしょう。
「超超高層・複合機能建築」という「都市的」な機能に特化した建物も、経済合理性だけでなく、きっとみなさんが思う以上に、人間くさい「想い」にあふれた手法でつくられているもの。まさに今、走り始めているプロジェクトの進捗に合わせて、紆余曲折、試行錯誤している姿を、みなさんにお伝えできればと思っています。
4.オープンにすることで価値を共有できないか
このプロジェクトの「超超高層」ならではの高さ、それゆえに生まれてしまう「象徴性」をもつ場所を、ひろく人びとのための場所として「開く」こと。私たちは、これによって、東京を本当の意味で垂直方向に拡張し、みなさんと共有できる「居場所」とできるのではないかという思いを持っています。
その「居場所」は、超高層の眺望とつながる超自然があり、地上から誰もが目指すことができる目的地へ─。
私たちは、このプロジェクトを通じて、これまで閉じていたものを「オープンにする」「開く」ことで新たな価値をみなさんと共有できないか、という試みを随所で行っています。
noteでの発信に行き着いたのも、「オープンにする」という思想のもと、自然な流れでした。
オープンにして生まれる価値を、東京のまちだけではなく、日本全国のみなさんに「つないでいく」という試みも行っています。「高さ」だけでないTOKYO TORCHならではの価値もお伝えできればと考えています。
5.「未来」への手紙として
私たちは「少し前=過去」を振り返りつつ、「今=まさに目の前で起こっていること」をどう感じているかを「6年後の完成=未来」へ送る手紙として記していこうと思います。
この先、プロジェクトを通して出会う人たちへ。完成後に入居するテナントや、ホテルで働かれる方々へ。ここに住まわれる方へ。
そして、6年後にこの建物を訪れるであろう、今はまだ学校にいるみなさんへ……。そんな人たちを心に思い浮かべながら、このnoteを始めていきます。
図面に込めた「想い」が届くことを願って。
大迫公生
三菱地所設計 建築設計二部 TOKYO TORCH設計室アーキテクト。
入社後、九州支店(福岡)と鹿児島事務所(生まれ故郷)に6年駐在し、2019年よりTOKYO TORCH設計室所属。設計活動と並行して、社内外をつなぎメンバーを刺激するタクラミを日々リサーチしている。
近々の最優先課題は職場環境の最適化と、心身の最適化(安らぎと体重)。